JR東日本のホームドア:スリットフレームホームドアの基本仕様

タイプ | 腰高式 | |
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メーカー | JR東日本メカトロニクス・三菱電機 | |
開閉方式 | 路線によって異なる | |
停止位置許容範囲 | ±350mm(TASCあり) | |
開口部幅(基本) | 2,000mm | |
非常脱出ドア | 開き戸式(各号車連結部) | |
支障物検知センサ | 3Dセンサ |
JR東日本は、2031年度末ごろまでに東京圏の主要路線330駅758ホームにホームドアを整備することを目指しています。今後のさらなる整備促進を目的として開発されたのが、従来型ホームドアをベースに風が通り抜ける構造とすることで風圧影響を軽減した「スリットフレームホームドア」です。
これまでは主に従来型ホームドアと「スマートホームドア」の2種類を併用して整備が進められてきましたが、この「スリットフレームホームドア」は従来型ホームドアの後継機として位置づけられ、2024年度の南武線分倍河原駅を皮切りに導入が開始されました。
目次
1 ホームドアの仕様
1.1 基本仕様

このホームドアはJR西日本・JR東日本メカトロニクス・三菱電機の3社によって共同開発されました。従来型ホームドアと同等の安全性を維持しつつ、扉部分や戸袋部分にスリット状の開口部を設けることで、1開口あたりの重量は約30%削減。さらに、風が通り抜けやすいためホームおよびホームドア支持部に掛かる風荷重も約40%軽減し、ホーム補強工事の簡素化が期待できるとしています。
2019年度から導入されている「スマートホームドア」は従来型と全く異なる構造なのに対して、「スリットフレームホームドア」は従来型の構造・寸法をベースとしているのが大きな違いです。据付部分や制御システムにも従来型と互換性を持たせているため、工事設計・施工を効率化できるほか、従来型と組み合わせて使用することもできるそうです。


扉部分はほぼ全体が空洞で、5本のバーがおよそ150mm間隔で配置されています。筐体部分は上側に駆動装置や個別操作盤、下側に制御部などを従来型よりも省スペースに配置することで中央部を空洞とし、そこに設けられた3本の中空パイプに扉部分のバーが収納される構造です。
基本開口幅は従来型と変わらず2,000mmです。筐体の断面を台形状に切り欠くことで、ホームドアが全開状態になっても手や荷物を挟まないよう工夫されています。
各開口部の線路側には3D式支障物検知センサと非常開ボタンが1か所ずつ設けられています。非常開ボタンは従来型やスマートホームドアだと筐体から突出して開口部側を向いていたのに対して、本タイプでは筐体側面に埋め込まれる形となりました。

各号車連結部に開き戸式の非常脱出ドアが設けられてます。ただし、各ホームにつき1か所程度の車両連結部には駅係員用の操作盤などが組み込まれており、その部分のみ非常脱出ドアがありません。これらも従来型の仕様と共通です。

ホーム前部・後部の乗務員操作盤の仕様も従来型と大きくは変わっておらず、この部分の筐体には空洞も設けられていません。
1.2 先頭車の特殊ドアピッチ部

近年のJR東日本が製造する一般型電車は先頭車の前から1番目~2番目ドアの間隔が狭いため、当該部分のみ従来型と同じく扉を互い違いに収納するオフセット型となっています。当該部分の筐体は通常よりも厚みがやや大きいほか、空洞の面積がパイプ2本分に減少しています。
2 路線ごとの仕様の違い
2025年3月末時点で本タイプが設置されているのは南武線の分倍河原駅と登戸駅2番線の2駅3ホームのみですが、このうち登戸駅2番線は臨時列車として特急型車両E257系が発着することを考慮し、一部箇所の開口部が僅かに広いなどの違いが見られました。
各路線ごとの仕様については順次紹介していく予定です。
3 おわりに
冒頭でも述べた通り、当記事で紹介したスリットフレームホームドアは従来型ホームドアの後継として位置づけられており、スマートホームドアの代替ではありません。今後も駅・ホームごとの利用状況等を勘案してスリットフレームホームドアとスマートホームドアが併用されていくようです。
本タイプは従来型と組み合わせて使用することもできると紹介しましたが、2025年度のホームドア整備計画にも “部分的に壁式とする場合もあります” と記載されています[1]車両ドア位置の違いに対応するため二重引き戸式大開口タイプが必須となる横浜線東神奈川駅が有力候補。。果たしてどのような構造となるのでしょうか。
出典・参考文献
脚注
↑1 | 車両ドア位置の違いに対応するため二重引き戸式大開口タイプが必須となる横浜線東神奈川駅が有力候補。 |
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