令和の貫通型車両【番外編】:近畿日本鉄道シリーズ21

近年登場した貫通型車両を中心に、乗務員室内の限りあるスペースに凝らされた創意工夫を紹介する「令和の貫通型車両」シリーズ。今回は番外編として、今から26年前の2000年にデビューした近畿日本鉄道「シリーズ21」を取り上げ、前回紹介した新型車両8A系シリーズとの違いに注目していきます。

1 車両の概要

左側が8A系、右側がシリーズ21
車外から見た先頭車間連結部

近畿日本鉄道(以下:近鉄)シリーズ21は2000年から2008年にかけて同社が各線区へ導入した標準一般型車両の総称です。21世紀を迎えるにあたって従来車両から設計・デザインのフルモデルチェンジを行い、各線区ごとの仕様や用途ごとに3220系・5820系・9020系・9820系・6820系の計5形式が登場しました。2024年に新型車両8A系シリーズが登場するまでは、本系列が長らく同社の最新一般型車両でした。

シリーズ第一弾として登場した3220系は京都市営地下鉄烏丸線との直通運転用として他編成との連結運転を行わない前提の構造ですが[1]前面貫通扉は非常用で助士席側にオフセットされている。、それ以外の各形式は貫通扉を中央に配置した貫通型構造となっています。また、本系列は電気指令式ブレーキを採用していますが、空気指令式ブレーキの従来車両と連結するために常用ブレーキ読換装置を搭載しており、これらは8A系にも引き継がれました。

なお、本系列の乗務員室・貫通路構造は3220系を除いてほぼ共通のため、当記事では各形式を区別せずに紹介します。

2 貫通路の構造

2.1 乗務員室背面

乗務員室仕切り

乗務員室背面の仕切り扉は引き戸式です。同社の従来車両を含め、貫通型車両は仕切り扉を中央付近に設けることが一般的ですが、本系列は助士席側いっぱいまでセットバックした貫通型車両としては珍しい構造となっています。なお、8A系シリーズでは再び中央配置に戻ったため、これはシリーズ21だけの特徴となりました。

2.2 乗務員室全体

先頭時の乗務員室内
連結時の乗務員室内
乗務員室を斜めに横切る貫通路
助士席側は貫通路の一部となる
先頭時の折りたたまれた仕切り扉
助士席側のドアスイッチ類はカバーで封印

仕切り扉を助士席側にセットバックした一方、当然ながら貫通扉は中央にあるため、連結時は乗務員室を斜めに横切るように貫通路が構成されます。連結相手もシリーズ21なら向こう側の仕切り扉までまさしく斜めに一直線となるのが面白いポイントです。

運転席側スペースは客室寄りに折りたたんでいた折り戸を展開することで、後述の正面貫通扉とともに閉鎖されます。一方、助士席側スペースは貫通路の一部となってことから事実上の開放スペースとなっており、乗務員扉横のドアスイッチ・マイク等はいたずら防止のカバーで封鎖されています。なお、貫通路が中央に戻った8A系シリーズでは助士席側も仕切り扉で閉鎖されます。

運転席側スペースの仕切りを兼ねる前面貫通扉
運転席側客室寄り

連結時は前面貫通扉を運転席側に開いて固定することで、客室寄りの折り戸と合わせて運転席側スペースの仕切りに変身します。シリーズ21は曲面を描いたような前面形状が特徴的であり、前面貫通扉もわずかに曲面状となっていることが見て取れます。

2.3 運転台

先頭時の運転台
連結時の運転台

運転台は特急型車両22000系「Ace」などに準じたデスクタイプで、正面に主要な計器類や表示灯、右側に各種機器の状態を表示するモニタ画面が設けられています。また、2009年3月の阪神なんば線開業に伴い、本系列の奈良線・京都線系統所属車は阪神電気鉄道への直通運転に対応しました。直通対応車はモニタ装置の左側に阪神用ATS表示灯、右側には阪神用と近鉄用の列車選別装置設定器が並べて配置されています。

従来の一般型車両から近代化されたデスクタイプの運転台、そして右方向の視界を遮る仕切りなどが一切ない構造により操作性・視認性は良さそうです。しかし、上方向に大きく突き出ているモニタ画面部分をはじめ、限られたスペースのなかで機器配置に苦慮した様子が感じられます。なお、8A系シリーズはグラスコックピットの採用によってさらにシンプルにまとめられた構造となり、小柄な乗務員の操作性考慮するなどの改良が図られています。

3 おわりに

以上のように、本系列の貫通路は乗務員室を斜めに横切るという珍しい構造で、同社はおろか全国的に見ても独自性の強い車両となりました。8A系シリーズではデザイン面の刷新だけでなく乗務員室・貫通路や運転台の構造も大幅に見直されたため、本系列の面影と言えるものはほとんどありません。

近年、従来車両のリニューアル工事において、8A系シリーズと同様の先頭車間転落防止幌やワンマン運転用の車体側面カメラ・モニタを設置した車両が登場しています。今のところシリーズ21はこれらの改造工事の対象になっていませんが、すでに登場から四半世紀が経過していることから今後の動向が注目される時期も近づきつつあります。

出典・参考文献

  • 𠮷川 富雄、中井 修「近畿日本鉄道 シリーズ21 (3220系,5820系,9020系)」『車両技術』220号、日本鉄道車輌工業会、2000年、p87~109

脚注

References
1 前面貫通扉は非常用で助士席側にオフセットされている。

コメントする