JR東日本 南武線のホームドア:スリットフレームホームドアの仕様(E257系対応仕様)

| タイプ | 腰高式 | |
|---|---|---|
| メーカー | JR東日本メカトロニクス・三菱電機 | |
| 開閉方式 | 無線式連携 | |
| 停止位置許容範囲 | ±350mm(TASCあり) | |
| 開口部幅 | 一般部 | 2,000mm |
|
E257系対応ホーム 2号車4番ドア |
【推定】2,200mm | |
| 非常脱出ドア | 開き戸式(各号車連結部) | |
| 支障物検知センサ | 3Dセンサ | |
JR東日本の南武線では、2021年度よりホームドアの整備が順次始まり、2025年3月のワンマン運転開始までに全駅での整備が完了しています。このうち2024年12月21日稼働開始の分倍河原駅では、従来型ホームドアをベースに軽量化を図った「スリットフレームホームドア」が初めて本格導入されました。
一方、同年度には登戸駅2番線でも本タイプが整備されましたが(2025年2月11日稼働開始)、臨時列車として乗り入れる特急型車両E257系を考慮して開口幅がわずかに異なるなどの違いがあります。当記事ではその特殊仕様について紹介します。
目次
1 ホームドアの仕様
1.1 基本仕様(分倍河原駅)

スリットフレームホームドアは、従来型ホームドアと同等の安全性を維持しつつ、扉部分や戸袋部分にスリット状の開口部を設けることで重量および風荷重の低減を図っています。また、本タイプより前に開発された「スマートホームドア」とは違い、従来型と構造や制御システムに互換性を持たせており、従来型と組み合わせて設置することも可能です。
分倍河原駅は他駅の従来型ホームドアやスマートホームドアと同じく、同線の一般列車に使用されるE233系6両編成の車両ドア位置に特化した標準的な仕様となっています。基本仕様については別記事をご覧ください。
1.2 E257系対応ホームの特殊開口部(登戸駅2番線)

沿線小学校の修学旅行シーズンに特急型車両E257系5500番台5両編成を用いて運行される修学旅行列車(通称:集約臨)は、5両編成のうち2・3号車のドアのみをホームドアと合わせて停車することで、ホームドア設置後も引き続き乗降扱いを可能としました。
集約臨の発着拠点となっている主要駅の副本線ホーム(武蔵中原駅2・3番線・武蔵溝ノ口駅3番線・登戸駅2番線・稲城長沼駅2・3番線)のうち、登戸駅2番線を除く3駅ではスマートホームドアが採用されており、E257系の乗降口となる2・3号車4番ドアに限り開口幅が標準より広いという特徴があります。これは、E257系が南武線のTASC(定位置停止装置)に対応していないことから、停止精度に余裕を持たせるためだと推測しています。
スマートタイプのE257系対応仕様については別記事にまとめています。

下:E257系2号車乗降口の開口幅

一方、集約臨発着駅の中で唯一スリットタイプが採用された登戸駅2番線もE257系対応の特殊仕様が存在します。しかしながら、スマートタイプの2・3号車4番ドアは400mm程度広いのに対して、スリットタイプは2号車4番ドアが200mm程度しか広くなっておらず、3号車4番ドアに至っては標準の開口幅と変わっていないのです。
そのため、ホームドア線路側に貼られたE257系停止許容範囲はスマートタイプが推定±750mmだったのに対して、スリットタイプは推定±500mmと狭くなっています。なぜスリットタイプは開口幅の拡大量が小さくなってしまったのでしょうか。
理由として考えられるのはスリットフレームホームドアそのものの構造的制約です。スマートタイプは2-3号車連結部および3号車3-4番ドア間の筐体を、標準より線路方向サイズが短く、左右の扉を互い違いに収めるオフセット型とすることで開口幅を拡大しています。それに対して、スリットタイプは今のところオフセット型の筐体構造に原則として対応していないことから[1]E233系先頭車の特殊ドアピッチ部に限りオフセット型となっているものの、筐体厚みや空洞サイズが標準と異なる。、開口幅の拡大が困難だったのではないかと推測されます[2]大開口が必要な線区では当該箇所に限り従来型ホームドアを組み合わせて設置している。。
ただし前述のとおり、登戸駅2番線では2号車4番ドアに限り200mm程度だけ開口幅が拡大されています。これを可能としたのは、2-3号車連結部に標準の車両連結部筐体ではなく車両ドア間筐体と同一寸法と思われる筐体(=線路方向サイズが約200mm短い)を設置しているためです。一方、3号車4番ドアがそのままの開口幅となったのは、E257系ドア位置を考慮すると3号車3-4番ドア間筐体を縮小しなければならないものの、現行の構造ではそれが困難だったためと推測されます。
2 ホームドアの開閉方式
南武線のホームドア開閉方式は、トランスポンダ式や総武快速線新小岩駅などで運用中の無線連携式よりもさらなる低コスト化と汎用性の向上を図った、RFIDタグを用いて車両とホームドアのペアリングを行う新方式の無線連携式が初採用されています。この方式はJR東日本で今後整備されるホームドアの標準的な開閉方式になる見込みです。
詳しくは別記事をご覧ください。
スマートタイプのE257系対応ホームと同じく、登戸駅2番線においてもE257系は一般列車と同じく車両ドアとホームドアの開閉連携に対応しており、そのため「停止位置検知センサ」および「在線検知センサ」が標準ホームよりそれぞれ1か所多く設けられています。
詳しくはこちらをご覧ください。
3 おわりに
以上のように、登戸駅2番線のスリットフレームホームドアは、筐体構造を変えないまま可能な限りスマートタイプのE257系対応仕様に近づけようとした形跡が見られます。冒頭でも述べた通り、分倍河原駅で初めて実用化された後わずか2か月弱で登戸駅2番線のE257系対応仕様が登場していることから、実用化から間もなく仕様変更が困難だったのか、それとも何か別の理由があるのか、そもそも無理にスリットタイプを採用せずスマートタイプにすればよかったのではないか等、多くの疑問点が残ります。
なお、2026年度中には中央・総武線各駅停車の一部駅で従来より開口幅が広いスリットフレームホームドアが実用化される見込みとなっています[3]東京メトロ東西線との直通運転区間ではメトロ車両の特殊なドア配置にも対応した開口幅が必要。。どのような仕様となるのかはまだ分かりませんが、スリットタイプの開発スケジュールが違えば、または登戸駅2番線のホームドア整備時期が違えば、E257系対応仕様も違う形となっていたかもしれません。
出典・参考文献
- スリットフレームホームドアの導入開始について:JR東日本
- 宮田 康治「スリットフレームホームの開発」『JREA』Vol.68-No.6、日本鉄道技術協会、2025年、p48862-48865

