Osaka Metro 堺筋線のホームドア:本格導入駅の二重引き戸式大開口タイプ

タイプ 腰高式(二重引き戸タイプ)
メーカー 京三製作所
開閉方式 車掌手動操作
停止位置許容範囲 ±1020mm(TASCなし)
開口部幅 4,000mm
非常脱出ドア なし
支障物検知センサ 3Dセンサ

Osaka Metro(大阪市高速電気軌道)堺筋線では、2019年度にホームドアが先行導入された堺筋本町駅を除く9駅へのホームドア本格導入が2022年度に行われました。そして2023年3月5日稼働開始の天神橋筋六丁目駅を以て堺筋線全10駅のホームドア整備が完了しています。

同線は阪急電鉄と直通運転を行っている関係で車種によるドア位置の違いがあるため、堺筋本町駅では標準的な構造ながらも開口幅が広いタイプが設置されていますが、本格導入駅では開口幅をさらに拡大した二重引き戸タイプが採用されました。

1 ホームドアの仕様

ホームドアのメーカーは先行導入タイプと同じ京三製作所ですが、扉が二重引き戸構造となったことで外観や開口幅は大幅に変わりました。

冒頭でも述べた通り、同線は車種によってドア位置が多少異なること、またTASC(定位置停止装置)が導入されていないため停止許容範囲を広く確保する必要もあることから、先行導入タイプは開口幅を3,260mm、停止許容範囲を±650mmとしていました。なお、この停止許容範囲は同じくTASC未導入のままホームドア導入に踏み切ったOsaka Metroの他路線と同じ値です。

しかし、同線と直通運転を行う阪急電鉄からは新旧さまざまな車種が乗り入れており、車両ごとにブレーキの特性も異なるためか、運転士から「停止許容範囲をさらに拡大してほしい」という要望があったそうです。こうした事情によって本格導入タイプは二重引き戸構造を採用し、開口幅は4,000mm停止許容範囲は±1,020mmまで拡大されました。

壁面に取り付けられた運転士向け停止位置マーカー
車種ごとの運転台からの目線に合わせて4種類に分かれている
(上3つが阪急車用、下1つがメトロ車用)
扉を互い違いに収納するため筐体が分厚い
線路側から見た扉部分

構造としては同メーカー製の二重引き戸タイプを採用している阪神電気鉄道神戸三宮駅のホームドアと酷似していますが、旅客向けのサインシステムや扉部分をシルバーに塗装している点などのデザイン面はOsaka Metroの既設ホームドアに合わせられています。

ホーム側から見た車両ドア間の筐体
ホーム側から見た車両連結部の筐体
線路側から見た車両ドア間の筐体
線路側から見た車両連結部の筐体

先行導入タイプと違い、各号車連結部の筐体に非常脱出ドアは設けられていません。また、先行導入タイプは各開口部の線路側に設けられている支障物検知センサに光電センサを採用していた(一部箇所のみ3Dセンサ)のに対し、本タイプはすべての開口部で3Dセンサが採用されています。

2 ホームドアの開閉方式

2.1 基本の開閉方式

堺筋線のホームドア開閉方式は、車掌が直接操作盤のボタンを押す手動操作方式が採用されています。Osaka Metro他路線のホームドアはトランスポンダ式連携が主流になっている一方、阪急車も乗り入れる堺筋線は車両側の対応に課題があるためか、今のところ連携化への動きもありません。

ただし次項で紹介するように、天神橋筋六丁目駅における阪急側の取り扱いは一部異なります。

車掌用開閉操作盤
よく見ると車種ごとに停止許容範囲が若干違う?

ホーム最後部の車掌用開閉操作盤の仕様や、車掌が携帯するリモコンでも操作できる点、また乗務員向け表示灯の表示内容も先行導入タイプと変わっていないようです(天神橋筋六丁目駅を除く)。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

2.2 天神橋筋六丁目駅 阪急側の取り扱い

阪急千里線との境界駅・天神橋筋六丁目駅では、阪急方面からの入線時に限って列車の定位置停止検知でホームドアが自動開扉します。また、阪急方面への出発時についても阪急側独自の「乗降検知機能」が備わっており、これらは阪急線内の既設ホームドアと乗務員の取り扱いを合わせるためだと思われます。

詳しくは別記事にまとめています。

3 おわりに

冒頭でも述べた通り、堺筋本町駅を除く9駅へのホームドア本格導入は2022年度に全駅で完了しています。

停止許容範囲のさらなる拡大による運転士への負担軽減を目的に採用された本タイプ。二重引き戸式ホームドアは機構が複雑で重量も増すと言われていますが、それでも採用されたのは、当面の間TASCやATO(自動列車運転装置)を導入せず手動運転を続けるという方針の表れかもしれません。

出典・参考文献

脚注

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