東京メトロ 東西線のホームドア:2024年度設置駅の暫定的な手動扱い

東京メトロ東西線で2022年度までに設置されたホームドアは、地上側設備のみで列車の定位置停止・車両ドアの開閉を検知し、それに追従してホームドアを自動開閉するシステムが導入されています。この方式は車両側の改造が不要なので、トランスポンダ装置を用いた車両ドアとの開閉連携方式と比べてホームドア早期整備に貢献しました。

しかし、2024年度以降の設置駅ではこの自動開閉システムを導入せず、車掌による手動操作となりました。その理由は、トランスポンダ式連携への移行に向けた準備が整うまでの暫定措置だと推測されています。

1 リモコンを使用した開閉操作

東西線では2022年4月稼働開始の西葛西駅以来しばらくホームドア整備が途絶え、2024年度の茅場町駅が約2年半ぶりの整備駅となりました。しかしこれまでの設置駅とは違い、自動開閉システム用の各種センサは設置されないまま10月19日の稼働開始を迎えます。

ではどうやってホームドアを開閉するのか、その答えは車掌がリモコンを使って手動操作するという方法でした。茅場町駅の次に整備された南行徳駅(12月21日稼働開始)も同じ運用です。これまでの設置駅では車両側のドアのみを操作すればよかったのですから、車掌にとっては業務が増加しています。

ホームドアに内蔵されたリモコン受光部
茅場町駅B線のホーム
「開けろ!ホームドア」など多数の注意喚起が

リモコン受光部はホームドアのセンサボックスに内蔵されました。なお、これまでの設置駅も自動開閉が行えない場合などにリモコンでの操作が可能でしたが、リモコン受光部はホーム天井からの吊り下げ式でした[1]発車サイン音の操作にもリモコンを使用するため、受光部はその両方を兼ねている。

他駅と取り扱いが異なる以上、車掌がホームドア操作を失念してしまう可能性も高くなります。そうしたヒューマンエラーを防ぐため、ホーム最後部付近には「開けろ!ホームドア」「リモコンで「開」」といった注意喚起の表示が多数設けられています。

各ホーム1か所に設けられたセンサ
車両連結部の位置を測定している
茅場町駅のDS表示灯
矢印はリモコン受光部の場所を指している?

先ほど “自動開閉システム用の各種センサは設置されなかった” と記載しましたが、正確には1ホームあたり1か所(進行方向1-2両目連結部)に列車の定位置停止検知用と思われる2Dセンサが1基のみ設置されていました。おそらく列車在線時のみホームドア操作を有効にするといった制御なのだと思われますが、「DS表示灯」の左側(他駅なら定位置停止検知でDが点灯する部分)には謎の[↓]マークが貼られていました。

ちなみに、自動開閉システム用の定位置停止検知センサは1ホームあたり2か所、さらに冗長性確保の観点から1か所につき3基のセンサを使っていたので、それに比べればかなり簡易的になっているのが分かります。

2 トランスポンダ式連携化までの暫定措置か

東西線各駅に設置済みのATO地上子
左:停止位置までの距離情報を送信する地上子
右:車両側とドア開閉情報などを送受信する地上子

2024年度設置駅で自動開閉システムが導入されなかった理由として有力なのが、ATO(自動列車運転装置)の導入に伴ってトランスポンダ装置を用いた車両ドアとホームドアの開閉連携化も行われることです。

冒頭でも述べた通り、東西線はホームドア早期整備のために車両改造が不要な自動開閉システムを採用しましたが、これはあくまでも将来的なATO導入およびトランスポンダ式連携化までの “つなぎ” でした。現に数年前から地上側・車両側ともに連携化への準備が進んでいたことから、2024年度以降の新設駅では当初からトランスポンダ式連携で運用されるのかとも思われていたのです。

ATO非搭載車は乗務員扉にステッカーが貼られている

しかし、茅場町駅ホームドア稼働開始までに全編成のATO・ホームドア対応改造は完了せず、未対応の編成も多数残っていました。これが計画通りのスケジュールなのか、それとも計画に遅れが生じたのかは不明ですが、かと言って全編成対応までの短期間のために自動開閉システムを導入するのは非効率です。このような事情から、暫定的に車掌による手動操作を採用したのだと思われます。

3 おわりに

前述の通り、2024年12月末時点で暫定的な手動扱いを行っているのは茅場町駅と南行徳駅の2駅です。茅場町駅で稼働開始2か月後に様子を観察したところ、手動操作に伴う大きなタイムロスは感じませんでした。しかしこのまま設置駅が増えると車掌の業務負担もさらに増えてしまうので、車掌目線としては早期の連携化が望まれるのでしょうか。

そして気になるのは東西線と同じ自動開閉システムを導入した半蔵門線のホームドアです。半蔵門線でも徐々に車両側の対応改造が進んでいますが、残る未設置駅[2]水天宮前駅・清澄白河駅・住吉駅の3駅。も2025年度には設置される見込みです。開閉方式は自動・連携・手動のどれになるのでしょうか。

出典・参考文献

  • 酒井 治郷、面川 一路、光野 重彦、村上 弘和 「ホームドア自動開閉扉システムの導入」『鉄道サイバネ・シンポジウム論文集』Vol.55、日本鉄道サイバネティクス協議会、2018年

脚注

References
1 発車サイン音の操作にもリモコンを使用するため、受光部はその両方を兼ねている。
2 水天宮前駅・清澄白河駅・住吉駅の3駅。

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