【ホームドアの見本市】神戸・三宮で見ることができる5路線6タイプのホームドア

神戸・三宮エリアは多数の商業施設や飲食店が立ち並ぶ兵庫県最大の繁華街ですが、この場所に “揃っている” のはファッションやグルメだけではありません。三宮エリアに集まる鉄道路線の駅はさながら全国屈指の「ホームドアの見本市」となっているのです。

1 はじめに

神戸・三宮エリアにはJR・阪急・阪神・地下鉄西神・山手線・地下鉄海岸線・ポートライナーの計6路線が乗り入れており、駅の名称はJRが「三ノ宮駅」、阪急・阪神が「神戸三宮駅」などと異なっていますが、どの路線も多くの利用者数を誇る一大ターミナル駅です。

それだけに、ホームからの転落事故を防止する「ホームドア」の整備も関西圏の中ではかなり率先して行われ、国・自治体からの補助の元、2023年6月時点で地下鉄海岸線の三宮・花時計前駅を除く5路線の全駅・全ホームに整備済みです。しかし、採用されたホームドアのタイプは、設置時期や路線ごとのさまざまな理由によってフルスクリーン式ホームドアから昇降式ホーム柵まで多種多様となりました。

この記事では、そんな三宮エリアで見られる6タイプのホームドアを、設置された順で簡単に紹介します。

2 ホームドアの概要

①神戸新交通ポートライナー 三宮駅

設置年 1981年(開業当初から設置)
タイプ フルスクリーン式
開閉方式 トランスポンダ式連携
開口部幅 約2.0m

神戸新交通ポートアイランド線「ポートライナー」は1981年2月5日に開業した新交通システムの路線です。世界で初めて運転士を必要としない自動運転(無人運転)を実現した路線でもあり、安全対策としてすべての駅にホームドアが導入されました。日本初のホームドアは1974年に東海道新幹線熱海駅で設置されましたが[1]常設駅以外も含めると1970年大阪万博の期間中のみ運行されたモノレールが日本初。、天井までの全面を覆うフルスクリーン式ホームドアの導入はポートライナーが日本初でした。

メーカーは自動ドアの国内シェアNo.1を占めるナブコ(現:ナブテスコ)です。自動列車運転システムにより高い停止精度を確保できることから、車両ドア幅1,400mm+停止許容範囲±300mmを足した2,000mmがホームドアの開口幅となっています。開閉はトランスポンダによる情報伝送で車両ドアと同期します。

②神戸市営地下鉄西神・山手線 三宮駅

設置年 2018年
タイプ 腰高式
開閉方式 開扉 自動(定位置停止検知)
閉扉 自動(車両ドア開閉検知)
開口部幅 約2.8m

ポートライナー開業から実に37年後の2018年、三宮エリアで2番目のホームドアが神戸市営地下鉄西神・山手線の三宮駅に整備されました。神戸市営地下鉄としては初のホームドア導入で、タイプは既存駅への後付けが容易で現代の主流となっている腰高式、メーカーは日本信号です。

現在は、複数のセンサで列車の定位置停止やドア開閉を検知し、それに追従してホームドアを自動開閉するシステムによって運用されています。設置当初は車掌による手動操作でしたが、2020年3月にQRコードを用いたホームドア制御システムを導入したことで開閉の全自動化を実現、しかしわずか2年でより応答性に優れている現システムへ再度変更されたという経緯があります。

③JR西日本 三ノ宮駅

設置年 2・3番のりば 2019年
1・4番のりば 2022年~2023年
タイプ 昇降ロープ式(支柱伸縮型)
開閉方式 開扉 自動(定位置停止検知・両数検知)
閉扉 車掌手動操作
開口部幅 最大約12.7m

JR西日本の三ノ宮駅はドア位置が異なるさまざまな車種が発着することから、一般的なホームドアを設置することができません。そのため、普通・快速が発着する2・3番のりばは2019年、新快速や特急などが発着する1・4番のりばは2022年~2023年に「昇降ロープ式ホーム柵」が整備されました。5本のロープがホームと線路を遮断し、列車が到着すると筐体内に収められていた支柱とともにロープが上昇することでホームドアとしての機能を有しています。

最大開口幅は、一般型車両のみが発着する2・3番のりばが約8.5m、特急型車両も発着する1・4番のりばは約12.7mです。同駅は上り方面の寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」停車駅であり、同列車が発着するホームとしてはJR西日本以外の区間も含めて初のホームドアとなりました。

④阪急 神戸三宮駅

設置年 2020~2021年
タイプ 腰高式
開閉方式 開扉 自動(定位置停止検知・両数検知)
閉扉 車掌手動操作
開口部幅 約3.2m

続いては2020年度に阪急電鉄の神戸三宮駅でホームドアが整備されました。阪急のホームドア設置駅は十三駅(大阪府)に次いで2番目で、従来製品より質量を約40%削減した京三製作所の「軽量可動式ホーム柵」という製品が採用されています。

現在は廃止になりましたが、設置当時は平日朝ラッシュ時の上り特急列車が同駅で増結を行っていたため、全国的にも珍しいホームドア設置駅での連結作業を見ることができました。

⑤阪神 神戸三宮駅1・3番線

設置年 2021年
タイプ 腰高式(二重引き戸タイプ)
開閉方式 開扉 自動(定位置停止検知・両数検知)
閉扉 車掌手動操作
開口部幅 約3.6m

続いては2021年度に阪神電気鉄道の神戸三宮駅1・3番線で同社初となるホームドアが整備されました。メーカーは阪急と同じ京三製作所ですが、車種によってドア位置に若干の違いがあることから、開口幅約3.6mの二重引き戸式大開口タイプが採用されています。

しかし、同駅2番線にはドア位置が大きく異なる近鉄の車両も発着することから、この大開口ホームドアであっても対応することができません。そのため、翌2022年に昇降ロープ式ホーム柵が設置されることになります。

⑥阪神 神戸三宮駅2番線

設置年 2022年
タイプ 昇降ロープ式(支柱固定型)
開閉方式 開扉 自動(定位置停止検知・両数検知)
閉扉 車掌手動操作
開口部幅 最大約13m

1・3番線のホームドア整備から約1年後、同駅折り返し列車が使用する2番線にJR三ノ宮駅と同じく「昇降ロープ式ホーム柵」が整備されました。2番線には直通運転で乗り入れてくる近鉄の車両も発着し、阪神の車両とはドア位置が大きく異なることから、最大約13mの開口幅でどちらの車両にも対応しています。

JRのタイプはロープが5本で支柱とともに上下する構造なのに対して、阪神で採用されたのはロープが8本で支柱自体は伸縮しないタイプです。ホーム見通しが悪い点がデメリットとなる一方、ロープ本数の多さによる防護性の高さや筐体の線路方向サイズが小さい点がメリットと言えるでしょう。

3 おわりに

このように、三宮エリアには黎明期から2020年代までの日本におけるホームドアの歴史が結集しています。関西圏の鉄道は関東圏よりも独自の発達をした部分が多く、それがドア位置の違いなどの悪条件を生んだことでホームドアの多様性に繋がったかもしれません。

冒頭でも触れたとおり、三宮エリアでは2023年6月時点で地下鉄海岸線の三宮・花時計前駅を除いた全駅・全ホームにホームドアが完備されました。唯一の未整備駅となった三宮・花時計前駅は今のところ具体的な設置計画も明らかになっていませんが、少しでも早くホームドア100%完備が実現してほしいものです。

出典・参考文献

脚注

References
1 常設駅以外も含めると1970年大阪万博の期間中のみ運行されたモノレールが日本初。

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