JR東日本 南武線のホームドア:スマートホームドアの仕様(E257系対応仕様)

タイプ 腰高式
メーカー JR東日本メカトロニクス
開閉方式 無線式連携
停止位置許容範囲 ±350mm(TASCあり)
開口部幅 一般部 2,000mm
E257系対応ホーム
2・3号車4番ドア
【推定】2,400mm
非常脱出ドア 開き戸式(各号車2-3番ドア間)
支障物検知センサ 3Dセンサ

JR東日本の南武線では、2021年度よりホームドアの整備が順次始まり、2025年3月のワンマン運転開始までに全駅での整備が完了しています[1]南武支線を除く。。2023年1月31日稼働開始の立川駅1番線を皮切りとして、ほとんどの駅(全26駅59ホームのうち23駅50ホーム)で従来型よりも大幅に軽量・低コストな「スマートホームドア」が採用されています。

開口幅などの仕様は概ね基本どおりですが、一部のホームでは臨時列車として乗り入れる特急型車両E257系を考慮して開口幅がわずかに異なるなどの違いがあります。当記事では主にその特殊仕様について紹介します。

1 ホームドアの仕様

1.1 基本仕様

立川駅のスマートホームドア(1次タイプ)

基本開口幅は従来型ホームドアと同じく2,000mmで、当記事で紹介するE257系対応の特殊開口部を除けばその他の仕様も特に変わっていません。2022年度の設置駅までは下部バーが1本の1次タイプ、2023年6月30日に稼働開始された武蔵中原駅1・4番線からは下部バーを2本に増やすなど改良を施した2次タイプが採用されています。なお、2次タイプの採用はJR東日本全体でも武蔵中原駅が初めてでした。

同線のスマートホームドアは中央・総武線各駅停車と同じく、戸袋の上部バーに路線ごとのラインカラーが装飾されていないことが特徴です。これは、中央・総武線および南武線のラインカラーがどちらも黄色であり、視認性向上のため黄色に着色された扉上部バーと見分けが付けにくいためだと思われます。

その他の基本仕様については別記事をご覧ください。

1.2 E257系対応ホームの特殊開口部

スマートホームドア設置後の武蔵溝ノ口駅3番線で乗降扱いを行うE257系修学旅行列車
南武線内におけるE257系5両編成停止位置とE233系6両編成ドア位置の関係

同線では毎年、沿線小学校の修学旅行シーズンに特急型車両E257系5500番台5両編成を用いた修学旅行列車(通称:集約臨)が南武線内〜日光駅間で運行されています。一方、集約臨の発着拠点となっている主要駅の副本線ホーム(武蔵中原駅2・3番線・武蔵溝ノ口駅3番線・登戸駅2番線・稲城長沼駅2・3番線)においても2024年度よりホームドアが順次整備されましたが、他駅と同じくE257系のドア位置に対応した構造ではないことから、5両編成のうち2・3号車のドアのみをホームドアと合わせて停車することで、ホームドア設置後も引き続き乗降扱いを可能としました。

ただし、上記4駅の副本線ホームはホームドア側にもE257系に対応するための特殊仕様が存在します。なお、上記4駅のうち「スリットフレームホームドア」が採用された登戸駅2番線の仕様についいては今後別記事で紹介する予定です。

上:標準の開口幅
下:E257系乗降口の開口幅
E257系乗降口の筐体
手前側の扉は線路側に、奥側の扉はホーム側に収納

副本線ホームのE257系乗降口となる開口部(2・3号車4番ドア)をよく見てみると、開口幅が標準よりわずかに広くなっています。その差は点字ブロック1枚分程度しかありませんが、当該部分の筐体は戸袋スペースが足りなくなるため、左右の扉が互い違いに収納されているのも特徴です[2]2-3号車連結部および3号車3-4番ドア間の筐体が標準より短くなっている。。他の箇所は標準どおりの仕様であることから、間違いなくE257系に関係する仕様であることがうかがえます。

しかし、このE257系対応仕様ではない立川駅でも臨時特急列車としてE257系が発着した実績があり、同じく2・3号車のみを開扉して乗降扱いが行われました。つまり、開口幅を広げなくてもE257系の発着は物理的に可能であるにもかかわらず、なぜ集約臨発着駅では特殊開口部が必要だったのでしょうか。

ホームドア線路側に貼られた緑色のラインがE257系5両編成用の停止位置マーカー

理由として考えられるのは停止許容範囲の拡大です。同線の一般列車はTASC(定位置停止装置)によって±350mmの高い停止精度が確保されていますが、E257系は2026年6月時点において同線のTASCに対応しておらず、運転士の手動ブレーキングによって停止します[3]E257系もTASC設置工事が進行中ではあるものの、これは日常的に特急列車が走行する他線区のホームドア整備に向けた施策。[4]2026年6月時点ではE257系用のTASC地上子自体が設置されていないため使用不可能。。そのため、集約臨発着駅のE257系停止許容範囲は推定±750mmと停止精度に余裕が持たせられており、その分だけ開口幅を拡大したのだと推測されます。

2 ホームドアの開閉方式

2.1 開閉方式の概要

南武線のホームドア開閉方式は、トランスポンダ式や総武快速線新小岩駅などで運用中の無線連携式よりもさらなる低コスト化と汎用性の向上を図った、RFIDタグを用いて車両とホームドアのペアリングを行う新方式の無線連携式が初採用されています。この方式はJR東日本で今後整備されるホームドアの標準的な開閉方式になる見込みです。

詳しくは別記事をご覧ください。

2.2 E257系対応ホームの取り扱い

E257系用の停止位置検知センサ

E257系5500番台は全編成で無線連携システムの搭載が完了しており、一般列車と同じく車両側のドア開閉操作と連携してホームドアも開閉します。その際、車両側・ホームドア側ともに2・3号車以外の乗降口をドアカットするよう自動的に設定されるようです。

一方、E257系対応ホームに限り、車両連結部を測定して列車の定位置停止を検知する「停止位置検知センサ」がE257系の車両連結部となる位置に別途設けられています。また、車体の有無を検知する「在線検知センサ」も一般列車(6両編成)とE257系(5両編成)を判別するために標準より1か所多く設けられています。

武蔵中原駅の各種機器配置

例として、上図は武蔵中原駅における各種機器の配置を示しています。前述の通り、E257系用のセンサが設けられているのはE257系に対応している副本線ホーム(2・3番線)のみで、主本線ホーム(1・4番線)には設けられていません。駅構造との兼ね合いかホームによって配置が多少異なるものの、配置数は他駅でも同じです。

なお、車両側とドア開閉情報などの通信を行う地上無線機は、E257系対応ホームであってもホーム最前部および最後部の1か所ずつで変わっていません。特に川崎方は地上無線機とE257系停止位置が10m以上離れていますが、通信範囲の拡大によって対応しているものと思われます。

2.3 立川駅 臨時特急発着時の取り扱い

前述のとおり、E257系対応仕様ではない立川駅でも臨時特急列車としてE257系が発着することがあります。しかし、同駅におけるホームドア設置当時は車両側がまだ無線連携システムに対応していなかったため、駅係員がホームドア各開口部に設けられている「個別操作盤」を用いて2・3号車4番ドアのみを開閉しています。

この取り扱いはE257系が無線連携システムに対応した現在も変わっておらず、E257系用のセンサを設置する気配も2026年6月時点では見られません。今後改良される可能性もありますが、集約臨よりもさらに運行頻度の低い臨時特急のためにシステムを対応させるのはコストに見合わないのかもしれません。

臨時特急発着時の取り扱いについての詳細は別記事をご覧ください。

3 おわりに

以上のように、南武線のスマートホームドアは一見すると他路線と変わらないようで、一部ホームに施された小さな工夫が集約臨という伝統を継続させるための大きな意味を持っています。なお、このE257系対応仕様スマートホームドアは後に横浜線内の一部ホームでも採用されています。

また前述のとおり、南武線内の集約臨発着駅では登戸駅2番線のみスマートホームドアではなく従来型ホームドアをベースに軽量化を図った「スリットフレームホームドア」が採用されており、同じく一部の開口部が広くなっています。

出典・参考文献

脚注

References
1 南武支線を除く。
2 2-3号車連結部および3号車3-4番ドア間の筐体が標準より短くなっている。
3 E257系もTASC設置工事が進行中ではあるものの、これは日常的に特急列車が走行する他線区のホームドア整備に向けた施策。
4 2026年6月時点ではE257系用のTASC地上子自体が設置されていないため使用不可能。

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