JR東日本 京浜東北線・根岸線のホームドア:スマートホームドア 横浜線対応大開口タイプ

タイプ 腰高式
メーカー JR東日本メカトロニクス
開閉方式 トランスポンダ式連携
停止位置許容範囲 ±350mm(TASCあり)
開口部幅 一般部 2,000mm
8号車4番ドア 【推定】3,330mm
非常脱出ドア 開き戸式(各号車2-3番ドア間)
支障物検知センサ 3Dセンサ

JR京浜東北・根岸線のうち東神奈川駅~大船駅間は、同線の10両編成と横浜線から乗り入れる8両編成が発着するため、先頭車ドア位置の違いに対応できる多段式大開口ホームドアが導入されています。2021年度末までの設置駅では従来型ホームドアが採用されましたが、2025年4月5日に稼働開始された石川町駅では初となるスマートホームドアの多段式大開口タイプが採用されました。

本タイプは4月11日に根岸駅でも稼働を開始し、2025年度中に根岸線内の残るすべてのホームドア未設置駅で整備される予定です。

1 ホームドアの仕様

1.1 基本仕様

スマートホームドアは扉部分をフレームとバーで構成するなど、空洞を多く設けることで軽量化と風荷重の低減を図っています。当記事で紹介する8号車4番ドアとその前後を除いた箇所の基本仕様は、従来のタイプ(2023年度以降のタイプ)と特に変わっていません。

基本仕様については別記事をご覧ください。

1.2 8号車4番ドアの多段式大開口ホームドア

E233系中間車と先頭車のドア位置の違い
※イメージ図は従来型ホームドア
京浜東北線10両編成のドア位置
横浜線8両編成のドア位置

近年のJR東日本が製造する一般型車両は乗務員室の奥行きが広く、その分だけ乗務員室直近のドア位置が中間車と比べて1m以上ずれています。そのため、東神奈川駅~大船駅間のうち横浜駅・関内駅など計5駅10ホームでは、2018年度から2021年度にかけて、従来型ホームドアをベースに10両編成と8両編成でドア位置がずれる8号車4番ドアのみ幅3m超の大開口としたタイプが整備されました。

一方、2021年度までに従来型ホームドアが整備されなかった残りの駅では、2022年の時点でホーム基礎工事の様子からスマートホームドアが採用されることは確実でした。そして約3年後の2025年、ついに二重引き戸タイプのスマートホームドアが実用化に至り、石川町駅にて初お目見えとなりました。

スマートホームドア初の二重引き戸構造

本タイプは2023年度から導入されている下部バーを2本に増やすなど防護性を高めたタイプをベースとしており、バーやフレームの太さも標準タイプとほとんど変わっていないため、予想以上に従来の “スマートさ” を維持していると感じます。なお、構造は従来型の二重引き戸タイプと同様に、戸袋スペースが確保できない片側の扉のみを二重引き戸としています。

二重引き戸を収納する8号車3-4番ドア間の筐体
筐体・扉の断面形状

二重引き戸を収納する筐体についても、厚みは標準タイプと変わらないため、断面を見ただけだと二重引き戸タイプとは思えないほどスマートです。一方、標準タイプは「戸袋筐体(駆動装置などを収めた部分)」と「中間戸袋」に分かれていたのに対して、二重引き戸タイプの筐体は構造が分かれておらず、空洞もありません。

線路側から見た二重引き戸部分
上部の個別操作盤と反対側断面の突起が目立つ

個別操作盤は機器スペースの関係か筐体上部に突出する形で設けられているほか、二重引き戸と反対側の断面(扉上部バーの高さ)にも謎の突起があります。開状態(扉を収納した状態)だと上部バーの戸尻側が筐体内に収まりきらず、ここまで突き出す形になっているのでしょうか?

上り方面の8両編成停止位置
ワンマン運転に対応するため乗務員操作盤が設けられた
上り方面の10両編成停止位置
こちらも将来的なワンマン化に備えて乗務員操作盤あり

本タイプの構造とは直接関係ありませんが、横浜線は京浜東北・根岸線の直通区間も含めて2026年春にワンマン運転を開始予定、さらに京浜東北・根岸線も2030年ごろまでにワンマン化される見込みのため、8両・10両それぞれの前部側にも乗務員操作盤が設けられています。なお、後述するように同線のホームドアはトランスポンダを用いて車両ドアと連携する方式なので、通常使用することはありません。

2 ホームドアの開閉方式

京浜東北線・根岸線のホームドア開閉方式は、山手線と同じくトランスポンダ装置を用いた送受信により車両ドア側の開閉操作と連携するシステムが採用されています。列車が±350mmの停止許容範囲内に停止すると、1号車(大船方先頭車)に搭載された「ホームドア車上子」と線路側に設けられた「ホームドア地上子」がピッタリ重なって情報の送受信が可能になります。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

3 おわりに

二重引き戸式ホームドアは車両ドア位置の課題解消に役立つ一方、構造が複雑で重量も増えてしまう点がデメリットです。よって、スマートホームドアでも二重引き戸構造が可能になったことは、ホーム補強工事に要する費用・期間の低減に大きく貢献していることと思われます。

冒頭でも述べた通り、JR東日本の2025年度ホームドア整備計画によると、根岸線内の残るすべてのホームドア未設置駅で同年度中に本タイプを含むスマートホームドアが整備される予定です[1]ただし、京浜東北線東神奈川駅2・3番線(横浜線ホーム)には従来型ホームドアをベースとした「スリットフレームホームドア」が採用される。。同線と同じように車両ドア位置の課題を抱える他線区への導入も期待されます。

出典・参考文献

脚注

References
1 ただし、京浜東北線東神奈川駅2・3番線(横浜線ホーム)には従来型ホームドアをベースとした「スリットフレームホームドア」が採用される。

コメントする