阪急電鉄のホームドア:大開口化に対応した標準2次タイプの基本仕様(2025年度~)

タイプ 腰高式
メーカー 京三製作所
開閉方式 開扉 自動(車種判別・定位置停止検知・両数検知)
閉扉 車掌手動操作
停止位置許容範囲 ±900mm(TASCなし)
開口部幅(基本) 3,200mm
非常脱出ドア 開き戸式(各号車連結部)
支障物検知センサ 3Dセンサ

阪急電鉄では、2018年度より可動式ホーム柵(以下:ホームドア)の整備が順次進められています。このうち宝塚線石橋阪大前駅(2025年9月25日稼働開始)以降の整備駅からは、京三製作所が従来製品の特長を統合して新たに開発したリニューアル製品が標準的に採用されており、車両ドア位置の違いを考慮した大開口化も大きな仕様変更なく対応できるようになりました。

なお、当記事では便宜上、2020年度~2025年度整備駅で標準採用されたタイプを「標準1次タイプ」、2025年度以降整備駅の本タイプを「標準2次タイプ」と呼称しています。

1 新型ホームドア導入の経緯

京三製作所はこれまで、最も一般的な標準形、筐体や扉にガラスを多用した透過形、設置コストの低減を図った軽量形など、事業者のニーズに合わせたラインアップを展開してきました。これら従来製品の特長を統合するとともに、モノコック構造の戸袋による薄型軽量化や、さらなる大開口化にも対応するなど、機能性と生産性の両立を目的に開発されたのがこのリニューアル製品です。

阪急はこれまでも全てのホームドア設置駅で京三製作所の製品を採用してきましたが、Osaka Metro堺筋線との直通運転を行う千里線および京都線の淡路駅〜高槻市駅間にはメトロ所有の66系も乗り入れており、阪急車と車両ドアピッチが異なることから標準1次タイプの開口幅では対応できません。そのため当初は堺筋線内と同様の二重引き戸式大開口ホームドアの採用も検討されたそうですが、部品点数の増加による維持コストの増大や構造上非常脱出ドアが設けられないといった課題がありました。

そこで、標準1次タイプと同じ一重引き戸式のまま開口幅の拡大にも対応できる新型ホームドアをメーカーと協議した結果、本タイプの採用に至ったとのことです。なお、本格採用前の2025年4月より、神戸線武庫之荘駅1号線の大阪梅田方ホーム外(旅客が立ち入りできないエリア)に2開口分を設置し、開閉動作を繰り返しながら雨や列車風による影響を検証するフィールド試験が行われています。

2 ホームドアの仕様

2.1 基本仕様

Osaka Metro堺筋線との直通運転区間か否かにかかわらず、2025年度下期以降のホームドア整備駅ではすべて本タイプが採用されており、直通運転区間以外においてはすべての開口部が標準1次タイプと同等の3,200mmです。扉部分を黒色としたデザインも従来と変わっていません。

筐体・扉の断面形状
扉は互い違いに収納される
ホーム側から見た車両ドア間の筐体
ホーム側から見た車両連結部の筐体
線路側から見た車両ドア間の筐体
線路側から見た車両連結部の筐体

標準1次タイプは扉の上縁がV字状に尖っているのが特徴でしたが、本タイプは一般的な角状となりました。また、標準1次タイプは車両連結部のみ扉および筐体の下部厚みが大きくなっていましたが、本タイプはすべての扉・筐体がその形状となりました。

筐体は駆動装置などが収められた「制御ユニット」と固定パネルの「中央ユニット」で構成されており、中央ユニットの幅を変更することで車両ドア間筐体と車両連結部筐体における寸法の違いに対応しています。なお、中央ユニット部分はオプションとして透過ガラスにしたり、スライド式の非常脱出ドアを設けることも可能だそうですが、阪急では今のところ採用されていません。

スライド式非常脱出ドアは採用されなかった一方、標準1次タイプと同じく車両連結部筐体に開き戸式非常脱出ドアが設けられています。また、各開口部の線路側には3D式支障物検知センサと非常開ボタンが設けられています。

2.2 堺筋線直通運転区間の仕様

前述の通り、本タイプが採用された最大の理由は、Osaka Metro堺筋線との直通運転区間におけるメトロ所有車両とのドア位置の違いに対応するためです。直通運転区間における最初の整備駅は高槻市駅(2026年3月下旬稼働開始)で、各号車1・3番ドアの開口幅を標準より約500mm広い3,740mmとすることで両車のドア位置に対応しています。

詳しくは今後別記事にて紹介する予定です。

3 ホームドアの開閉方式

阪急の基本的なホームドア開閉方式は以下の通りです。

  • 開扉:自動(種別判別・定位置停止検知・両数検知)
  • 閉扉:車掌手動操作

阪急のホームドア開閉方式は、地上側の各種センサにより列車の定位置停止と編成両数を検知して自動開扉する一方、閉扉は車掌による手動操作で行われます。それに加えて、既存の設備との連動によって列車種別や車種に応じた制御を可能としています。

システムの概要は別記事で紹介しています。

定位置停止検知センサ
従来より大型で黒色の機種
両数判定センサ
※高槻市駅にて設置工事中に撮影
乗務員操作盤

従来との違いの一つとして、本タイプ整備駅からは定位置停止検知センサに使われている測域センサ(2D-LiDAR)の機種が変更されました。これは、京都線で運行されている7000系「京とれいん 雅洛」の存在が関係しています。

「京とれいん 雅洛」は神戸・宝塚線系統の7000系を2ドアに改造した車両で、京都線系統の車両より車体長がわずかに長いことから、停止位置のずれが大きいと車両ドアとホームドア筐体が重なってしまうため、一般列車より停止許容範囲を狭くする必要があります。しかし、本タイプ以前のホームドア設置駅[1]京都線では十三駅5号線および桂駅が該当。で採用されていた定位置停止検知センサは停止許容範囲を1つしか設定できなかったため、センサを雅洛用と一般列車用で2台設ける必要がありました。

そこで、本タイプ設置駅からは設定値の切り替えに対応したセンサを採用することにより、1台のセンサのみで2種類の停止許容範囲に対応できるようになりました。なお、雅洛と一般列車の判別は、車両ドア数の判別と同じくIDタグから車両番号を読み取るシステムが用いられています。

4 おわりに

阪急は2040年度末頃までに全駅でホームドアまたは固定柵を設置する計画を発表しています。今後さらなる整備ペース促進が求められる中で、軽量かつ大開口に対応、そして製造のリードタイムを短縮した本タイプはそれに大きく貢献するでしょう。

また、阪急以外の鉄道事業者においても、今後新設される京三製作所製ホームドアはこのリニューアル製品が標準になっていくと思われます。実際、2025年度中には京急電鉄六郷土手駅・京王電鉄京王多摩川駅でも阪急と類似した製品が整備されました。

出典・参考文献

  • 井上 雄貴「相互直通運転に対応した大開口型新型可動式ホーム柵の導入について」『鉄道と電気技術』Vol.37-No.4、日本鉄道電気技術協会、2026年、p10-16
  • 齋藤 公佑、前田 勝也「可動式ホーム柵のリニューアル」『Kyosan circular』Vol.75-No.1、京三製作所、2024年、p13-17

脚注

References
1 京都線では十三駅5号線および桂駅が該当。

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