阪神電気鉄道のホームドア:二重引き戸式大開口ホームドア 現行タイプの基本仕様
タイプ | 腰高式(一部二重引き戸タイプ) | |
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メーカー | 京三製作所 | |
開閉方式 | 開扉 | 自動(定位置停止検知・両数検知) |
閉扉 | 車掌手動操作 | |
停止位置許容範囲(基本) | 【推定】±700mm(TASCなし) | |
開口部幅 | 二重引き戸部 | 【推定】3,600mm |
一重引き戸部 | 【推定】3,200mm | |
非常脱出ドア | 開き戸式(一部の車両連結部) | |
支障物検知センサ | 3Dセンサ |
阪神電気鉄道では、2020年度に神戸三宮駅1・3番線で同社初となるホームドアが整備され、その後も大阪梅田駅・尼崎駅などの主要駅から順次整備が行われています。当記事では、神戸三宮駅1・3番線などに設置されている一般的な腰高式ホームドア(昇降式ではない)の基本仕様について紹介します。
目次
1 阪神車・山陽車でも異なるドア位置への対応
阪神は近畿日本鉄道(以下:近鉄)および山陽電気鉄道(以下:山陽)と直通運転を行っていますが、阪神車・山陽車(車体長約19m・片側3ドア)と近鉄車(車体長約21m・片側4ドア)ではドア位置が大きく異なることから、一般的なホームドアで両者に対応することはできません。そのため当記事で紹介する腰高式ホームドアは阪神車・山陽車の規格に特化しており、近鉄車が発着しないホームに設置されています[1]近鉄車が発着する神戸三宮駅2番線にはのちに「昇降ロープ式ホーム柵」を導入。。
しかし、阪神車・山陽車の中でも車種によってドア位置が多少異なります。具体的には、阪神車は先頭車と中間車でドア位置がずれているほか、山陽3000系・5000系は阪神車より1両あたりの車体長が僅かに長いため、6両編成だと全長が約500mm長くなります。それに加えて、TASC(定位置停止装置)が未整備のため停止許容範囲を広く確保する必要もあります。
これらの理由から、阪神のホームドアは二重引き戸構造で開口幅を広げたタイプが採用されました。ただし、ドア位置のずれ量が少なくさほど広い開口幅が必要ない個所には通常の一重引き戸タイプも採用されており、駅・ホームごとの条件に応じて細かく使い分けられているのが特徴です。
2 ホームドアの仕様
外観の特徴から、ホームドアのメーカーは京三製作所と推測されます。扉部分を黒色としたデザインはグループ企業でもある阪急電鉄のホームドアと類似しています。
車両ドア位置のずれ量に応じて各開口ごとの幅を調整するため、二重引き戸部分と一重引き戸部分、また左右の扉のうち片側のみを二重引き戸とした部分の3パターンがあります。開口幅は二重引き戸部分が推定3,600mm、一重引き戸部分が推定3,200mm、片方のみ二重引き戸部分が推定3,400mmです。
筐体は二重引き戸タイプと一重引き戸タイプで厚みなどが異なるものの、各開口の線路側に設けられた3D式支障物検知センサ・非常開ボタンの構造などは共通化されています。
車両連結部の筐体は左右が独立しており、間に非常脱出ドアが設けられている点も共通です[2]車両ドア位置との関係で筐体同士の間が狭い個所には設けられていない。。
ホーム後部側には車掌用の乗務員操作盤が設けられています[3]折り返し可能な駅は両側に設置。。停止位置が多少ずれても操作がしやすいバースイッチ式で、黒く横長い部分全体が開閉ボタンとなっています(下が開扉、上が閉扉)。
3 駅・ホームごとの仕様の違い
前述の通り、二重引き戸と一重引き戸の使い分けは駅・ホームごとに異なっており、その要因は車種ごとのドア位置の違いだけではありません。
例として、神戸三宮駅のうち3番線はすべての開口部が二重引き戸となっている一方、1番線は各編成両数ごとの停止位置設定が関係してドア位置のずれが少ない箇所もあるため一重引き戸が併用されています。また、大阪梅田駅は終端駅で進入速度が低いことから、停止許容範囲を縮小することによりほぼ全ての開口部を一重引き戸としています。
駅やホームごとの仕様の違いはこちらのページから別記事をご覧ください。
4 ホームドアの開閉方式
ホームドア開閉方式は以下の通りです。
- 開扉:自動(定位置停止検知・両数検知)
- 閉扉:車掌手動操作
阪神のホームドアは、地上側の各種センサによって列車の定位置停止と編成両数を検知して自動開扉するシステムが採用されています。一方、閉扉は車掌が直接操作盤のボタンを押す方式です。
列車検知・自動開扉システムの詳細は別記事にまとめています。
5 おわりに
阪神は2042年度ごろまでに全駅でホームドアまたは固定柵を設置する計画を発表しており、今後も近鉄車が発着するホームには昇降式ホーム柵、しないホームには通常のホームドアが採用されるものとみられます。本タイプは2024年8月末時点で3駅11ホームに設置されており、今後の設置駅においても二重引き戸と一重引き戸の使い分けは変わっていくでしょう。