Osaka Metro 堺筋線のホームドア:先行導入タイプ(堺筋本町駅)

タイプ 腰高式
メーカー 京三製作所
開閉方式 車掌手動操作
停止位置許容範囲 ±650mm(TASCなし)
開口部幅 3,260mm
非常脱出ドア 開き戸式(各号車連結部)
支障物検知センサ 光電センサ(一部3Dセンサ)

Osaka Metro(大阪市高速電気軌道)堺筋線の堺筋本町駅では、2020年2月29日に同線初となる可動式ホーム柵(以下:ホームドア)の稼働が開始されました。同線は阪急電鉄と直通運転を行っている関係で車種によるドア位置が多少異なるため、Osaka Metroの他路線よりも開口幅が広いタイプが採用されています。

1 ホームドアの仕様

ホームドアのタイプは一般的な腰高式、メーカーは京三製作所です。外観は同時期に整備された谷町線東梅田駅の同メーカー製ホームドアと似ていますが、谷町線は4ドア車、堺筋線は3ドア車という違いのほか、開口幅も大きく異なります。

冒頭でも述べた通り、同線は阪急電鉄と直通運転を行っており、自社所有の66系電車と阪急所有の各形式ではドア位置に多少の違いがあります。また、TASC(定位置停止装置)も導入されていないため、停止許容範囲を広めに設ける必要もありました。そのため、谷町線タイプの開口幅は2,600mmなのに対して、本タイプは開口幅を3,260mmまで広げることでこれらの課題に対応しています。

各表記類のフォーマットや開口部の縁に入れられた縦方向のラインカラーといったデザインは谷町線タイプと共通で、後にこのサインシステムがOsaka Metroの標準仕様となります。

手前:車両連結部の筐体
奥:車両ドア間の筐体
扉の断面形状が異なる
右:標準の扉
左:車両連結部に収納される扉
透過ガラスのサイズなども異なる
ホーム側から見た車両ドア間の筐体
ホーム側から見た車両連結部の筐体
線路側から見た車両ドア間の筐体
線路側から見た車両連結部の筐体

谷町線タイプと同じく、各号車連結部の筐体には開き戸式の非常脱出ドアが設けらており、その部分に収納される扉のみ断面形状や透過ガラスの面積などが異なるという独特な構造をしています。

停止許容範囲を示す運転士向け停止位置マーカー
車種ごとの運転台からの目線に合わせて4種類に分かれている
(上3つが阪急車用、下1つがメトロ車用)
筐体がセットバックされている箇所は安全性向上のため3Dセンサを採用

各開口部の線路側に設けられている支障物検知センサは2点の光電センサを基本としていますが、ホーム最前部・最後部の乗務員出入りスペース確保のため筐体をセットバックしている箇所に限っては3Dセンサが採用されています。これも谷町線タイプと共通です。

2 ホームドアの開閉方式

堺筋線のホームドア開閉方式は、車掌が直接操作盤のボタンを押す手動操作方式が採用されています。Osaka Metro他路線のホームドアはトランスポンダ式連携が主流になっている一方、阪急車も乗り入れる堺筋線は車両側の対応に課題があるためか、今のところ連携化への動きもありません。

また、列車の定位置停止を検知するセンサ等も設けられていないため、定位置停止の可否も車掌による目視(停止位置マーカーとの照らし合わせ)で判断しています。

車掌用開閉操作盤
筐体上面に停止許容範囲が貼付されている

ホーム最後部には車掌用開閉操作盤が設けられており、停止位置が多少ずれても操作しやすいように開閉ボタンが3つずつあります。また、普段はあまり使用されないようですが、車掌が携帯するリモコンを使った操作も可能だそうです。

車掌向け表示灯
表示灯の下部にリモコン受光部がある
表示灯の表示内容
列車出発後は一定時間後に消灯する

運転士用・車掌用それぞれにホームドアの開閉状態を示す表示灯が設けられています。定位置表示灯は無いため、ホームドア開状態で[×]、閉状態で[]を示すのみのシンプルな内容です。

3 おわりに

以上のように、本タイプは広い開口幅によって堺筋線ならではの課題に対応し、今後は堺筋本町駅以外の9駅にも順次導入されていくものと思われていました。

しかし、2022年度に行われた他9駅への本格導入では、停止許容範囲をさらに広げるべくOsaka Metro初の二重引き戸式大開口タイプが採用されました。よって本タイプは堺筋本町駅のみの採用に留まり、運転士にとっては相対的に他駅よりもシビアな停止精度を求められることになりました。

出典・参考文献

脚注