JR西日本のホームドア:改良型可動式ホーム柵(3ドア車用)

タイプ 腰高式
メーカー JR西日本テクシア・ナブテスコ
開閉方式 開扉 自動(定位置停止検知)
閉扉 車掌手動操作
停止位置許容範囲 ±1,000mm(TASCなし)
開口部幅 3,560mm
非常脱出ドア なし
支障物検知センサ 3Dセンサ

JR西日本では、京阪神エリアの主要駅を中心に可動式ホーム柵・昇降式ホーム柵などの整備を進めています。これらのさらなる整備促進に向けて開発されたのが、従来型の可動式ホーム柵が有する安全機能を維持しながら、風荷重の低減と軽量化により工期短縮を図った「改良型可動式ホーム柵」です。

このホームドアは20m3ドア車用と20m4ドア車用の2種類の開発が行われており、まずは20m3ドア車用が2024年度の大阪環状線西九条駅1番のりばを皮切りに実用化されました(2024年6月28日稼働開始)。同年度中には隣の弁天町駅でも整備されています。

1 ホームドアの仕様

このホームドアはJR西日本・JR西日本テクシア・ナブテスコの3社によって共同開発され、従来型をベースとしながら構造の見直しで軽量化を図り、さらに風が通り抜けやすい構造としたことで風荷重を低減しました。これらの改良によって重量および受風面積をそれぞれ従来型の約3分の2に削減し、ホーム補強工事の迅速化や工期の短縮・工事費用の圧縮を実現しています。

西九条駅・弁天町駅で採用されたのは、大阪環状線で運用される20m3ドア車に適合した一重引き戸式のタイプです。2本のフレームで構成された扉部分には340mmの中央開口が設けられており、下部隙間も従来型よりやや広い240mmとなりました。それでも同様の設計思想で開発されたJR東日本の「スマートホームドア」に比べると従来型に近いしっかりとした印象を受けます。

扉は互い違いに収納される
ホーム側から見た車両ドア間の筐体
ホーム側から見た車両連結部の筐体
線路側から見た車両ドア間の筐体
線路側から見た車両連結部の筐体と扉部分

筐体部分は駆動装置などを収めた部分と扉を収納する中間部分に分かれており、車両ドア間と車両連結部の寸法の違いには中間部分の長さを変えることで対応しています。なお、従来型と同じく筐体部分に非常脱出ドアは設けられていません。

各開口の線路側には両側2か所に非常開ボタン、片側1か所に3D式支障物検知センサが設けられています。これらの仕様も従来型と同じです。

全開状態でも引き残しのある扉
※設置工事中に撮影

本タイプの特徴として、扉は全開状態でも多少の引き残しがあり、中央開口の隙間で手や荷物を挟まないようにされています。隙間にある黒い物体は挟み込み防止用のセンサでしょうか?

2 ホームドアの開閉方式

ホームドアの開閉方式は以下の通りです。

  • 開扉:自動(定位置停止検知)
  • 閉扉:車掌手動操作

JR西日本在来線のホームドア・昇降式ホーム柵は、車両側との通信を必要とせず、地上側の各種センサが列車の定位置停止・編成両数などを検知して自動開扉するシステムが採用されています。一方、閉扉は車掌による手動操作で行います。

システムの詳細は別記事で紹介しています。

車掌用操作盤とその周辺
ホーム両端には乗務員出入り用の引き戸がある
※設置工事中に撮影

西九条駅・弁天町駅はどちらも8両編成のみが発着する駅のため、編成両数を判別する編成検知センサや他の編成両数用の操作盤類は設けられていません。在線検知センサや車掌用操作盤・乗務員表示灯などの仕様も従来と特に変わっていないようです。

3 おわりに

当記事で紹介した3ドア車用タイプは2024年度中に西九条駅・弁天町駅の全ホームにて整備が完了する予定です。また、今後同社が整備する可動式ホーム柵はこの「改良型」が基本となる方針なので、2025年に整備予定の天王寺駅11・14番のりばなども本タイプが採用される可能性が高いと考えられます。

さらに冒頭でも述べた通り、「改良型」は20m4ドア車に適合した二重引き戸式のタイプの開発も行われています。早ければ2026年度に整備予定のJR京都線吹田駅やJR東西線新福島駅にて実用化されるかもしれません。

出典・参考文献

脚注

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