東武鉄道 東武アーバンパークラインのホームドア:船橋駅・柏駅の定位置停止検知・自動開扉システム
東武鉄道野田線(東武アーバンパークライン)では、2013年度に船橋駅で、2014年度に柏駅でホームドアが整備されました。両駅のホームドアの特徴は、全国に先駆けて車両側と通信を行うことなく自動開扉するシステムを採用したことでした。
目次
1 自動開扉システムのパイオニア
ホームドア黎明期はトランスポンダ装置を用いて車両ドアとホームドアを開閉連携する方式が主流でしたが、この方式は車両側の改造に膨大なコストと時間を要します。そのため2010年代に入ったころからは、地上側のセンサにより列車の停止位置や編成両数を判定したうえで、開閉自体は乗務員が車両ドアとホームドアを別々に操作する事例が増え始めていました[1]JR西日本の在来線・京王電鉄など。。
東武鉄道も野田線船橋駅で2014年3月に設置した同線初のホームドアにおいて、車両改造を不要とするためセンサで列車検知を行う方式を採用しましたが、他社における前例と異なるのは列車の定位置停止を検知した段階でホームドアを自動開扉することでした。閉扉は他社と同じく車掌による手動操作ですが、試験設置を除く常設のホームドアで車両と連携しない自動開扉を実現したのは船橋駅が全国初だったと思われます。
2 システムの仕組み
2.1 各種センサの概要
定位置停止検知はホーム上に設けられた2種類のセンサによって行い、この判定結果に基づいてホームドアを自動開扉します。なお、設置当時の同線の列車はすべて6両編成だったので編成両数を判別するセンサは設けられていませんでした。
(1)定位置停止検知センサ
列車が入線すると、停止位置前方に設けられたレーザ式測域センサが車両前面までの距離を測定し、その変化量をもとに列車の停止を判定します。ただしこのセンサが判定するのは “列車が動いているか止まっているか” のみで、正確な定位置範囲検知は次に紹介する車両連結部のセンサが担っています。
(2)定位置範囲検知光電センサ
1両目と2両目の車両連結部上方に黒い機器が吊り下げられており、線路側から見ると等間隔で6つの光電センサが並んでいます。これらのセンサが車体を検知しているか否か(=検知していなければ正面に車両連結部がある)の組み合わせによって列車が定位置範囲内に在線しているかを判定します。
2.2 停止位置範囲表示灯
車両側にはTASC(定位置停止装置)も導入されていないため、運転士が手動ブレーキングで停止位置に合わせやすいように、定位置範囲内に入ったこと・停止したことを停止位置前方の表示灯に表示します。
表示内容の推移は以下の通りです。
- 列車入線前→消灯
- 定位置範囲内に入線→[○]が点灯
- 定位置範囲内に停止→[●]が点灯
- ホームドア自動開扉→一定時間後にで消灯
進入方向の最後部足元には車掌向け表示灯が設置されており、こちらも表示推移はほぼ同じですが、ホームドア開動作中に[●]が点滅する違いがあります。
3 特急「アーバンパークライナー」への対応
2020年3月16日のダイヤ改正で、平日夜間に500系「リバティ」3両編成を用いて運転される特急「アーバンパークライナー」が柏駅への乗り入れを開始しました。これに伴い、柏駅では同列車が発着する2番線に限ってリバティ用のセンサ・表示灯類が新設され、入線時はリバティ2号車ドアと合致する5号車2番ドアのみが自動開扉するシステムとなっています。
「アーバンパークライナー」発着時の取り扱いについては別記事にまとめています。
4 おわりに
東武の2大主要路線である東上線・東武スカイツリーラインを差し置いて設置された船橋駅・柏駅のホームドアは一見地味な存在ですが、現代では当たり前になった自動開扉システムのパイオニアとして大きな功績を残した言えます。
東武アーバンパークラインでは2024年度以降から5両編成の新型車両を導入し、それと合わせて既存車両も6両編成から5両編成に減車される予定です。その過渡期は6両と5両が混在することになるため本システムにも改良が加えられるのは確実ですが、近年普及している車両ドア検知センサによる閉扉連動化[2]東武線内でも東武スカイツリーライン(急行線)で実績あり。などのバージョンアップは行われるでしょうか。
出典・参考文献
- 東武 アーバンパークラインに5両編成の新型車両を導入します|東武鉄道公式サイト
- 竹村 文吾「可動式ホーム柵の最新技術と今後の展望」『三菱電機技報』Vol.90-No.9、2016年、p51-54