阪急電鉄のホームドア:神戸三宮駅のタイプ

タイプ 腰高式
メーカー 京三製作所
開閉方式 開扉 阪急車 自動(定位置停止検知・両数検知)
山陽車 車掌手動操作
閉扉 車掌手動操作
停止位置許容範囲(阪急車) 【推定】±900mm(TASCなし)
開口部幅 3,200mm
非常脱出ドア なし
支障物検知センサ 3Dセンサ

阪急電鉄の神戸三宮駅では、2020年度に4つのホーム全てで可動式ホーム柵(以下:ホームドア)の整備が完了しています。阪急のホームドア設置駅は十三駅に次いで2番目、神戸本線系統としては初の設置で、全ホームでの整備完了も阪急では初となりした。

各ホームごとの筐体設置日・稼働開始日は以下の通りです。

  • 1番ホーム:2020年11月13日終電後設置・2020年12月26日初電より稼働
  • 2番ホーム:2020年8月28日終電後設置・2020年10月10日初電より稼働
  • 3番ホーム:2020年9月18日終電後設置・2020年11月7日初電より稼働 
  • 4番ホーム:2021年1月8日終電後設置・2021年2月20日初電より稼働

1 ホームドアの仕様

1.1 基本仕様

同駅のホームドアは十三駅と同じく京三製作所製ですが、従来品と同様のスペックを備えながら質量を約40%削減した新型の製品「軽量可動式ホーム柵」が採用されています。筐体厚みも十三駅と比較して100mm薄型化され、ホーム幅員の確保に貢献しています。同駅から上り方面は10両編成の列車が運行されるため2~4番ホームは10両編成に対応、下りの1番ホームは8両編成までの対応です。

開口幅は十三駅と同等の約3.2mで、車種によるドア位置の差異に対応するとともに、TASC(定位置停止装置)は未整備のため停止許容範囲に余裕を持たせています。戸袋スペースの関係か各号線1・3番ドアは扉の長さが左右非対称です。

線路側から見た車両ドア間の筐体
筐体上面の傾斜も特徴
駅係員用操作盤と乗務員用扉

十三駅のタイプには「戸袋スライド式非常脱出口」が備わっていましたが、同駅は車両連結部も含めて非常脱出口はありません。ただし、ホーム両端には乗務員出入り用の開き戸が設けられています。

各開口には3Dセンサと非常開ボタンが設けられており、線路側に配線ダクトなどが露出している点が特徴です。扉の上下縁が尖っているのは、開閉をガイドするV溝ローラのレールを兼ねているためだと思われます[1]特許情報「特開2020-011673 可動式ホーム柵」を参照。

筐体には神戸本線のラインカラーである青色の帯が施されています。同駅は神戸高速鉄道を通じて乗り入れる山陽電気鉄道の列車(以下:山陽電車)の始終着駅でもあるため、1番ホームには乗車位置ステッカーに山陽電車3・4両編成も案内されています。なお、降車専用の2番ホームに乗車位置ステッカーはありません。

1.2 山陽電車は停止許容範囲が異なる

山陽電車の運転士用停止位置マーカー
山陽6000系は定位置に止まっても開口部ギリギリ

山陽電車は車両のドアピッチが阪急車と異なり、停止位置が大きくずれると車両ドアとホームドアが合わなくなってしまうことから、停止許容範囲が阪急車より狭くなっています。特に6000系は車体長も阪急の車両規格と異なるために、推定±400mm程度と大幅に制限されています。

2 ホームドアの開閉方式

2.1 基本的な開閉方式

同駅のホームドア開閉方式は以下の通りです。

  • 開扉:自動(定位置停止検知・両数検知)
  • 閉扉:車掌手動操作

十三駅と同じく、地上側のセンサや既存設備との連動によってホームドアを自動開扉するシステムが採用されています。システムの詳細は別記事をご覧ください。

定位置停止検知センサ
車掌用操作盤およびCTVモニタ・車掌用表示灯
十三駅とは設置法則が違う両数判定センサ
4番ホーム大阪梅田方にも設置

基本的な部分で十三駅と違うのは、2基1組の「両数判定センサ」が1つの筐体にまとめて設置されるのではなく、隣り合った2つの筐体に分かれて設置された点です。また、4番ホーム大阪梅田方に設置されている同センサは、後述の連結作業にも関連していると思われます。

2.2 特殊な取り扱いを行う列車

山陽電車の乗り入れや連結作業などの特殊取り扱いがある同駅では、列車の運行系統によって開扉操作を手動で行う場合もあることが確認できました。

(1)山陽電車発着時の取り扱い

山陽電車の到着時にはホームドアが自動開扉していませんでした。両数判定センサも3両編成と4両編成を判別できる場所には設置されていないため、車掌が直接3両または4両の開扉ボタンを操作しています。つまり車掌が3両と4両を間違えて開けてしまうヒューマンエラーも懸念されますが、何らかのフェールセーフ的システムがあるのかは不明です。

(2)朝ラッシュ特急増結時の取り扱い

神戸本線の現行ダイヤでは、平日朝の新開地駅発上り特急列車のうち3本が、神戸三宮駅で梅田方に2両を増結して終点の大阪梅田駅まで10両編成で運行します。この運用は同駅4番ホームのホームドア稼働開始後も継続されているため、全国的にも珍しいホームドア設置駅での連結作業が行われる事例となりました。連結作業時の具体的な取り扱いなどは別記事にまとめています。

(3)4番ホームに10両編成が大阪梅田方から入線した場合

平日朝ラッシュ時に同駅始発で運行される10両編成の通勤特急は、大阪梅田方面から同駅まで回送列車として送り込まれて直接4番ホームに入線します。この場合はホームドアが自動開扉せず、車掌が直接ボタン操作で開扉していました。

(4)中線ホームに新開地方から入線した場合

中線の2・3番ホームは主に同駅折り返し列車が使用しており、列車が停止すると両側のホームドアが自動開扉します。一方、平日朝ラッシュ時の通勤急行など新開地方面からの上り列車が中線ホームに入線した場合、降車専用2番ホーム側のホームドアは自動開扉しません。これは継電連動装置の情報をもとに制御されているのだと思われます。

2.3 各種センサの配置

各ホームの定位置停止検知センサ・両数判定センサの設置場所は上図の通りでした。前述の通り、山陽電車の編成両数を判別できる両数判定センサは確認できませんでした。それでも定位置停止検知センサのある場所に後部を合わせているため、停止位置がかなり偏っています。

3 おわりに

基本的には十三駅と同じシステムながら、特殊な取り扱いが必要な列車にはシステムとして自動開扉に対応する場合・しない場合に分けられたことが同駅の特徴となりました。特に山陽電車の乗務員にとっては停止位置の制約・ホームドア手動開扉などで負担が大きいように感じます。

同駅に続いて、隣の春日野道駅でも2022年度末までにホームドアを整備すると発表されています。春日野道駅はホーム幅員が非常に狭いため、同じく薄型軽量のホームドアが採用されるのでしょうか。

出典・参考文献

脚注

References
1 特許情報「特開2020-011673 可動式ホーム柵」を参照。

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