JR西日本のホームドア:昇降式ホーム柵 三ノ宮駅の仕様

タイプ 昇降ロープ式(支柱伸縮型)
メーカー JR西日本テクシア・日本信号
開閉方式 開扉(上昇) 自動(車種判別・定位置停止検知・両数検知)
※車種判別システムは1・4番線のみ
閉扉(下降) 車掌手動操作
停止位置許容範囲 ±1000mm(TASCなし)
開口部幅 1・4番のりば最大開口 約12.7m
2・3番のりば最大開口 約8.5m
ロープ素材 カーボンストランドロッド
安全装置 近接検知
支柱引き込み防止
光電センサ
ロープ挟み込み防止 圧力検知センサ
居残り検知 3Dセンサ・光電センサ

JR西日本の三ノ宮駅では、2019年度から2023年度にかけて、ドア位置が異なる車種に対応可能な「昇降式ホーム柵」がすべてのホームに設置されました。各ホームの稼働開始日は以下の通りです。

  • 3番のりば(姫路方面の普通・快速ホーム):2019年10月20日
  • 2番のりば(大阪方面の普通・快速ホーム):2019年11月22日
  • 4番のりば(姫路方面の新快速・特急ホーム):2022年12月20日
  • 1番のりば(大阪方面の新快速・特急ホーム):2023年5月27日

JR西日本管内において、1駅のすべてのホームに昇降式ホーム柵が整備されたのは同駅が初めてです。また、同駅は上り方面の寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」停車駅であり、同列車が発着するホームとしてはJR西日本以外の区間も含めて初のホームドアとなりました。

1 ホームドアの仕様

手前から2番のりば・3番のりば・4番のりば
※3番のりば設置工事中・稼働開始前の2019年9月撮影

これまでの設置駅と同じく5本のロープが支柱とともに上下する支柱伸縮型です。次項で紹介するように、2・3番のりばと1・4番のりばで配置パターンは大きく異なりますが、基本構造は特に変わっていないようです。

2 車両ドアとの位置関係

2.1 2・3番のりば(普通・快速ホーム)

2・3番のりばのホーム柵配置パターン

2・3番のりばに通常発着する車両は、普通列車に使用される4ドア車(207系・321系)と快速列車用の3ドア車(223系・225系など)の2種類で、どちらも1両あたりの長さは20mで統一されています。そのためホーム柵筐体の配置パターンは12両分すべてが規則的となっており、開口幅は広い方が約8.5m、狭い方が約3.9mです。

2.2 1・4番のりば(新快速・特急ホーム)

一方で、1・4番のりばには20m3ドア車の新快速のほかにも様々な特急列車が発着し、ドア位置はかなりバラバラとなります。そのため2・3番のりばとは違って筐体配置の規則性が少なく、最大約12.7m広い開口幅ですべての車種に対応しています。

1番のりば(大阪・京都方面)

前述の通り、上り方面は寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」も発着するため、それに対応した筐体配置となっています。ただし、サンライズは285系7両を2本繋げた14両編成なのに対して、ホーム柵は12両分のみしか設置されていないため、13・14号車はホームからはみ出して停車するようになりました。この部分の取り扱いについては次項で紹介します。

4番のりば(神戸・姫路方面)

下り方面のサンライズ瀬戸・出雲は同駅を通過しますが、多客期に運転される臨時列車の「サンライズ出雲91号」は同駅に停車するため、4番のりばは7両編成単独の285系に限り対応した配置となっています。

3 サンライズ瀬戸・出雲はみ出し停車部分の取り扱い

かつては長大編成のブルートレインなども発着していた同駅は、一般列車が使用する12両分の屋根付きホームに加えて大阪方に約3両分屋根のないホームが伸びています。しかしホーム柵の設置範囲は12両分だけにとどまったため、現在この部分を唯一使用する上りサンライズの13・14号車はどう対応するのかが注目されていました。

そして採用された実際の取り扱いは「乗車客は立ち入り禁止」「しかしドアカットは行わず降車することは可能」という予想外な方法でした。

「サンライズ瀬戸・出雲」停車中の1番のりば大阪方先端の様子
はみ出している13号車も車側灯が点灯している(=ドアが開いている)のが分かる
仕切り扉とサンライズ瀬戸乗車客向けの案内

現在の1番のりば大阪方先端には、そこから先への立ち入りを禁止する仕切り扉が設置され、サンライズ13・14号車の乗車客は12号車から乗車するようにという案内が取り付けられています。しかし、車両側は13・14号車もドアカット等を行っていないため、立ち入りできないはずのホームに降り立つことは可能です。

仕切り扉外側の降車客向け案内

では13・14号車から降車した場合どうすればいいかと言うと、先ほどの仕切り扉は外側からのみ開錠できるタイプのドアノブが付いており、これを手で開けて柵の内側に入ることができます。近接する12号車には車掌室があるため車掌がこの部分を目視確認しやすいことや、サンライズ発着時には複数人の駅員が立ち会っていることから、安全性の懸念は少ないと思われます。

そもそも上りサンライズを三ノ宮駅で降車する需要自体がほぼ無いので、ドアカット等の特殊な取り扱いは不要で、人間による対応だけで済ますこの方式が最も効率的なのかもしれません。

4 ホームドアの開閉方式

ホームドア開閉方式は以下の通りです。

  • 開扉(上昇):自動(車種判別・定位置停止検知・両数検知)※車種判別システムは1・4番線のみ
  • 閉扉(下降):車掌手動操作

開閉方式もこれまでの設置駅と同じく、地上側のセンサが列車の定位置停止・編成両数を検知することで自動開扉し、閉扉は車掌による手動操作で行われます。

詳細は別記事で紹介しています。

1番のりば大阪方の立ち入り禁止エリアに設置された在線検知センサ
手前が一般列車12両用で、先端にはサンライズ14両用も見える
1・4番のりばは車両に取り付けられているRFIDタグで車種を判別する
特急列車用のリモコン受光部
1番のりば後端部の285系用乗務員操作盤

近隣の神戸駅や明石駅と同じく、特急型車両は車掌が携帯するリモコンを用いて閉操作を行います。一方で、上りサンライズは後部側も少しだけホーム柵設置範囲からはみ出すように停車するため、一般列車用とは別に専用の開閉操作盤が設けられていました。

5 おわりに

1番のりばのホーム柵設置によって、三宮に乗り入れる5つの鉄道路線の全ホームでホームドア整備が完了しています(神戸市営地下鉄海岸線の三宮・花時計前駅を除く)。フルスクリーン式・大開口タイプ・昇降式など、事業者ごとにホームドアのタイプはそれぞれ異なっているため、三宮は全国屈指の「ホームドアの見本市」となりました。

出典・参考文献

脚柱

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