阪神電気鉄道のホームドア:神戸三宮駅1・3番線のタイプ

タイプ 腰高式(一部二重引き戸タイプ)
メーカー 【推定】京三製作所
開閉方式 開扉 自動(定位置停止検知・両数検知)
閉扉 車掌手動操作
停止位置許容範囲 【推定】±700mm(TASCなし)
開口部幅 二重引き戸部 【推定】3,600mm
一重引き戸部 【推定】3,200mm
非常脱出ドア 開き戸式(各号車連結部間)
支障物検知センサ 3Dセンサ

阪神電気鉄道の神戸三宮駅では、同社初となる可動式ホーム柵(以下:ホームドア)が1番線ホーム(大阪梅田・大阪難波方面)と3番線ホーム(高速神戸・山陽姫路方面)に設置され、2021年2月11日に稼動が開始されました。なお、2番線には車両規格が異なる近鉄車も発着するため、2021年度末に昇降ロープ式ホーム柵が設置予定です。

1 ホームドアの仕様

1.1 基本仕様

阪神電鉄には相互乗り入れを行う山陽電気鉄道および近畿日本鉄道の車両も乗り入れていますが、阪神・山陽の車両と近鉄の車両ではドア位置が大きく異なるため、ホームドア整備を阻む要因となっています。 しかし、同駅1・3番線には近鉄車が原則入線しないため、阪神車・山陽車の規格に合わせた一般的な腰高式ホームドアが設置できました。

とはいえ、阪神車・山陽車の中でも車種によって車体長やドアピッチに若干の違いがあることから、推定幅3,600mmの二重引き戸式大開口タイプが採用されています。ただし、1番線の大阪梅田方2両分のみ二重引き戸タイプではありません(詳しくは後述)。外観の特徴からメーカーは京三製作所と推測されます。

互い違いの戸袋配置
センサ部に乗務員向けのランプがある
車両ドア間の筐体
車両連結部の筐体

車両ドア間の筐体は左右の扉が互い違いに収納される構造で、車両連結部の筐体間およびホーム両端には非常用兼乗務員出入り用の開き戸があります。各開口には3Dセンサと非常開ボタンが設けられており、各編成両数の前部・後部となる箇所にはホームドアの開閉状態や故障を示すランプも内蔵されています。

2012年頃に導入された床面のLEDが列車の接近や発車に合わせて点滅・点灯する「スレッドライン」はホームドア設置後も引き続き運用されています。

左:駅係員操作盤
中央奥:運転士向け停止位置マーカー
右:定位置停止検知センサ

1・3番線ともに、最も高速神戸寄りの筐体には駅係員用操作盤が内蔵されています。

列車の停止位置許容範囲は推定±700mmほどで、TASC(定位置停止装置)は導入されていませんが、阪神車と山陽車で許容幅に差は無いようです。ちなみに、グループ企業でもある阪急電鉄の神戸三宮駅ホームドアは、阪急車とドアピッチが合わない山陽車の許容幅が制限されています。

1.2 1番線大阪梅田方の一重引き戸タイプ

1番線の前側2両分のみ二重引き戸ではない

1番線(大阪梅田・大阪難波方面)の前から1・2両目となる範囲には、二重引き戸タイプではない通常タイプが設置されており、開口幅も推定3,200mm程度でした。なぜ一部範囲のみ通常タイプなのか明確な理由は不明ですが、可能性として考えられる理由の一つは “この範囲はドア位置のズレが少ないため” です。

例えば、同じ6両編成でも山陽5000系は阪神車より全長が約500mm長いため、先頭をピッタリ合わせて停車したとしても、後方の車両になるにつれてドア位置のズレが大きくなります。このような理由から、先頭に近くズレが小さい1・2両目は大開口とする必要が無かったのかもしれません。

一方の4番線(高速神戸・山陽姫路方面)は全ての開口が二重引き戸ですが、これは1番線とは逆に4・3両編成の列車がホーム前寄りに停車するため、その範囲に停車する車種が多い=ドア位置のズレが大きいのではないかと推測しています。

2 ホームドアの開閉方式

2.1 開閉方式の概要

同駅のホームドア開閉方式は以下の通りです。

  • 開扉:自動(定位置停止検知・両数検知)
  • 閉扉:車掌手動操作

阪急電鉄のホームドアシステムと同じく、各種センサが列車の定位置停止と編成両数を検知することで自動開扉し、閉扉は車掌が直接操作盤のボタンを押す方式です。各種機器の正式名称は不明なので、以下は阪急のホームドアシステムについての文献に基づいた名称で紹介します。

2.2 各種機器の概要

(1)定位置停止検知センサ

定位置停止検知センサ

測域センサ(2D-LiDER)が車両前面を測定することで列車の定位置停止を検知します。

(2)両数判定センサ

2基1組の両数判定センサ

1・3番線に発着する列車の編成両数は6両・4両・3両の3種類あるため、両数判定センサによってその判別を行います。上の写真は1番線の後方に設けられたセンサで、例えば6両編成の列車が誤って4両の停止位置に停止したような場合は、このセンサが車両を検知することでホームドアの自動開扉を防ぎます。

(3)ホームドア表示灯

乗務員・駅係員に対してホームドアの状態を表示するLED表示灯がホーム中央付近の天井から吊り下げられています。このような表示灯は記号やマークで内容を表すことが多いですが、同駅では全て漢字一文字を使って表示されているのが特徴です。

列車着発時の表示推移は以下の通りです。

  1. 列車の定位置停止を検知すると左側に青文字で「」が表示
  2. ホームドアが自動開扉すると右側に赤文字で「」が表示
  3. 車掌の操作でホームドアが全閉すると右側に緑文字「」が表示
  4. 列車が動き出すと左右ともに消灯

2.3 各種センサ配置図

定位置停止検知センサと両数判定センサの配置は上図の通りです。定位置停止検知センサは、全ての編成両数が前合わせで停止する3番線は前方1箇所に、後ろ合わせで停止する1番線は各編成両数の停止位置にそれぞれ設置されています。

3 おわりに

同駅は2007年から2013年にかけて大規模な改良工事が行われ、バリアフリー面などの問題は改善されたものの、依然としてホーム幅員が狭く危険な箇所も残っていたため、ホームドア設置によって安全性が大幅に向上しました。また、これによって三宮に乗り入れる5社局(JR西日本・阪急・阪神・市営地下鉄・ポートライナー)全ての駅でホームドアが整備されました。

残る2番線ホームは近鉄車が発着するため通常のホームドアが設置できないことから、JR西日本の主要駅などで実績のある昇降ロープ式ホーム柵が2022年春頃に設置される予定です。

出典・参考文献

脚注

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