京成電鉄のホームドア:押上駅のタイプ

タイプ | 腰高式 | |
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メーカー | 三菱重工交通・建設エンジニアリング | |
開閉方式 | 開扉 | 自動(定位置停止検知・両数検知) |
閉扉 | 自動(車両ドア開閉検知) | |
停止位置許容範囲 | ±750mm(TASCなし) | |
開口部幅 | 【推定】3,200mm | |
非常脱出ドア | なし | |
支障物検知センサ | 3Dセンサ |
京成電鉄押上線と都営地下鉄浅草線の境界駅であり、京成電鉄が管轄する押上駅では、2023年度に全4ホームでホームドアが整備されました。各ホームの稼働開始日は以下の通りです。
- 4番線(京成線方面ホーム):2023年10月18日
- 3番線(京成線方面ホーム):2023年12月2日
- 2番線(浅草線方面ホーム):2023年12月28日
- 1番線(浅草線方面ホーム):2024年2月20日
京成のホームドア設置駅はこれが4駅目で、押上線内では初の整備でした。一方、浅草線は2023年11月までに東京都が管轄する全駅(本所吾妻橋駅~西馬込駅)でホームドア整備が完了していたため、押上駅の設置によって名実ともに全駅整備が完了しました。
目次
1 ホームドアの仕様
1.1 基本仕様

同駅は京成管轄のため、京成線内の既設駅と同じく三菱重工交通・建設エンジニアリング製のホームドアが採用されました。しかし、その構造は既設のタイプと大きく異なっており、神戸市営地下鉄西神・山手線の2021年度以降の設置駅で採用された「新型可動式ホーム柵[1] … Continue reading」と外観が類似しています。
停止許容範囲は±750mm、開口幅は浅草線のタイプと同じく推定3,200mmです。
筐体部分の開口部両縁および扉部分の戸先にはラインカラーの装飾が施されており、1・2番線(浅草線方面ホーム)が浅草線のラインカラーであるローズ色、3・4番線(京成線方面ホーム)が京成本線系統のラインカラーである青色に塗り分けられています。

各開口部の線路側には非常開ボタンと3D式支障物検知センサが1基ずつ設けられています。一方、非常脱出ドアは設けられていません[2]ホーム両端には乗務員出入り用の引き戸がある。。
1.2 ホームによる仕様の違い
同駅のホームドアの特徴として、外側の1・4番線と内側の2・3番線で一部の仕様が異なっています。これは同駅の配線と運行形態によるもので、具体的な違いは以下の通りです。
(1)1・4番線の仕様

停止位置マーカーと乗務員扉操作盤がある
外側の1・4番線は配線上折り返しが不可能なので、京成線~浅草線の直通列車のみが発着します。そして浅草線の定期列車はすべて8両編成で運行されることから、1・4番線のホームドアは8両編成の前部・後部のみに乗務員操作盤および乗務員出入りスペース確保のための筐体セットバックが設けられています。
ただし、ダイヤ乱れ時などに6両編成が入線することを考慮して、後述するホームドア制御システムは6両編成にも対応しています。また6両停止位置には、ホームドアが閉まっていても乗務員が出入りできるように、乗務員扉直近の開口部のみを開閉する「乗務員扉操作盤」が設けられていました。
(2)2・3番線の仕様

筐体がホーム内側にセットバックされている
一方、内側の2・3番線は京成線方面・浅草線方面の双方に折り返しが可能な配線となっており、京成側の折り返し列車に限り定期列車で6両編成、臨時列車で4両編成も発着します[3]4両編成は年末年始の終夜運転で乗り入れ実績あり。。そのため2・3番線のホームドアは4両・6両停止位置にも乗務員操作盤および乗務員出入りスペース確保のための筐体セットバックが設けられていました。もちろん、後述するホームドア制御システムも6両・4両に対応しています。
2 ホームドアの開閉方式
2.1 開閉方式の概要
同駅のホームドア開閉方式は以下の通りです。
- 開扉:自動(定位置停止検知・両数検知)
- 閉扉:自動(車両ドア開閉検知)
浅草線内のホームドアはQRコード式制御システムを採用していることで有名ですが、押上駅は京成側の標準方式である「地上完結型連携システム」が採用されています。この方式はQRコードではなく、車体や車両ドア自体の動きを各種センサが読み取ることで、列車に追従したホームドアの自動開閉を行います。
システムの詳細は別記事をご覧ください。

車両ドアに貼付されているQRコードは京成のホームドア制御には一切関係ない
同駅は浅草線方面からの到着時・浅草線方面への出発時も京成側の開閉方式で制御される形となりました[4] … Continue reading。とはいえ、ホームドア開閉を全自動で行ってくれる点は浅草線方式も京成方式も同じなので、都営乗務員の普段の取り扱いは特に変わらないようです。
2.2 各種センサの配置

各種センサの配置は上図の通りです。
前述の通り、2・3番線は8両・6両・4両と3種類の編成両数に対応しているため、両数の判別を行う在線検知用センサの数が1・4番線より多くなっています。ホーム外に設置されている在線検知用センサは、例えば8両編成が誤って6両停止位置に停止した場合などに自動開扉してしまうのを防ぐ役目を持ちます。
京成のホームドア既設駅は「スカイライナー」などに使用されるAE形も発着するため、AE形用と一般車用で停止位置検知用センサが複数個所に設けられていました[5]AE形と一般型車両で車体長が異なることを活用し、連結部の位置の違いで車種判別を行うため。。一方、同駅はAE形が発着しないため、停止位置検知用センサは1ホームにつき1か所のみとなっています。
2.3 表示灯は浅草線仕様も併設

縦長の表示器(下):都営仕様の表示器
各編成両数の前部・後部には京成仕様の乗務員向け表示灯が設けられています。それに加えて、8両編成の前部・後部に限り浅草線内と同じく都営乗務員向け表示灯も併設されていました。
3 おわりに
冒頭でも述べた通り、同駅を以て浅草線はホームドア全駅整備を達成しました。また、これにより都営地下鉄全4路線のホームドア整備率も他社の管轄駅も含めて100%となりました。
京成は2024年度の設備投資計画で京成高砂駅・青砥駅・鬼越駅のホームドア設置を推進するとしています。具体的な設置時期は今のところ不明ですが、今後の設置駅では押上駅のタイプが標準となるのでしょうか。
出典・参考文献
- 押上駅のホームドアを2023年10月より順次使用開始します|京成電鉄
- 押上駅のホームドアを2023年10月より順次使用開始します | 東京都交通局
- 押上駅の全番線ホームドア設置完了しました | 京成電鉄
- 総合エンジニアリング力を発揮した可動式ホーム柵整備事業の取組み | 三菱重工技報 Vol.59-No.2(2022)プラント·インフラ特集 | 三菱重工