京成電鉄のホームドア:AE形対応大開口タイプ

タイプ 腰高式(一部二重引き戸タイプ)
メーカー 三菱重工交通・建設エンジニアリング
開閉方式 開扉 自動(車種判別・定位置停止検知・両数検知)
閉扉 自動(車両ドア開閉検知)
停止位置許容範囲 ±650mm(TASCなし)
開口部幅 一般部 【推定】3,200mm
最大開口部 【推定】5,400mm
非常脱出ドア なし
支障物検知センサ 3Dセンサ

京成電鉄では、2017年度に日暮里駅下りホーム1・2番線で同社初のホームドアが整備されました。下りホームはライナー列車と一般列車でホームが分かれているため、それぞれの車両ドア位置に特化した一般的なタイプが採用されています。一方、2018年度に整備された上りホーム0番線は、ライナー列車と一般列車が同じホームに発着するため、両車の大きく異なるドア位置に対応可能な最大幅5m超の二重引き戸式大開口ホームドアが採用されました。

この大開口ホームドアはその後整備された空港第2ビル駅・成田空港駅でも採用されており、設置当初から現在[1]2025年2月時点。に至るまで、在来線のホームドアとしては国内最大の開口幅を有しています[2]昇降式等を除く。

1 ホームドアの仕様

最も広い開口部は約5.4m
空港第2ビル駅・成田空港駅の成田スカイアクセス線ホームは扉部分をオレンジ色に塗装

京成の代表的列車「スカイライナー」などに使用されるAE形は車体長19m・1ドア車なのに対し、その他の一般型車両は車体長18m・3ドア車と車両規格が大きく異なっています。そのため、標準的な腰高式ホームドアでは両車のドア位置に対応することが困難とされ、昇降式など新タイプのホームドアの導入も検討されたそうです。

しかし最終的には、三菱重工交通機器エンジニアリング[3]現:三菱重工交通・建設エンジニアリング製の二重引き戸式大開口ホームドアを最大限活用することで両車への対応を可能としました。開口幅は最も広いところで5mを超えており、冒頭でも述べた通り在来線としては国内最大の幅です。

ただし、停止許容範囲は日暮里駅下りホームの±750mmより100mm狭い±650mmとされました。構造上の限界でそれ以上広い開口幅は不可能だったのだと思われます。

通常の開口部
日暮里駅2番線のタイプより若干狭い
片側のみ二重引き戸の開口部
最大開口部よりは一回り狭い開口部

その他の開口部も、AE形と一般型車両のドア位置のずれ量に応じて、二重引き戸と一重引き戸を組み合わせてさまざまな開口幅が作り出されています。標準の開口幅は日暮里駅2番線のタイプより約100mm狭い推定3,200mmです。

手前:二重引き戸を収納する筐体
奥:一重引き戸を収納する筐体
線路側から見た最大開口部
支障物検知センサの数に注目

左右の扉が互い違いに収納される筐体構造は日暮里駅2番線のタイプと同じですが、収納する扉が左右ともに二重引き戸となる筐体はかなりの分厚さです。

各開口の線路側には非常開ボタンと3D式支障物検知センサが設けられています。基本的な仕様・配置は日暮里駅下りホームのタイプと同じですが、大開口部なおかつ乗務員出入りスペースのため筐体がホーム内側にセットバックされている箇所は支障物検知センサが2基に増やされています。

乗務員操作盤とその周辺
右上にある3つのボタンが「乗務員扉操作盤」

日暮里駅2番線のタイプは6両編成および4両編成の前部・後部となる箇所に非常脱出ドア(兼:乗務員扉)を設けていましたが、本タイプは戸袋スペースの関係上省略されています。その代わりとして、ホームドアが閉まっていても乗務員が出入りできるように、隣接する1か所のみの開口部を開閉できる「乗務員扉操作盤」が設けられています。

2 車両ドアとの位置関係

上図は日暮里駅0番線におけるAE形・一般型車両の車両ドアとホームドアの位置関係を表しています。駅構造が特殊な空港第2ビル駅1・3番線を除けば、他の設置駅も配置は同じです。

AE形と一般型車両の車体長の違いとAE形のドア配置が影響し、ホームの成田空港方ほどドア位置のずれが大きくなっているのが分かります。そのため最大開口が設けられている箇所も成田空港方に集中しており、特にAE形の2・3号車ドアは一般車基準で1・2号車開口部に食い込むような形となっています。

3 ホームドアの開閉方式

3.1 開閉方式の概要

ホームドアの開閉方式は以下の通りです。

  • 開扉:自動(車種判別・定位置停止検知・両数検知)
  • 閉扉:自動(車両ドア開閉検知)

京成電鉄のホームドアは、直通先の都営浅草線・京急線で採用されたQRコード式制御システムではなく、地上側設備のみで車種・編成両数の判別や車両ドアの開閉を検知する「地上完結型連携システム」によって制御されています。

詳しくは別記事をご覧ください。

なお、日暮里駅0番線および空港第2ビル駅における稼働開始当初は開扉のみが自動で、閉扉は車掌が直接操作盤のボタンを押していました。その後、2019年度に車両ドア開閉検知用センサが増設されたことで、閉扉も連動するようになりました。大開口ホームドアは開閉に時間がかかるのがデメリットなので、閉扉の自動化によりタイムロスが低減されています。

3.2 各種センサの配置

日暮里駅0番線の各種センサ配置図

上図は日暮里駅0番線における各種センサの配置です。

AE形と一般車が共に発着するホームでは、編成の中央にあたる4-5号車連結部を合わせるように両車の停止位置が設定されており[4]この位置がドア位置のずれを最も少なくできるため。、その4-5号車連結部にセンサBが設置されています。一方、両車で連結部のずれが大きくなる位置にAE形用のセンサAと一般車用のセンサCを設置することで、以下のように車種を判別します。

  • センサA・センサBで連結部を検知=AE形と判定
  • センサC・センサBで連結部を検知=一般車と判定

AE形と一般車で車体長が異なる以上、例えば一般車の連結部をセンサAとBで同時に検知することは物理的に有り得ません。これによって確実な車種判別を可能としているのです。

4 おわりに

以前は対応困難とされていたAE形と一般型車両のドア位置の違いも、数年前までは考えられなかったほどの巨大な開口幅で見事にカバーすることが可能となりました。ここまでの巨大開口が実現できたのは、京成の一般型車両が18m3ドア車でドアピッチが比較的広いために、それを収納できる戸袋スペースを確保できたからでもあります。今後これを超える開口幅が登場することはあるのでしょうか。

出典・参考文献

脚注

References
1 2025年2月時点。
2 昇降式等を除く。
3 現:三菱重工交通・建設エンジニアリング
4 この位置がドア位置のずれを最も少なくできるため。

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