令和の貫通型車両:JR西日本227系0番台・500番台

近年登場した貫通型車両を中心に、貫通路の構造や乗務員室内の機器配置などを紹介する「令和の貫通型車両」シリーズ。第1回となる今回はいきなり令和以前に登場した車両となってしまいますが、2015年にデビューしたJR西日本227系のうち広島エリア向けの0番台と岡山エリア向けの500番台を紹介します。
目次
1 車両の概要

車外から見た先頭車間連結部

車外から見た先頭車間連結部
JR西日本227系電車は、各地方都市における老朽化した国鉄型車両の置き換えを目的に開発された一般型車両です。基本構造は2010年から近畿エリアの新快速などに投入された225系、前面デザインは2013年から北陸エリアに投入された521系3次車をベースとした貫通型構造で、先頭車同士の車両連結部に取り付けられた先頭車間転落防止幌も521系3次車から継承されました。これらの構造は以降製造された同社の一般型車両においても標準仕様となっています。
0番台は広島エリア31年ぶりの新車として2015年にデビューし、広島らしい赤色をベースとしたデザインと先頭車間転落防止幌が羽を広げているように見えることから「Red Wing」の愛称が付けられています。500番台は岡山エリア向けとして2023年にデビューし、公募により「Urara」の愛称が付けられています。また、2019年には和歌山・奈良エリア向けに1000番台が投入され、2026年夏以降には山口エリアでも「Kizashi」の愛称を付けた同形式の投入が予定されています。
2 貫通路の構造
2.1 乗務員室背面

※写真は0番台
乗務員室背面の仕切り扉は引き戸式です。ほぼ中央に配置されており、助士席側に開きます。227系0番台・500番台は車内収受方式のワンマン運転を行わないことから[1]一部線区でいわゆる都市型ワンマン方式のみ行う。、運賃箱や運賃表示器などは搭載されていません。次に紹介する乗務員室内も含めて、この構造は2006年にデビューした521系1次車以降、JR西日本の一般型車両における標準構造となっています。
2.2 乗務員室全体

※写真は0番台

※写真は500番台
0番台と500番台で一部に仕様や搭載機器の違いがあるものの、基本構造は変わっていません。貫通路はくの字状に助士席側へと曲がっており、ゆとりある運転台機器配置との両立を図っています。
運転席側スペースは前面側に固定していた仕切り扉を回転する形で閉鎖されます。521系などはこの部分に運賃箱も回転する形で収納するため、仕切り扉の下半分には運賃箱の形状に合った切り欠きが設けられていましたが、運賃箱を搭載しない227系0番台・500番台は下半分の面積が拡大されています。しかし、上半分と同じ幅まで拡げると回転時に助士席側の機器と干渉してしまうため、不足する部分は運転席側に収納された小扉(銀色の部分)を展開することで補います。また後述の通り、貫通扉部分は床面がスロープ状に高くなっているため、前面側に固定する際に干渉しないよう、下部に僅かな切り欠きがあるのも分かります。
一方、助士席側スペースには仕切りが設けられていないため、助士席前面側の各種機器や乗務員扉横のドアスイッチ・マイク等はいたずら防止のカバーで封鎖されています。なお、0番台の運行開始当初はこのスペースも旅客に開放されていましたが、一部の旅客による迷惑行為が多発したことから(詳しくは後述)、2023年ごろから立入禁止扱いとなりました。立入禁止ロープ取り付け用の金具は後付けされた0番台と当初から設置済みの500番台で位置が異なります[2]500番台の前面側の金具は回転収納式になっている。。
先頭時は前述の仕切り扉を固定していた場所に、連結時は前面貫通扉を運転席側に開いた状態で固定します。前面貫通扉のワイパーは旅客が触れてケガをしないように上部のカバー内に収納されています。貫通扉部分は床面高さが若干高いためスロープ状になっており、段差がある部分は赤色の警告テープが貼付されています。
運転台パネル上部の仕切り窓は通常この位置で固定されたままですが、運転席側のロックを外せば貫通扉と同じ方向に回転できる構造になっており、開状態で固定するための磁石が仕切り窓の下部と貫通扉開口部の梁部分に設置されています[3]運転台部分の検査・整備をしやすくするためだと思われる。。

前述の通り、当初は助士席側スペースが旅客にも開放され、乗務員室内を比較的自由に観察することができていました。しかし、長時間の占領・前面貫通扉のロックを外して閉める・助士席側背面窓や乗務員扉のカーテンを閉める等、一部の旅客による迷惑行為が多発していました。そのため2023年ごろから助士席側スペースは立入禁止扱いとなったのに加え、各所にいたずら防止の注意書きも順次追加されました。
また、現在は始発駅等で流れる車内自動放送でも「車両の連結部では立ち止まらずにお通りください」「運転台横のスペースは立入禁止です」と喚起されます。つまり、これらの貫通路構造を観察すること自体がマナー上よろしくない行為となってしまいました。
2.3 運転台

※写真は0番台

※写真は500番台
運転台の基本レイアウトも521系や225系などをベースとしていますが、227系では同社の在来線車両として初めてグラスコックピットを本格採用。正面の2画面に計器類・ブレーキ段数・ATS関連などの表示を集約し、右側にある他形式と同様のモニタ画面も含めてほとんどの情報をグラフィック化したことで、他形式よりもさらにシンプルかつ洗練された見た目となりました。
運転台パネル右側上部には仕切り窓が設けられているため、右方向の視界は窓越しになるものの、本形式が置き換えた国鉄型車両と比べれば遮蔽物が少なく見やすそうです。左側上部に設けられたワイパーのスイッチや、左側ワンマン用ドアスイッチとの干渉を避けるためか傾けて配置された列車無線機などに、操作性と視認性を両立しながらスペースを最大限活用した工夫が感じられます。
なお、0番台と以降の各番台では、正面のパネルがメンテナンス性向上のためか一体型から機器ごとの分割型に変更された点、「EB-N装置(運転士異常時列車停止装置)」の導入によりマスコンハンドル・ブレーキハンドルの形状が変更された点[4]ハンドルのスイッチから手を離すとブザーが鳴動し、5秒経過すると非常ブレーキが掛かる。などが異なります。また、500番台には車体側面カメラおよびその映像を表示する運転台上部モニタが設置されており[5]初期車は準備工事状態で出場し、後に本設工事が行われた。、0番台でも順次設置が進んでいます[6]2026年2月時点では0番台・500番台ともに未使用。。
3 おわりに
以上のように、本形式は521系以来の基本的な乗務員室・貫通路構造を継承しながら、グラスコックピットの採用により運転台をより広々と感じさせる新たな基本スタイルを確立しました。その反面、乗客のマナー違反により助士席側スペースのあり方を再考せざるを得ない状況となってしまった以上、将来の新型車両では構造が見直される可能性も考えられます。
今年3月のダイヤ改正からは500番台が伯備線・山陰本線にも進出するにあたって専用の編成区分(H編成)が製造され、夏には山口エリア向け「kizashi」のデビューも控えています。これらの車両には何かしらの変化があるのか、そしてさらなる他線区への投入はあるのでしょうか。
出典・参考文献
- 車両側面カメラを用いたワンマン方式の検証について:JR西日本
- 城戸 宏之、藤家 宏和、泉川 周哉「JR西日本227系近郊形直流電車」『車両技術』250号、日本鉄道車輌工業会、2015年、p41~59
- 「227系近郊型直流電車」『鉄道ファン』2015年3月号、交友社、p61~64







