グリーンムーバーだけじゃない… 広島電鉄 超低床電車の長期離脱車たち

広島電鉄では、1999年にデビューしたドイツ製の5000形「グリーンムーバー」を皮切りに、ホームとの段差がほとんどない超低床電車の導入が開始されました。2004年以降は純国産の5100形「グリーンムーバーマックス」、1000形「グリーンムーバーレックス」、そして最新の5200形「グリーンムーバーエイペックス」と進化を続けながら、毎年1〜2編成程度のペースで増備されています。

一方、超低床電車は構造の複雑さから保守性や交換部品の調達に難があると言われています。特に海外製の5000形はその問題が深刻で、ほとんどの編成が休車または廃車となっているのは鉄道ファンの間で有名ですが、近年は5100形以降の純国産車両にも長期離脱状態となっている車両が存在します。

なお、当記事の内容は2026年5月末時点のものです。

1 5000形の現状をおさらい

2026年5月 荒手車庫にて
荒手車庫の奥地を埋め尽くす5000形離脱車一同
手前から5004号・5001号・5009号

まずは5000形についてですが、現状を詳しく紹介した記事や動画は多数存在するため、当記事では簡単なおさらい程度にまとめます。

5000形「グリーンムーバー」はドイツ・シーメンス社で製造された5車体3台車の30m級連接車で、1999年〜2002年にかけて計12編成が導入されました。しかし冒頭でも述べたとおり、海外製ゆえに交換部品の調達が難しいといった問題から、2009年ごろには2001年製造の5007号が部品取りとして運用を離脱。その後もトップナンバーの5001号など数編成が長期離脱状態となっていましたが、2020年代に入った頃から離脱車の数が一気に増加し、荒手車庫の奥地を大量の5000形が埋め尽くす状態となりました。

2026年5月末時点で営業運転に使用されているのは5008号と5011号のわずか2編成のみとなっています。一方、多くの部品が抜き取られ無残な姿を晒していた5007号は、2025年3月に5000形初の正式な廃車となり荒手車庫から搬出。さらに、2026年4月15日〜17日にかけては5005号・5003号・5002号が立て続けに搬出されました。いよいよ長期離脱車の淘汰が始まった以上、他の編成も復帰する可能性は限りなく低いと推察されます。

2 5100形5103号

2023年4月 千田車庫にて
離脱から数か月経過した頃の5103号
この頃はまだ連日パンタグラフが上げられていた
2026年5月 荒手車庫にて
色褪せた車体が休車期間の長さを物語る

5100形「グリーンムーバーマックス」は、国産初となる完全超低床電車として、近畿車輛・三菱重工業・東洋電機製造の3社が共同開発した5車体3台車の30m級連接車です。ほとんどの部品を国産化することで5000形の課題だったメンテナンス性・信頼性の向上を図り、2005年〜2008年にかけて計10編成が導入されました。

このうち2005年製造の5103号は2022年秋ごろを最後に営業運転から離脱しており、以降長らくのあいだ千田車庫の片隅に留置されていました。外観の限りだと重要部品が抜き取られた様子は見えませんが、最近はパンタグラフを上げることもなくなり電源投入・自走すらできないのかもしれません。ただし、2024年9月にサービスが始まった新乗車券システム「モビリーデイズ」のカードリーダーは搭載しているようで、2023年初めごろから順次始まった連接車ワンマン対応改造も施工されています。

同車に大きな動きがあったのは今年3月。循環線開業に伴うダイヤ改正を1週間後に控えた3月21日の深夜、同車は他車両による牽引で荒手車庫へ回送され、前述の5000形長期離脱車たちと同じエリアへ押し込まれました。このまま5007号と同じ場所で同じ結末を辿ってしまうのか、動向が注目されます。

3 1000形1008号

2026年5月 千田車庫にて
他車両の陰に隠れて佇む1008号
2022年2月 寺町電停にて
前回の長期離脱から復帰していた頃の1008号
おでこの塗装の剥げが激しい

1000形「グリーンムーバーレックス」は、30m級連接車が入れない路線のバリアフリー化を目的に、5100形の基本構造をベースとしながら3車体2台車・全長約18mに短縮した車両です。2013年〜2020年にかけて計18両が製造され、現時点における広電の最大勢力となっています。

このうち2015年製造の1008号は2022年夏ごろを最後に営業運転から離脱しており、以降4年近く千田車庫の一角に留置されています。重要部品が抜き取られた様子は見えない5103号と異なり、現在は敷地外から見える面だけでも前面LED表示器・ワイパー・片方のライトケースが抜き取られた無残な姿を晒しており、部品取り扱いになっているものと思われます。その一方で、5103号と同じく「モビリーデイズ」のカードリーダーは搭載しているようです。

なお、同車は2020年〜2021年ごろにも約1年間ほど休車となっており、その後一時期運用に復帰した際も、前面上部のグリーンの帯が剥げ、車内にも補修跡が目立つなど異様な姿で走行していました。以前から何らかの訳あり車両だったこと、そして現在の状態からすると、このまま復活しない可能性も十分あり得ます。

4 おわりに

広電のなかではまだまだ新車も同然な5100形・1000形でさえ、登場からそれぞれ21年・13年が経過しており、製造終了により調達困難な部品があってもおかしくありません。現在増備中の5200形も5100形以来の基本構造をベースにしているので代替部品は用意できそうにも思えますが、それでも5103号・1008号のような長期離脱車が発生している現状は、超低床電車の特殊性を感じさせられます。

とはいえ、バリアフリーの観点からすれば1両でも多くの低床車が稼働していることが望ましいのは当然です。もし5103号・1008号がこのまま “第二、第三の5007号” になってしまったとしても、5000形のようにこれ以上多くの長期離脱車が発生しないこと、そして5200形は同じ道を辿らないことを願います。

出典・参考文献

脚注

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