阪神電気鉄道のホームドア:列車検知・自動開扉システムと乗務員表示灯

阪神電気鉄道では、2020年度に神戸三宮駅1・3番線で同社初となるホームドアが設置され、その後も大阪梅田駅・尼崎駅などの主要駅から順次整備が行われています。また、車両ドア位置が大きく異なる近鉄車も発着する神戸三宮駅2番線には「昇降ロープ式ホーム柵」が導入されました。

阪神のホームドア開閉方式は、地上側の各種センサが列車の定位置停止と編成両数を検知することで自動開扉し、閉扉は車掌による手動操作で行う方式です。当記事では、列車検知・自動開扉システムに用いられる各種センサと乗務員向け表示灯の概要をまとめています。

1 システムの仕組み

1.1 各種センサの概要

阪神のホームドアシステムはグループ企業でもある阪急のホームドアシステムと基本的に同じ仕組みで、使われている各種センサもほぼ共通です。以下に各種センサの概要を紹介しますが、正式名称は今のところ不明なので、阪急のホームドアシステムについての文献に基づいた名称を使用しています。

(1)定位置停止検知センサ

停止位置から約2mのところに設置(尼崎駅2番線にて)
冗長性確保のためセンサが2系統ある(大阪梅田駅3番線にて)

測域センサ(2D-LiDAR)が車両前面を測定して列車が定位置範囲内に停止したか否かを検知します。設置場所は原則として各編成両数の停止位置前方です。このセンサと後述の両数判定センサとの組み合わせによって、編成両数に対応する範囲のみのホームドアを自動開扉することができます。

通常タイプのホームドアが設置されているホームの場合、2基のセンサを収めたBOX内がホーム床面に設けられています。これは阪急と同じです。

神戸三宮駅2番線のセンサはこの位置

一方、神戸三宮駅2番線の昇降式ホーム柵では、2基のセンサがホーム終端部の上方壁面に設置されています。

(2)両数判定センサ

ホームドア筐体線路側に設けられたセンサ(尼崎駅2番線にて)
ホーム後方に独立して設けられたセンサ(神戸三宮駅1番線にて)

異なる編成両数が発着するホームの場合、ホームの複数個所に設置した両数判定センサが車両の有無を検知し、その結果に基づいて編成両数を判別します。

通常タイプのホームドアが設置されているホームの場合、阪急と同じくホームドア本体の線路側などに光電センサが設けられています。一方、神戸三宮駅2番線の昇降式ホーム柵には両数判定センサらしきものが見当たらないため、支障物検知用の2Dセンサが車両検知も兼任しているものと推測されます。

1.2 各種センサの配置

神戸三宮駅1・3番線の各種センサ配置図

ここでは例として神戸三宮駅1・3番線の各種センサ配置図を示します(2番線は省略)。

定位置停止検知センサは原則として先頭側に設置されるため、全ての編成両数が前合わせで停止する3番線は前方1箇所に、後ろ合わせで停止する1番線は各編成両数の停止位置前方にそれぞれ設置されています。1番線後方にある両数判定センサは、もしも6両編成が誤って4両停止位置に停止した場合などに自動開扉してしまうのを防ぐ役割があります。

1.3 運行管理システムとは非連動?

前述したとおり阪神と阪急のホームドアシステムは基本的に同じ仕組みですが、大きな違いの一つは回送列車などが停車した場合の取り扱いです。

阪急のホームドアシステムは運行管理システムと連動しており、回送列車や本来その駅に停車しない列車が停車しても自動開扉しないように制御されています。それに対して阪神のホームドアは運行管理システムとは連動していないものと思われ、そのため回送列車が停車した場合も自動開扉してしまう光景が見られました[1]その後車掌が手動操作で閉扉。

2 乗務員表示灯

乗務員表示灯の表示推移

各ホームには乗務員・駅係員向けのLED表示灯が設けられており、定位置停止の可否およびホームドアの開閉状態を表示します。神戸三宮駅1・3番線の設置当初は漢字一文字で内容を表してましたが、現在は阪急と同じく単色で内容を表すように変更されました。

表示内容の推移は以下の通りです。

  1. 列車が定位置に入線すると左側が青色[]に、右側が緑色[]点灯
  2. ホームドアが自動開扉すると右側が赤色[]に点灯
  3. ホームドアが閉まると右側が緑色[]に点灯
  4. 列車が定位置を離れると左右とも消灯

なお、一部箇所の車掌向け表示灯は定位置表示灯が省略されています。また、この表示灯とは別に、車掌が閉扉操作を行うタイミングをアシストする乗降検知表示灯(乗降検知中はチャイム鳴動・黄色[]が消灯)が別途設けられています(一部ホームを除く)。

3 おわりに

以上のように、阪神のホームドアシステムは阪急をはじめ他の事業者でも実績のあるシンプルな方式となっています。今後のホームドア整備拡大に伴ってホームドア本体だけでなくシステム面にも形態差が生まれるのかどうか注目されます。

出典・参考文献

  • 山口 英樹、有岡 謙介「十三駅への可動式ホーム柵導入について」『鉄道サイバネ・シンポジウム論文集』Vol.56、日本鉄道サイバネティクス協議会、2019年

脚注

References
1 その後車掌が手動操作で閉扉。

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