阪神電気鉄道のホームドア:近鉄特急「Ace」乗り入れ時の神戸三宮駅昇降式ホーム柵取り扱い
2022年7月24日、近鉄の特急型車両22600系「Ace」を使用して阪神線の神戸三宮駅から近鉄名古屋駅までを直通する団体臨時列車が運行されました。「Ace」の阪神線乗り入れは2014年3月に初めて実現して以降定期的に行われていますが、今回は神戸三宮駅2番線の昇降ロープ式ホーム柵が稼働してからは最初の乗り入れだったため、その対応を観察してきました。
目次
1 神戸三宮駅2番線の昇降式ホーム柵について
神戸三宮駅のホームドアは1・3番線が一般的な腰高式(以下:ホームドア)なのに対して、2番線は「昇降ロープ式ホーム柵」が設置されています。これは車両規格が大きく異なる近鉄車も発着するためですが[1]阪神車は車体長約19m・片側3ドアに対し、近鉄車は車体長約21m・片側4ドア。、「Ace」は上図のように6両編成なら2か所、4両編成なら1か所のドアがホーム柵の支柱と重なってしまいます。
ホーム柵と重なるドアからは当然乗降できないはずなので、今後また乗り入れたときにはホーム柵の開閉方式なども含めてどのように取り扱うのか注目していました。
2 取り扱い自体は一般列車と変わらず
それでは7月24日に行われた実際の対応を見ていきます。
ホームドアの開閉方式はいずれも一般列車と同じく、開扉は各種センサが定位置停止と編成両数を検知して自動上昇、閉扉は車掌が直接操作盤のボタンを押す方式でした。制御単位の細分化が難しい昇降ロープ式特有のデメリットとして、4両編成の場合は列車長とホーム柵の区割りが合わないため余分に開いてしまいます。
そして予想通りホーム柵支柱と思いっきり重なっていた4号車連結部寄りのドアですが、ドアカット等は行われていなかったのが意外でした。今回は神戸三宮発のツアーなので同駅での降車客はいませんが、同駅着の列車であればこのドアから降りてしまわないよう事前に案内する必要があるでしょう。
そもそもポストと車両ドアの重なりは解消できないのでしょうか。図面をもとに調べてみたところ、停止位置を一般型車両よりも約3m手前にずらせば全てのドアを開口部に収められるように見えました。しかしそのためには、近鉄特急入線時のみ定位置停止検知センサのアルゴリズムを切り替えるシステムが必要だったり、操作盤やホーム監視用ITVから離れてしまうため閉扉操作にも支障をきたします。
つまり、めったに入線しない近鉄特急のためにシステムを増やしたり人員を割いて特殊な取り扱いをするよりは、できるだけ普段通りで手間のかからない対応をする方が合理的です。できなくはなさそうなドア重なりの解消をしないのはこうした理由なのかもしれません。
3 おわりに
以上のように、昇降式ホーム柵設置後の近鉄特急乗り入れは、団体臨時列車であればドア位置の問題もさほど影響しないことが分かりました。ホームドアは入線機会の少ない車種にどこまで考慮すべきかという課題に対して、今回の事例は強硬手段で乗り切るという解決策を示したと言えるでしょう。
出典・参考文献
- 中井 昌樹「近鉄 22600系「Ace」の概要」『鉄道車両と技術』Vol.15-No.2、レールアンドテック出版、2009年、p21-30
脚注
↑1 | 阪神車は車体長約19m・片側3ドアに対し、近鉄車は車体長約21m・片側4ドア。 |
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