東京メトロ 東西線のホームドア:開口幅を狭めた通常タイプ(2024年度~)
タイプ | 腰高式 | |
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メーカー | ナブテスコ | |
開閉方式 | 車掌手動操作 | |
停止位置許容範囲 | ±450mm(ATO) | |
開口部幅 | 【推定】2,700mmまたは3,000mm | |
非常脱出ドア | 開き戸式(各号車連結部) | |
支障物検知センサ | 3Dセンサ |
東京メトロ東西線では、2017年度のホームドア整備開始以来、車種によるドア位置の違いに対応可能な二重引き戸式大開口ホームドアをが採用されてきました。同タイプは2022年度までに路線全体の約半数にあたる12駅24ホームで設置が完了しています。
しかし、2024年度に整備された茅場町駅4番線(B線:中野方面ホーム)からは従来より開口幅を狭めた標準的な一重引き戸タイプが採用されました。この仕様変更には、同線におけるATO(自動列車運転装置)の導入準備が深く関わっています。
目次
1 ホームドア仕様変更の経緯
1.1 ATO導入で開口幅を縮小
冒頭でも述べた通り、東西線に大開口ホームドアが採用された理由の一つは、乗降時間短縮を目的とした「ワイドドア車」をはじめ車種によるドア位置・サイズの違いが大きいためです。そしてもう一つの理由が、ホームドア整備を最優先するため、車両側の改造に費用・時間がかかるATO(自動列車運転装置)またはTASC(定位置停止装置)を導入しなかったことでした。
運転士による手動ブレーキングのままでホームドアを整備するには、停止許容範囲を広げて運転士の負担を軽減することが求められます。そこで、最大開口幅約3.6mの二重引き戸式大開口ホームドアを採用することにより、停止許容範囲±750mmを確保しながらさまざまな車種への対応を実現しました。
ただし、東京メトロは将来的に全路線のATO化を計画しており、東西線でも地上側・車両側ともに順次対応工事が行われました。そして2024年8月17日からは一部編成で先行的にATO運転が開始されます。ATOは±450mmの高い停止精度を確保できるため、必要なホームドア開口幅も最大約3.6mから約3.0mに狭めることが可能です。こうした経緯によって、二重引き戸式大開口タイプから通常タイプへの仕様変更が行われました。
東京メトロが2017年に発表したホームドア全駅設置計画の資料にも、東西線のホームドアについて「ドアサイズは通常および大開口」と書かれていたため、当初から大開口タイプから通常タイプへの移行が計画されていたことがうかがえます。
1.2 中途半端なタイミングでの移行
一方、不可解だったのはその移行タイミングです。東西線では2022年4月稼働開始の西葛西駅以来しばらくホームドア整備が途絶え、2024年10月19日稼働開始の茅場町駅が約2年半ぶりの整備駅となりました。しかし、3番線(A線:西船橋方面ホーム)にはこれまでと同じ二重引き戸式大開口タイプが採用されたのに対し、4番線(B線:中野方面ホーム)には同線初となる通常タイプが採用されたのです。
しかも、通常タイプはATO導入による停止精度の向上を前提としていたにもかかわらず、ATO未対応の編成が多数残っている状態のまま設置されました。さらに3項で紹介するように、開閉方式もこれまでの設置駅で採用されていた自動開閉システムではなく、2024年12月末時点では暫定的に車掌による手動操作で行われています。
これが計画通りのスケジュールなのか、それとも車両側の改造工事などが間に合わなかったのかは不明ですが、いずれにしろ運転士・車掌にとっては従来より業務負担を強いられている状況となっています。
2 ホームドアの仕様
前述の通り、本タイプはATO導入による停止精度の向上を前提として開口幅を縮小し、それによって二重引き戸式でなくても戸袋スペースを確保できることから通常の一重引き戸式となりました。車種ごとのドア位置を考慮し、開口幅は各号車1・4番ドアが約3.0m、2・3番ドアが約2.7mとなっています[1]両先頭車は一部例外あり。。
メーカーは大開口タイプと同じくナブテスコです。大開口タイプは扉部分が黒を基調としたスタイリッシュなデザインだったのに対して、本タイプはシルバー基調となったためイメージはかなり変わりました。また、茅場町駅の次に整備された南行徳駅ではラインカラーの装飾が省略されています。
外観・構造は同メーカー製の半蔵門線タイプと類似しており、各号車連結部には大開口タイプに無かった開き戸式非常脱出ドアが設けられています。一方、半蔵門線タイプとの大きな違いは、筐体部分のガラス透過部が廃止されたことです。
各開口線路側の非常開ボタン・3D式支障物検知センサや、一部の車両連結部筐体に非常停止ボタンが内蔵されている等の仕様は大開口タイプを踏襲しています。
3 ホームドアの開閉方式
東西線ホームドアのうち2022年度までの設置駅では、地上側の各種センサで列車の定位置停止・車両ドアの開閉を検知し、それに追従してホームドアを自動開閉するシステムが導入されています。この方式は車両側の改造が不要なので、トランスポンダ装置を用いた車両ドアとの開閉連携方式と比べてホームドア早期整備に貢献しました。
しかし、2024年度以降の設置駅では[2]大開口タイプが設置された茅場町駅A線も含む。この自動開閉システムを導入せず、開閉ともに車掌がリモコンで操作する方式が採用されました。その理由は、トランスポンダ式連携への移行に向けた準備が整うまでの暫定措置だと推測されています。
暫定的なホームドア手動扱いについては別記事にまとめています。
4 おわりに
東京メトロは2025年度末までに全路線全駅(一部の大規模改良工事実施駅を除く)へのホームドア整備を目指しています。東西線の残る未設置駅でも着々と設置工事が進んでおり、基礎部分の形状等から、今後は当記事で紹介した通常タイプが標準になる見込みです。
2年以上の時を経てスタートした東西線ホームドア整備の第2章ですが、この期間にも水面下でさまざまな準備を進め、それでも暫定措置とせざるを得ない理由があったのでしょう。ATOの本格運用およびトランスポンダ式連携への移行はいつ頃になるのか、今後の動向が一層注目されます。