【2025年8月現在】東急電鉄「Qシート」の座席転換・ドア扱いまとめ

東急電鉄では、2018年12月14日より大井町線、2023年8月10日より東横線において、平日夜の一部の急行列車を対象に有料座席指定サービス「Qシート」が運行されています。

Qシート車両は座席配置を転換できる「デュアルシート」を備え、Qシートサービス対象列車で運行する際はクロスシートモードへの転換を行います。また、係員がチケットの確認を行うことや誤乗防止の観点から、1両あたり片側4か所のドアのうち1か所のみを乗降口とするなど、運行にあたってさまざまな取り扱いが必要となっています。

当記事では、折り返し駅で行われる座席転換作業や、線区によって異なる乗降口以外の車両ドア・ホームドア締切方法など、2025年8月時点での取り扱いをまとめました。

1 大井町線・田園都市線のQシート

1.1 大井町駅での折り返し

大井町線のQシートサービスは大井町駅始発下り急行列車の一部が対象で、6000系(一部編成)および6020系の3号車にQシート車両が連結されています。

Qシートサービス対象列車以外では3号車も座席をロングシートとした上で一般車両扱いになりますが、Qシートサービス対象列車の送り込みとなる上り急行列車は、あらかじめ座席を進行方向と逆向き(下り向き)のクロスシートにセットすることで折り返し作業を軽減しています[1]乗客自身で座席を回転することは可能なので、必ずしもすべての座席が下り向きのまま到着するとは限らない。。なお、ロングシートからクロスシートへの転換は車庫等で行われます。

大井町駅到着後の取り扱いは、これまでに大きく分けて2回変更されています。

(1)現在の取り扱い

送り込み列車として到着後、係員が誤乗防止用の幕を取り付ける

前述の通り、送り込みの上り列車は一般列車なので、到着すると3号車もすべての車両ドア・ホームドアが開いて乗客が降車していきます。一方、ホームで待機していた係員は Q SETA こちらからはご乗車になれません” と書かれた誤乗防止用の幕を持っており、この幕を広げて4か所中3か所の車両ドア(車内の手すり部分)に取り付けます。

車内の整備・確認が終わると、幕を取り付けていない1か所のドア(1番ドア)のみを乗車口として駅係員および「トレインクルー」と呼ばれる車内アテンダントがQシートチケットの確認を開始します。そして幕を取り付けたままドアを閉めて出発しますが、この幕は後ほど田園都市線内でも活躍することになります。なお、幕を取り付けたのは進行方向左側のみで、その理由も田園都市線内の停車駅が関係しています(詳しくは後述)。

現行ダイヤにおいて、大井町駅での折り返し時間は最低でも5分程度あります。決して長くはありませんが、後述する東横線のQシートと比べれば余裕をもって作業を行えていると感じます。

(2)以前の取り扱い

2023年2月下旬に撮影
ホームドア本体に磁石とロープで幕を取り付けていた

現在の車内に幕を取り付ける方式は2023年3月18日ダイヤ改正から開始されたもので、2018年12月のサービス開始当初は係員の案内のみで誤乗防止を図っていました。これは新型コロナウイルス感染拡大のためサービスが休止された2020年4月下旬まで続きました。

そして2020年10月12日のサービス再開以降は、車内ではなくホームドア本体に幕を取り付ける方式となりました。2023年2月に筆者が取材した際は、両端2か所のドアを封鎖し、中央の2か所にて係員がチケット確認および誤乗防止の案内を行っていました。

1.2 旗の台駅~二子玉川駅

大井町線内の途中停車駅(旗の台駅・大岡山駅・自由が丘駅・二子玉川駅)における取り扱いは、2020年10月12日のサービス再開を機に変更されています。

(1)現在の取り扱い

二子玉川駅にて
1番ドア以外は開閉しない

大井町線内の途中停車駅では、車両ドア・ホームドアともに3号車の2~4番ドアを締切扱い(ドアカット)としています。乗降口以外を締切とする取り扱いは、東横線で2017年から運行されている座席指定列車「S-TRAIN」と同様です。

大井町線の現在のホームドア開閉方式は、トランスポンダを用いた通信で車両ドアと同期する方式です。そのため、Qシートサービス対象列車は車両側の設定により3号車の2~4番ドアを締め切り、その情報を地上側へ伝送することでホームドアも1番ドアのみを開閉することが可能となっています。

なお、大井町駅でこの取り扱いを行えないのは、前述の通り到着時はすべてのドアを開ける必要があるためです。

(2)以前の取り扱い

現在の締切扱いは2020年10月12日のサービス再開時から開始されたもので[2]同日時点で対応していたのは6020系のみで、6000系は順次改修された模様。サービス開始当初はすべての車両ドア・ホームドアが開いており、各駅のホームには誤乗防止を図るため多くの係員が配置されていました。

なお、2019年3月以前はホームドア開閉方式も現在と異なり車両側と通信しないシステム(田園都市線内と同じ方式)で運用されていたため、その関係で締切扱いとすることが難しかったのだと思われます。大井町線のホームドア開閉方式については以下の記事もご覧ください。

1.3 溝の口駅

溝の口駅にて
田園都市線内ではすべてのドアが開く

Qシートサービス対象列車はすべて田園都市線直通の長津田行きとして運行されており、二子玉川駅までが乗降可能駅、溝の口駅以降の田園都市線内は終点まで降車専用駅となっています。

田園都市線のホームドア開閉方式は大井町線内と異なり、列車の進入を地上側のセンサで検知して自動開扉する方式、つまり車両側との通信は行わない方式です。その関係か、Qシートサービス対象列車であってもすべてのホームドア・車両ドアが開いてしまいます

しかも大井町駅の項で紹介したように、車内に取り付けた誤乗防止用の幕は進行方向左側にしかないため、進行方向右側ドアが開く溝の口駅では全く意味を成しません。よって同駅では駅係員およびトレインクルーの案内のみで誤乗防止を図っています。おそらく、途中停車駅で右側ドアが開くのは溝の口駅だけなので、幕を取り付ける手間を省いているのだと思われます。

せめて車両側だけでも引き続きドアカットできれば誤乗防止に効果的ですが、それも難しい事情があるのでしょう。田園都市線のホームドア開閉方式については以下の記事もご覧ください。

1.4 鷺沼駅~長津田駅

田園都市線の各停車駅における取り扱いは、2023年3月18日ダイヤ改正で「フリー乗降区間」が廃止されたことで大幅に変更されました。

(1)現在の取り扱い

たまプラーザ駅にて
大井町駅で取り付けた幕が再び活躍する

前述の通り、田園都市線内の停車駅ではすべてのドアが開きますが、溝の口駅以降の途中停車駅はいずれも進行方向左側ドアが開くため、大井町駅で取り付けた幕がしっかりと誤乗防止に役立っています。そして青葉台駅出発後にトレインクルーが幕を順次取り外し、終点の長津田駅ではすべてのドアから降車できるようです。

長津田駅到着後、再びQシート対象列車の送り込みとなる場合は1.1項に戻り、当日のQシート運用が終了した場合は車庫等でクロスシートからロングシートに転換します。

(2)以前の取り扱い

現在の取り扱いとなったのは2023年3月18日ダイヤ改正以降で、それ以前は溝の口駅・鷺沼駅を除く田園都市線内の停車駅は「フリー乗降区間」、すなわちQシートチケットなしで乗車できる区間でした。そのため、以前は以下のような取り扱いとなっていました。

  • 鷺沼駅:溝の口駅と同じく係員により誤乗防止
  • たまプラーザ駅以降:特別な取り扱いなし

車内に幕を取り付ける方式に変更されたのは、フリー乗降区間の廃止により係員のみで誤乗防止を図ることが難しくなったためだと思われます。

2 東横線・みなとみらい線のQシート

2.1 元町・中華街駅 1回目の折り返し

東横線のQシートサービスは渋谷駅始発下り急行列車の一部で開始され、2025年7月22日からはその送り込みとなる上り急行列車の一部にもサービスが拡大されました。5050系4000番台(10両編成)のうち一部編成の4・5号車にQシート車両が連結されており、当初は2両ともサービス対象車両でしたが、2024年5月7日からは利用状況を鑑みてサービス対象を5号車のみに変更し、4号車は常に一般車両扱いとなっています。

東横線と大井町線のQシートで異なる点に、座席転換を車庫等ではなく駅停車中に行うこと、始終着駅での折り返し時間がわずか3~4分程度しかないことが挙げられます。そのため係員は必要な作業を大井町線以上に素早く行わなければなりません。

下りQシート対象列車の送り込みとなる上り列車は、元町・中華街駅での折り返し時に座席をロングシートからクロスシートに転換する作業を行います。この作業も、上り列車の一部でもサービスが始まったことで変化が生じました。

(1)上り列車が一般列車の場合

係員が誤乗防止用の幕を持ってスタンバイ

上り列車が一般列車の場合、あらかじめ座席を進行方向と逆向き(下り向き)のクロスシートにセットすることで、渋谷駅での折り返し作業を軽減しています。

ホームで待機していた係員は、大井町線と同じ誤乗防止用の幕を4か所中3か所の車両ドアに取り付けます。まだこの時点ではQシートサービスを開始していませんが、座席転換作業中に乗客が立ち入らないようにするための措置です。

幕をドア脇に固定したまま出発

降車確認と幕の取り付けを終えると、車内のフリースペース付近にある操作盤で座席の自動転換を行います。そして転換完了後は幕を取り外すのではなく、巻き取った状態でそのままドアの脇に固定し、渋谷駅での折り返し時にすぐ展開できるよう備えます。

なお、この時点で左右両側に幕を取り付けているのも大井町線と異なる点の一つです。

(2)上り列車がQシート対象列車の場合

上り列車もQシートサービス対象列車の場合、(1)と同じく到着後すぐに幕を取り付けて座席を転換しますが、進行方向(上り向き)にセットされます。以降は大井町線と同じく、幕を取り付けていない1か所のドア(1番ドア)のみを乗車口として駅係員およびトレインクルーがQシートチケットの確認を開始します。

そして幕を取り付けたままドアを閉めて出発しますが、この幕は途中停車駅でも活躍することになります。

2.2 渋谷駅での折り返し

渋谷駅は乗降客が非常に多い中で折り返し作業を行わなければならないため、手順の工夫とマンパワーによって作業時間をできるだけ短縮しています。ちなみに、ダイヤ乱れ時は送り込みの上り急行列車を通勤特急に種別変更(Qシート対象列車の場合はサービスを中止)し、停車駅を減らすことで折り返し時間に間に合わせることもあります。

(1)上り列車が一般列車の場合

ドア脇に固定していた幕を速やかに展開する
※一部のドアは到着前に展開済み

上り列車が一般列車の場合であっても、トレインクルーはすでに添乗しており、元町・中華街駅でドアの脇に固定していた幕を渋谷駅到着前にできるだけ展開しておくことで到着後の作業を省いています。対象となるドアは渋谷駅で開かない山側ドアだけでなく海側ドアのうち2か所(2・3番ドア)も含まれ、よって幕を展開していない1・4番ドアのみで降車を行います[3]山側ドアは自由が丘駅出発後、海側ドアは中目黒駅出発後であれば展開可能。

一方、ホームで待機していた係員は残るすべての幕を展開し、車内の整備・確認が終わると、幕を取り付けていない1か所のドアで乗車扱いを開始。そして乗車が完了する頃には出発時刻となります。

到着前に幕を展開するという大胆な工夫により、定刻通りの到着であれば停車時間内に作業を終えることができていました。しかし、2・3番ドアの幕を展開済みなので降車に時間が掛かる、逆に車内の混雑度が高いと到着前に幕を展開できない可能性もある等、かなり余裕のない対応に感じられます。

(2)上り列車がQシート対象列車の場合

上り列車もQシートサービス対象列車の場合、元町・中華街駅出発時から幕を展開済みなのでその作業は不要な一方、降車終了を確認してから座席を下り向きに転換する必要があります。よってトータルの作業時間は(1)とあまり変わらないようです。

ただし、上りQシートの利用客がまだまだ少ない現時点では、到着後すぐに降車が完了して自動転換を行えるため、むしろ(1)より余裕があるようにも感じられました。

2.3 途中停車駅

田園調布駅にて
現時点ではすべてのドアが開く

東横線・みなとみらい線のホームドア開閉方式は、大井町線と同じくトランスポンダを用いた通信で車両ドアと同期する方式です。しかしながら、現時点では途中停車駅における乗降口以外の締切扱いを行っておらず、すべてのホームドア・車両ドアが開いてしまいます。それでも左右両側に幕を取り付けているため誤乗は防がれています。

大井町線の項でも述べたように、東横線で2017年から運行されている座席指定列車「S-TRAIN」は乗降口以外を締切とする取り扱いを行っているため、改修を施せば技術的に不可能ではないはずです。それでもQシートでこの取り扱いを行わないのは、2両から1両への減車、上り列車でのサービス開始といった、利用状況を鑑みての試行錯誤を続けているためかもしれません。

途中停車駅における基本的な取り扱いは上り列車・下り列車ともに変わりありません。

2.4 下りフリー乗降区間

下り列車はみなとみらい線内(横浜駅~元町・中華街駅)がQシートチケットなしで乗車できるフリー乗降区間となっています。そのため、横浜駅の一つ前の菊名駅を出発後、トレインクルーが幕を巻き取ってドアの脇に固定し、横浜駅以降はすべてのドアから乗降できるようになります。

元町・中華街駅から折り返し上り一般列車となる場合は、不要になる幕を順次取り外していきます。ただし、一部の幕は元町・中華街駅での座席転換作業時に再び展開するため取り外されません。

2.5 元町・中華街駅 2回目~の折り返し

下りQシートサービス対象列車として元町・中華街駅に到着した際も、折り返しがQシート対象列車か否かで作業に違いが生じます。

(1)上り列車がQシート対象列車の場合

再び上りQシートサービス対象列車となる場合は、一度巻き取っていた幕を再び展開します。そして以降の取り扱いは2.1項(2)に戻ります。

(2)上り列車が一般列車の場合

当日のQシート運用が終了して上り一般列車となる場合も、座席をロングシートからクロスシートに転換する必要があります。そのため、座席転換作業中に乗客が立ち入らないように、ドアが開く側の幕を再び展開します。ただし、同駅での乗降客はさほど多くないためか、展開する幕は4か所中1か所程度のみで、他のドアは係員による監視で対応していました。

そして作業終了後に幕を巻き取りますが、筆者が取材した際は取り外さずドアの脇に固定したまま出発していきました。どこで取り外しているのかは確認できていません。

3 おわりに

以上のように、Qシートサービスの実施にあたっては多くの人員と労力を割いて必要な取り扱いが行われています。大井町線では利用客がある程度定着し、ドアカットや幕の取り付けによる誤乗防止対策で係員の負担も軽減されているようですが、満を持して2両体制で導入された東横線は “失敗” と言われるほどに利用客の少なさが続いており、人件費に見合った収益があるのかどうか疑問です。

その反面、もし利用客が大幅に増えれば、わずかな折り返し時間での作業は今以上に厳しくなるかもしれません。おそらく今後もニーズの探求は続けられるでしょうが、それに応じて取り扱いもどう変わっていくのか注目されます。

出典・参考文献

脚注

References
1 乗客自身で座席を回転することは可能なので、必ずしもすべての座席が下り向きのまま到着するとは限らない。
2 同日時点で対応していたのは6020系のみで、6000系は順次改修された模様。
3 山側ドアは自由が丘駅出発後、海側ドアは中目黒駅出発後であれば展開可能。

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