JR西日本のホームドア:昇降式ホーム柵 京都駅2・5番のりばの仕様
タイプ | 昇降ロープ式(支柱伸縮型) | |
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メーカー | JR西日本テクシア・日本信号 | |
開閉方式 | 開扉(上昇) | 自動(定位置停止検知・両数検知) |
閉扉(下降) | 車掌手動操作 | |
停止位置許容範囲 | ±1000mm(TASCなし) | |
開口部幅 | 最大約13.0m | |
ロープ素材 | カーボンストランドロッド | |
安全装置 |
近接検知 支柱引き込み防止 |
光電センサ |
ロープ挟み込み防止 | 圧力検知センサ | |
居残り検知 | 3Dセンサ・光電センサ |
JR西日本の京都駅では、2・5番のりばにドア位置の異なる車種にも対応可能な「昇降ロープ式ホーム柵」が設置されています。当初はどちらも2021年度の稼働開始予定でしたが、ホーム補強工事等に時間を要したため、5番のりばは2022年度に延期されました。各ホームの稼働開始日は以下の通りです。
- 2番のりば(米原・近江今津方面):2022年3月6日
- 5番のりば(大阪・三ノ宮方面):2022年10月19日
JR西日本管内で昇降式ホーム柵の設置駅はこれで7駅目ですが、京都府内の駅としては初めての設置、なおかつ定期列車で連結・切り離し作業が行われるホームにおける初めての設置例となりました。
目次
1 ホームドアの仕様
基本構造はこれまでの設置駅と特に変わっていないものと思われます。最大開口幅は2・5番のりばともに約13.0mです。
本タイプの基本仕様については以下の別記事をご覧ください。
一方、盛土式ホームにホーム柵を設置するうえで必要となる大規模な補強工事を低減するため、同駅の一部では「軽量プレキャストC型ホーム柵基礎工法」という新しい工法が採用されています。
従来の基礎構造は、大径の鋼管杭および梁となる鋼材で基礎を組み立てて、その上にコンクリート床板を載せる複合構造でした。この工法は、杭の施工が1日1本程度しか行えず大型の専用杭打機も必要、盛土を大きく掘削しなければならない、高い精度が求められる工程が多いなどの課題がありました。
これに対して「軽量プレキャストC型ホーム柵基礎工法」は、超高強度繊維補強コンクリートを用いたプレキャストボックスを予め工場で製造し、それを設置することで基礎と床板の代わりになります。軽量かつ耐久性が強い、コンパクトなため搬入しやすい、従来より短く小径な鋼管杭で済むため人力で施工できるなど、生産性・施工性が大幅に向上したそうです。
2 車両ドアとの位置関係
2・5番のりばに昇降式ホーム柵が採用された理由は、主にこのホームを使用する新快速・快速系統の3ドア車に加えて、同じ3ドアでもドア位置が多少異なる113系や、4ドア車(207系・321系)、2ドア車(117系)にも対応するためです。一方、通常このホームに発着しない特急型車両のドア位置には対応していないようです。
定期運用としては、平日1本のみ4ドア車が2番のりばに発着しています。また2023年に京都エリアから引退した113系も1日1本のみ当駅止列車として5番のりばに発着しており、昇降式ホーム柵と113系の組み合わせはここが初めてでした[1]国鉄型全般では117系「WEST EXPRESS 銀河」が停車する神戸駅が最初の事例。。
なお、113系と同じく2023年に引退した117系は、ダイヤ乱れの影響でホーム柵稼働後の2番のりばに入線した実績があるものの、定期発着する運用は設定されませんでした。
2番のりば(米原・近江今津方面)
5番のりば(大阪・神戸方面)
2・5番のりばにおける筐体配置と車両ドアの位置関係は上図の通りです。メインポストを車両連結部に配置し、その間でサブポストがロープを支えるシンプルな配置パターンといえます。
注目すべきは国鉄型車両の停止位置です。5番のりばを例にすると、同じ8両編成でも113系は標準の停止位置より1両分前に、117系は2両分後ろに停止します。なぜこのような停止位置設定になったのか、上図に示した車両ドア位置や列車検知システムの仕様をもとに次項で考察していきます。
3 ホームドアの開閉方式
3.1 開閉方式の概要
ホームドア開閉方式は以下の通りです。
- 開扉(上昇):自動(定位置停止検知・編成検知)
- 閉扉(下降):車掌手動操作
JR西日本在来線のホームドア・昇降式ホーム柵は、車両側との通信を必要とせず、地上側の各種センサが列車の定位置停止・編成両数などを検知して自動開扉するシステムが採用されています。一方、閉扉は車掌による手動操作で行います。
システムの詳細は別記事で紹介しています。
在線検知センサの配置は上図の通りです。
113系・117系の停止位置と在線検知センサの位置関係を見ると、かならずJR車両とは別のセンサで検知するように配置されているのが分かります(○印の色で対応している車種を表現)。これが国鉄車の停止位置設定が複雑化している要因の一つだと考えらえます。
3.2 国鉄車の停止位置はなぜ違う?
前述してきた通り、国鉄型車両の停止位置は標準よりもなぜか1~2両分ずれています。乗客にも乗務員にも分かりにくいことを敢えて行うのにはどんな理由があるのでしょうか[2]定期運用で国鉄型車両が発着するのは5番のりばの当駅止列車だけだったので、乗客への影響は少なかった。。
まず注目するのは車両ドア位置です。国鉄型車両とJR車両のドア位置は多少異なっており、両車をピッタリ同じ位置に止めると車両ドアとホーム柵筐体が重なってしまう箇所もあります。そのため国鉄型車両は停止位置を数十cm程度ずらし、メインポストとサブポストの間隔が狭い側に来るドアをJR車両と揃えています。
これは2番のりばに米原方から入線する場合の停目なので、在線検知センサが設けられている上り方先頭車の位置がバラける
それでも丸ごと1~2両分もずらす理由にはならないように思えますが、数十cm程度のずれは「在線検知センサ」に大きく影響してしまうでしょう。在線検知センサはジャスト位置から±1mを許容範囲と判定しますが、その検知アルゴリズムは常に固定されているので、車種によってジャスト位置自体が異なっていては正確な判定ができなくなります。
高槻駅や大阪駅などの特急停車駅では、車両に取り付けたRFIDタグから車種情報を読み取り、車種に応じた検知アルゴリズムを設定するシステムが導入されています。しかし2・5番のりばは特急が発着しないうえ、既に引退が近づいている国鉄型車両のためにRFIDシステムを導入するのは非効率です。
そこで、同じ編成両数でも車種ごとに停止位置を1両分以上ずらして、それぞれの位置に専用の在線検知センサを設けるという逆転の発想をしたのではないでしょうか。
4 連結・切り離し作業時の取り扱い
冒頭でも述べた通り、2・5番のりばは定期列車で連結・切り離し作業が行われるホームにおける初の昇降式ホーム柵設置例となりました。連結・切り離し作業時のホーム柵取り扱いについては別記事にまとめています。
5 おわりに
以上のように、2・5番のりばでは基礎構造の見直しによる施工性向上だけでなく、特殊な停止位置設定、分割・併結に対応した制御システムといった新しい要素が多く取り入れられました。今後の設置駅においても同駅での実績が活かされることでしょう。
出典・参考文献
- 新たに5駅10のりばにホーム柵を設置します:JR西日本
- 京都駅5番のりば、西明石駅5番6番のりばの昇降式ホーム柵の使用開始時期を延期します。:JR西日本
- 京都駅2番のりばの昇降式ホーム柵、新今宮駅4番のりばの可動式ホーム柵を使用開始します:JR西日本
- 京都駅5番のりばの昇降式ホーム柵を使用開始します:JR西日本
- 技術商品情報 土木部門 | 技術紹介 | 大鉄工業株式会社
- 軽量プレキャストC型ホーム基礎工法 | ベルテクス株式会社