南海電鉄・泉北高速鉄道のホームドア:和泉中央駅の泉北ライナー対応大開口タイプ

タイプ 腰高式(二重引き戸タイプ)
メーカー 三菱重工交通・建設エンジニアリング
開閉方式 開扉 自動(定位置停止検知・両数検知)
閉扉 自動(車両ドア開閉検知)
停止位置許容範囲 【推定】±600mm(TASCなし)
開口幅 通常部 【推定】3,480mm
最大開口部 4,670mm
非常脱出ドア 開き戸式(一部の車両連結部)
支障物検知センサ 3Dセンサ

南海電気鉄道のグループ子会社である泉北高速鉄道(2025年4月1日に南海と合併予定)では、2024年度に和泉中央駅で同社初のホームドアが整備されました。当初は秋ごろの完成予定でしたが、工事が順調に進んだことから1番線が2024年7月20日、2番線が同年8月3日に稼働開始されました。

同駅のホームドアは南海が難波駅1番線などに導入したタイプをベースとしながら、特急「泉北ライナー」にも対応するため一部の開口幅がさらに拡大されています。

1 ホームドアの仕様

南海難波駅1番線などのホームドア(以下:難波駅1番線タイプ)は、車体長約21m・片側4ドア構造の一般型車両に特化しながらも、車種によるドア位置の違いに対応するため二重引き戸式大開口タイプとなっています。本タイプも特急型車両のドア位置に関係しない箇所は難波駅1番線タイプと同等の開口幅で、基本構造も大きくは変わっていないようです。

デザイン面では、扉部分を同社の車両デザインに準じた2色のブルーに塗装されている点が特徴です。

特急車に対応した最大開口部

一方、特急「泉北ライナー」として同駅に発着する12000系・11000系のドア位置は一般型車両と大きく異なります[1]さらに12000系と11000系でもドア位置が異なる。。そこで、2号車1番ドア・4号車1番ドア(一般車8両編成基準)の開口幅は難波駅1番線タイプよりも1m以上広い4,670mmとしたうえで、特急型車両の隣接する2両分のドアを1つの開口部で対応しています(2項の図を参照)。

12000系3・4号車ドアは開口幅ギリギリ
停止位置ほぼジャストに止まってもこの位置
筐体線路側の侵入防止柵には角度がつけられている

しかしながら、構造上の限界まで開口幅を広げても、特急型車両の3・4号車ドアに対応する開口部はドア幅+停止許容範囲分の開口幅を確保することができませんでした。そこで、筐体をホーム内側にセットバックして車両とのすき間を広げ、車両ドアと筐体の重なりをある程度許容することにより、停止位置が多少ずれても乗降を可能としています。

扉は互い違いに収納される
車両ドア間の筐体
車両連結部の筐体(開き戸あり)

前述の通り、特急対応の大開口部を除く基本構造は難波駅1番線タイプに準じており、ホーム両端および車両連結部には開き戸式の非常脱出ドア(兼:乗務員出入口)が設けられています。

各開口部の線路側には3Dセンサと非常開ボタンが1か所ずつ設けられています。

最大開口部に隣接する車両連結部には開き戸がない
乗務員扉操作盤

ただし、最大開口部の長い扉を収納する2-3号車および4-5号車間の筐体には構造上開き戸が設けられていません。このうち2-3号車間連結部は6両編成の停止位置でもあるため、ホームドアが閉まっていても乗務員が出入りできるように、隣接する1か所のみの開口部を開閉できる「乗務員扉操作盤」が設けられていました。

ジグザグに配置された筐体

同駅のホームドアは一般車8両・6両編成および特急車4両編成に対応しており、それぞれの前部・後部となる箇所は乗務員出入りスペース確保のため筐体がホーム内側にセットバックされています。これに加えて前述した車両ドア重なり許容のためのセットバックもあるため、ホーム上の柱との間隔が狭く通行しにくい箇所も多く発生していました。

運転士用停止位置マーカー
前方にあるのは乗務員表示灯
乗務員操作盤(写真は特急車用)

各編成両数の前部・後部には乗務員操作盤が設けられています。ただし、後述のように地上完結型連携システムにより開閉が自動化されているため、普段は使用されません。

2 車両ドアとの位置関係

上図は1番線における特急型車両が停車する2~5号車付近(一般車8両編成基準)の筐体配置を表しており、左右反転すると2番線の配置になります。

前述の通り、特急型車両は隣接する2両分の車両ドアを1つの開口部で対応するように停止位置が調整されており、それでも対応しきれない3・4号車ドアは筐体との重なりを許容しています。ただし、12000系と11000系でもドア位置が異なるため、12000系の1・2号車はそれぞれ別の開口部が対応します。

3 ホームドアの開閉方式

3.1 開閉方式の概要

同駅のホームドア開閉方式は以下の通りです。

  • 開扉:自動(定位置停止検知・両数検知)
  • 閉扉:自動(車両ドア開閉検知)

南海電鉄のホームドア開閉方式は、地上側の各種センサが車種・編成両数やドア開閉などを検知してホームドアを自動開閉する「地上完結型連携システム」が採用されています。よって基本的に車掌がホームドアを操作する必要はありません。

システムの詳細は別記事をご覧ください。

車両ドア開閉検知センサ
11000系の折り戸式ドアにも対応

同駅で特筆されるのが、折り戸式ドアを採用している11000系でもしっかりと車両ドア開閉検知センサが対応している点です。車両ドアの動きを直接読み取るホームドア制御システムは既に多くの鉄道事業者で実績がありますが、折り戸式ドアの車両が発着する駅への導入は同駅が初めてだと思われます。

ホームドア状態表示灯と停止位置範囲表示灯
車掌向け表示灯には乗降検知表示灯も一体型で設置
特急型車両到着時は「L」と表示

停止位置範囲表示灯・ホームドア状態表示灯の仕様もこれまでと同じです。特急型車両到着時は停止位置範囲表示灯にライナーの頭文字「L」が表示されます。なお、ホームドア開閉箇所が異なる12000系と11000系をどのように判別しているかは今のところ分かっていません。

同駅では新たに「乗降検知機能」が追加され、各開口部の3Dセンサが旅客の乗降を検知するとチャイム鳴動および表示灯(黄色[])の消灯で車掌に知らせ、閉扉操作を行うタイミングをアシストしています。

3.2 各種センサの配置

上図は1番線における各種センサの配置を表しており、左右反転すると2番線の配置になります。

これまでは1ホームにつき1か所の車両連結部に設けられていた停止位置検知用センサが一般車用だけで3か所もあること、また特急車用にもそれぞれ別にセンサが必要なことから、これまでの設置駅と比べてセンサの総数は非常に多くなっています。

4 おわりに

車両ドアとの重なりを許容することで車両ドア位置の難題をクリアした同駅のホームドアですが、ホーム幅員の減少による弊害も生じているのは事実なので、苦渋の決断だったのではないかと推察されます。それに、今回と同じ手法がさらにドア位置のレパートリーが増える南海本線・高野線でも通用するとは限りません。

冒頭でも述べた通り、泉北高速鉄道は2025年4月1日に南海へ吸収合併されます。同駅のホームドア設置のニュースリリースにて “今後も当社線内各駅においてホームドアの設置を進めていく予定” と発表していましたが、泉北高速鉄道としてのホームドアは同駅が最初で最後となりそうです。

出典・参考文献

脚注

References
1 さらに12000系と11000系でもドア位置が異なる。

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