東武鉄道 東武スカイツリーラインのホームドア:北越谷駅などのタイプ(急行線・緩行線両対応)

タイプ 腰高式
メーカー 日本信号
開閉方式 緩行線 トランスポンダ式連携
急行線 開扉 自動(定位置停止検知・両数検知)
閉扉 自動(ドア開閉検知)
停止位置許容範囲 緩行線 ±550mm(TASCあり)
急行線 ±750mm(TASCなし)
開口部幅 【推定】2,800mm
非常脱出ドア 開き戸式(一部の連結部間)
支障物検知センサ 3Dセンサ

東武鉄道の東武スカイツリーライン[1]伊勢崎線のうち浅草駅・押上駅~東武動物公園駅間の愛称。は、標準的な一般型車両の20m4ドア車と、東京メトロ日比谷線との直通運転に用いられる18m3ドア車・5ドア車が混在しているためホームドア設置のハードルが高い路線でした。そこで東武鉄道と東京メトロは2020年3月までにすべての日比谷線直通用車両を20m4ドア車に置き換え、特急列車を除く一般列車の車両ドア数を統一。これによりホームドア設置が可能になり、2020年6月7日稼働開始の北越谷駅1番線を皮切りに整備が進んでいます。

当記事では、北越谷駅などに設置された急行線・緩行線両対応のタイプについて紹介します。

1 ホームドアの仕様

1.1 共通仕様

北千住駅~北越谷駅間の複々線区間は、特急・急行列車などが走る外側の急行線と、東京メトロ日比谷線直通の普通列車が走る内側の緩行線に分かれており、ホームドアも発着する車種・編成両数に適した仕様に作り分けられています。この項では共通する基本仕様をまとめ、ホームごとの仕様については後述します。

このタイプは特急列車停車駅への設置は考慮されておらず、東上線の各駅に設置されているホームドアとほぼ同型の20m4ドア車に合わせた一般的な構造となっています。基本開口幅も東上線と同じく推定2,800mmで、後述するように急行線にはTASC(停止位置停止装置)が未整備なので停止許容範囲±750mmを確保しています。

扉部分は東上線が紺色だったのに対してこちらはオレンジ色に塗装されています。

ホーム側から見た車両ドア間の筐体
ホーム側から見た車両連結部の筐体
線路側から見た車両ドア間の筐体
支障物検知センサ・非常開ボタンは1か所の筐体に両側分がまとめて設置されている
線路側から見た車両連結部の筐体

支障物検知センサ・非常開ボタンの配置、車両連結部の筐体に設けられた非常脱出ドアの構造なども東上線タイプと特に変わっていないようでした。ただし下記の通り、急行線ホームでは非常脱出ドアが無い箇所もあるなど、ホームによって仕様が異なっています。

1.2 急行線ホームの仕様

急行線ホームは最大10両編成に対応

急行線ホームには東京メトロ半蔵門線直通列車を含むさまざまな車種・編成両数が発着します。そのため、ホームドアも6両編成から10両編成まで何種類かの編成両数に対応しており、車種による多少のドア位置の違いに対応するため一部の開口幅も異なっています。

(1)ホーム両端の筐体セットバック・非常脱出ドアの有無

奥の2両分が連続してセットバックされている
セットバックエリアには非常脱出ドアが無い
横方向に逃げられる構造となっている

急行線仕様で特徴的なのが、ホーム両端の約2両分(各編成両数の最前部・最後部が停車する範囲)すべての筐体を、乗務員出入りスペース確保のためホーム内側にセットバックしている点です[2]一般的には車両側の乗務員扉がある箇所のみをセットバックする。。また、そのセットバックエリアの車両連結部筐体には開き戸式の非常脱出ドアがなく、代わりに開口部との仕切りになる侵入防止柵を手で開けて脱出できるようになっています。

(2)開口幅の違い

幅の広い開口部の例
左側の扉が明らかに長い

前述の通り基本開口幅は推定2,800mmですが、車種や編成両数によるドア位置の違いを考慮するため[3]例えば、東武10000系と東急2020系では最大210mmずれる。、一部の開口幅は通常より若干広くなっています[4] … Continue reading。このような構造は東武アーバンパークライン船橋駅・柏駅のホームドアにも見られました。

1.3 緩行線ホームの仕様

緩行線ホームは7両編成分のみ設置

一方の緩行線ホームは、ホームドア設置直前の2020年6月6日に行われたダイヤ改正以降、日比谷線直通列車の20m車7両編成のみが発着するようになりました。そのためホームドアも7両編成のみに対応した仕様となり(6両編成にも非対応)、それ以外の範囲には鉄柵が設けられました。ドア位置も完全に統一されているため、急行線ホームのような開口幅の違いもありません。

ただし、北越谷駅の緩行線ホームはダイヤ乱れ時などに急行線の列車も入線できるように急行線仕様のホームドアが10両分設置され、後述する開閉システムもトランスポンダ式と地上完結式が併設されています

北千住駅3階ホーム

日比谷線との境界である北千住駅3階ホームにも本タイプが設置されており[5]これまで東京メトロと他社線の境界駅では他社の管轄駅であっても東京メトロ仕様のホームドアが採用されていた。、6・7番線(日比谷線方面)の筐体線路側に貼られている駅名標は東武のフォーマットながら日比谷線のラインカラーとなっています。

2 ホームドアの開閉方式

2.1 急行線ホームの地上完結型システム

急行線ホームにおけるホームドアの開閉方式は以下の通りです。

  • 開扉:自動(定位置停止検知・両数検知)
  • 閉扉:自動(車両ドア開閉検知)

急行線を走る車両には現時点でホームドアとの開閉連携を行う機能がないため、地上側の各種センサによりホームドアを制御する「地上完結型」のシステムが採用されています。

地上完結型システムの詳細は別記事をご覧ください。

2.2 緩行線ホームの車両連携システム

中央:ホームドア地上子
左:TASC距離補正用地上子

地上側設備だけで自動開閉を行う急行線ホームに対して、緩行線ホームはトランスポンダを用いた情報伝送によって車両ドアとホームドアが同期して開閉するシステムです。また、ホームドア整備開始に先立ち北千住駅~北越谷駅間の全駅にTASC(定位置停止装置)も導入されました。

これは日比谷線内におけるホームドアおよびATO(自動列車運転装置)の導入に伴い、日比谷線直通用の東武70000系および東京メトロ13000系にはATO装置およびトランスポンダがすでに搭載されていたため、東武線内でもこれを活用している形です。

前述の通り、北越谷駅の緩行線ホームには地上完結型システムも併設されていますが、それでも7両編成の緩行線列車が発着する際はトランスポンダ式連携で開閉します。

北越谷駅緩行線ホームの7両編成車掌向け表示灯
7両編成はトランスポンダ連携式であることを示す注意書きも
北越谷駅緩行線ホームの運転士向け停止位置マーカー
急行線列車との停止許容範囲の違いが分かる

緩行線のTASC停止精度は推定±550mmに設定されています。本タイプの開口幅はTASCが整備されていない急行線の停止精度±750mmを基準とした幅なので、緩行線では持て余している状態と言えます。

3 500系「リバティ」を用いた夜行列車への対応

新越谷駅4番線に停車する500系「リバティ」を用いた夜行列車

行楽シーズンの週末を中心に運行される特急型車両500系「リバティ」を用いた臨時夜行列車は、新越谷駅にも停車する場合があります。しかしリバティのドア位置はホームドアと合わないことから、一部号車のドアのみを開ける取り扱いを行っているほか、同駅4番線の地上完結型システムはリバティ3両編成にも対応した特殊仕様となっています。

臨時夜行列車の取り扱いについては別記事をご覧ください。

4 おわりに

以上のように、本タイプは一見すると同じように見えても、急行線ホームと緩行線ホームでさまざまな仕様が異なっています。元々ある程度の使い分けがされていた急行線と緩行線ですが、ホームドアの対応両数や開閉システムが物理的制約となったことで、運行系統の分離はさらに明確なものとなりました。

2022年度以降も北千住駅~北越谷駅の緩行線ホームで優先的にホームドア設置が進んでいますが、同年度設置の越谷駅からは、TASCの使用を前提として開口幅を狭めた緩行線専用の新タイプが採用されています。

出典・参考文献

脚柱

References
1 伊勢崎線のうち浅草駅・押上駅~東武動物公園駅間の愛称。
2 一般的には車両側の乗務員扉がある箇所のみをセットバックする。
3 例えば、東武10000系と東急2020系では最大210mmずれる。
4 ホーム中央付近は各号車1・4番ドアが約200mm広く、先頭車が停車する箇所(前述のセットバックエリア)は車種によるずれがさらに大きくなるため約300mmほど広くしている部分もあった。
5 これまで東京メトロと他社線の境界駅では他社の管轄駅であっても東京メトロ仕様のホームドアが採用されていた。

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