京成電鉄のホームドア:日暮里駅下りホームのタイプ

タイプ 腰高式(2番線は一部二重引き戸タイプ)
メーカー 三菱重工交通・建設エンジニアリング
開閉方式 開扉 自動(車種判別・定位置停止検知・両数検知)
閉扉 自動(車両ドア開閉検知)
停止位置許容範囲 ±750mm(TASCなし)
開口部幅 1番線(ライナー) 【推定】2,400mm
2番線(一般列車) 【推定】3,300mm
非常脱出ドア 1番線(ライナー) 開き戸式(各号車ドア横)
2番線(一般列車) 開き戸式(一部の車両連結部)
支障物検知センサ 3Dセンサ

京成電鉄の日暮里駅では、2018年2月24日に下りホーム1・2番線で同社初のホームドアが稼働開始されました。「スカイライナー」などに使用されるAE形とそれ以外の一般型車両ではドア位置が大きく異なりますが、同駅下りホームは1番線がライナー用、2番線が一般列車用に分かれているため、それぞれの車両ドア位置に特化した標準的なホームドアが採用されています。

1 ホームドアの仕様

1.1 1番線(ライナー用ホーム)

ライナー列車が発着する1番線には、AE形のドア位置(車体長19m・1ドア車)に合わせたホームドアが設置されました。ホームドアのメーカーは三菱重工交通機器エンジニアリング[1]現:三菱重工交通・建設エンジニアリングで、1番線の壁面には同社の広告も掲出されています(3項に写真を掲載)。

AE形のドアは片開き式ですが、ホームドアは標準的な両開き式となりました。開口幅はAE形のドア幅900mmに停止許容範囲±750mmを加えた推定2,400mmです。

ホーム側から見た1開口分の筐体・扉
線路側から見た筐体と非常脱出ドア
最後部(8号車)の非常脱出ドアは乗務員扉を兼ねるため乗務員操作盤付近に設置

AE形は1両につき1ドアのためドア間隔が非常に長く、間にはホームドア本体と同一形状の柵が設置されています。柵に特別な処理は施されておらず、白い壁がずらりと並ぶ形となりました。

各開口部の線路側には非常開ボタンと3D式支障物検知センサが1基ずつ設けられています。また、各開口部のホーム側から見て左側には開き戸式の非常脱出ドアが設けられています。

1.2 2番線(一般列車用ホーム)

1番線の向かい側にある2番線には、一般型車両(車体長18m・3ドア車)に合わせた構造のホームドアが設置されました。扉部分の基本的なデザインやデザインは1番線と同じですが、車両ドアの幅がAE形より広いこと、また車種によるドア位置の多少の違いに対応するため、開口幅は1番線より広い推定3,300mmです。

扉は互い違いに収納される
ホーム側から見た車両ドア間の筐体
ホーム側から見た車両連結部の筐体
線路側から見た車両ドア間の筐体
線路側から見た車両連結部の筐体

非常開ボタンと3D式支障物検知センサの仕様は1番線と同じです。

開口幅が広いため、車両ドア間の筐体は左右の扉が互い違いに収納されます。一方、車両連結部の筐体は左右で筐体が独立しています。

非常脱出ドアがある関係で二重引き戸タイプとなった箇所
非常脱出ドア(兼:乗務員扉)と乗務員操作盤
先頭側には運転士向け停止位置マーカーが貼付

京成線の一般列車は8両・6両・4両編成が運行されているため、各編成両数の前部・後部は乗務員出入りスペース確保のため筐体がホーム内側にセットバックされています。また、6両・4両編成の前部・後部となる箇所には乗務員出入り口を兼ねた非常脱出ドアが設けられているため、そこに収納される扉は戸袋スペースの関係で二重引き戸タイプとなっています。

1番線側も含めて、各編成両数の前部・後部には乗務員操作盤が設けられています。なお、後述のように現在の同駅のホームドアは地上完結型連携システムによって自動開閉するため、通常は使用されません。

2 ホームドアの開閉方式

2.1 開閉方式の概要

ホームドアの開閉方式は1・2番線ともに以下の通りです。

  • 開扉:自動(車種判別・定位置停止検知・両数検知)
  • 閉扉:自動(車両ドア開閉検知)

京成電鉄のホームドアは、直通先の都営浅草線・京急線で採用されたQRコード式制御システムではなく、地上側設備のみで車種・編成両数の判別や車両ドアの開閉を検知する「地上完結型連携システム」によって制御されています。

詳しくは別記事をご覧ください。

なお、当初このシステムによって行われていたのは車種・編成両数の判別のみで、ホームドアの開閉自体は車掌が直接操作盤のボタンを押していました。その後システムの信頼性が確認されたためか、2018年度には開扉が自動化、さらに2019年度には車両ドア開閉検知用センサの増設により閉扉も自動化されました。

2.2 各種センサの配置

日暮里駅下りホームの各種センサ配置図

下りホームにおける各種センサの配置は上図の通りです。

停止位置検知用センサは4か所にあり、そのうちのA・DはAE形の連結部に、B・Cは一般型車両の連結部に合わせて設置されているため、以下のように車種を判別することができます。

  • センサA・センサDで連結部を検知=AE形と判定
  • センサB・センサCで連結部を検知=一般車と判定

AE形と一般車では車体長が異なるため、例えば一般車の連結部をセンサAとDで同時に検知することは物理的に有り得ません。これによって確実に車種を判別し、AE形なら1番線側の、一般車なら2番線側のホームドアだけを自動開扉しています。

3 おわりに

1番線の壁面に掲出されている三菱重工交通機器エンジニアリング[2]現:三菱重工交通・建設エンジニアリングの広告

言うまでもなくホームドアの設置には莫大な費用・期間が掛かります。しかし同駅下りホームはライナー用と一般列車用にホームが分かれていたおかげで、車両ドア位置の違いが影響しないという観点では比較的容易にホームドアを設置できました。

一方、AE形と一般型車両が同じホームに発着する上りホーム0番線は、2016年当時の計画だと固定柵が整備される予定でしたが、後にホームドアを整備する方針に変更されました。当初は昇降式など新タイプのホームドアの導入も検討されたそうですが、最終的には下りホームのタイプをベースに開口幅を最大限まで広げた二重引き戸式大開口ホームドアを採用することで両車への対応を可能としました。

出典・参考文献

脚注

References
1, 2 現:三菱重工交通・建設エンジニアリング

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