東京メトロ 日比谷線のホームドア:現行タイプ

タイプ 腰高式
メーカー 京三製作所
開閉方式 トランスポンダ式連携
停止位置許容範囲 【推定】±450mm(ATO)
開口部幅 【推定】2,200mm
非常脱出ドア 開き戸式(各号車連結部)
支障物検知センサ 3Dセンサ

東京メトロ日比谷線では、2020年6月6日に開業した虎ノ門ヒルズ駅で同線初となるホームドアが導入されました。同年度からは既存駅でも順次整備が始まり、2024年3月の南千住駅を以て、東京メトロでは7路線目となるホームドア全駅整備が完了しています。

以前は18m3ドア車・5ドア車が混在しておりホームドア設置が難しかったため、ホームドア導入を前にすべての車両を20m4ドア車に置き換えて車両ドア位置の統一を図りました。当記事で紹介する現行の標準タイプは、全22駅のうち東武鉄道が管轄する北千住駅を除く21駅で採用されています[1]東急電鉄が管轄する中目黒駅も含む。

1 ホームドアの仕様

2017年以前の日比谷線は、歴史的経緯によって首都圏標準の20m4ドア車ではなく18m3ドア車が用いられ、一部編成には乗降時間の短縮を図るためドア数を増やした5ドア車も連結されていました。これにより自社線内および直通先の東武スカイツリーラインでは車両ドア位置が統一できず、ホームドア早期設置を阻む要因となっていました。

そこで東京メトロは東武鉄道と共同ですべての日比谷線用車両を20m4ドア車に置き換えることを決定します。18m車の置き換えは2020年3月までに完了し、これにより東京メトロ他路線と同じく一般的な腰高式ホームドアの設置を可能としました。

ホームドアのメーカーは京三製作所で、銀座線の標準タイプと同じく、扉部分だけでなく筐体部分にも透過ガラスを多く取り入れた構造が特徴です。日比谷線では20m4ドア車への統一と合わせてATO(自動列車運転装置)が導入されたため、開口幅は車両ドア幅1,300mmにATOの停止精度±450mmを足した推定2,200mmです。

扉は互い違いに収納され、その様子をガラス越しに見ることができる
ホーム側から見た車両ドア間の筐体
ホーム側から見た車両連結部の筐体
線路側から見た車両ドア間の筐体
線路側から見た車両連結部の筐体

扉部分は黒色、筐体部分は日比谷線のラインカラーを意識したのかグレーに塗装されています。開放的な広い透過ガラスは狭いホームでも圧迫感を与えにくく、塗装も相まってシックな雰囲気があります。

各開口部の線路側には3D式支障物検知センサと非常開ボタンが1か所ずつ設けられてます。また、車両連結部筐体のうち一部箇所(2両間隔)には非常停止ボタンが内蔵されています。

戸袋スペースの関係で左右のドア幅が異なる

車両連結部の筐体間には開き戸式の非常脱出ドアが設けられています。その箇所および乗務員扉がある最前部・最後部は戸袋スペースが狭いため、隣接する各号車1・4番ドアは扉の長さが左右非対称となっています。

2 ホームドアの開閉方式

2.1 開閉方式の概要

左:停止位置直下の地上子
右:停止位置までの距離情報を送信する地上子
※ホームドア設置前の上野駅で撮影

日比谷線のホームドア開閉方式は、東京メトロの標準的な方式であるトランスポンダ装置を用いた情報伝送によって車両ドアと同期するシステムです。1号車(北千住方先頭車)床下の車上子と停止位置直下に設置された地上子がピッタリ重なることで開閉連携が可能になります。

車上子と地上子が重なった様子

ちなみに、日比谷線は2013年に東急東横線との直通運転を中止していますが、地上子・車上子の取り付け位置は東横線などと同じ規格です。

2.2 「THライナー」発着時の制御

茅場町駅に停車中の「THライナー」
車両ドア・ホームドアともに各号車1か所のみが開く

同線では通勤・通学時間帯に座席指定列車「THライナー」が運行されており、乗車専用駅および降車専用駅では誤乗防止のため各号車1か所のみのドアを開閉します。その際、ホームドア側も該当する箇所のみが開閉していたため、トランスポンダによる車両側からの情報で自動的に制御されているものと思われます。

3 おわりに

ホームドア導入を阻む車両ドア位置の課題に対して、すべての車両を置き換えるという大きな決断を下した日比谷線。そのためにホームドアの設置開始はメトロ他路線より遅れましたが、その後はハイペースで整備が進み、東西線や半蔵門線を差し置いて全駅整備を達成しました。

本タイプのようなガラスを多用したホームドアは一時期普及の兆しを見せていましたが、日比谷線の全駅整備後に設置された東西線や半蔵門線のタイプは筐体部分の透過部が設けられませんでした。他社ではJR東日本の「スマートホームドア」を筆頭とする空洞を設けた軽量・低コストなタイプも増えているため、デザイン重視のホームドアは珍しい存在に戻りつつあります。

出典・参考文献

脚注

References
1 東急電鉄が管轄する中目黒駅も含む。

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