東武鉄道では、行楽シーズンの週末を中心に、特急型車両500系「リバティ」を用いて浅草駅から会津高原尾瀬口駅を結ぶ臨時夜行列車が運行されています。しかし、途中停車駅の新越谷駅4番線に設置されたホームドアとはドア位置が合わないことから、一部号車のドアのみを開ける取り扱いを行っているほか、ホームドア開閉システムもリバティ3両編成に対応できる特別仕様となっています。

1　異なるドア位置への対応

新越谷駅のホームドアが稼働開始された2021年2月以降、初めて同駅に発着した臨時夜行列車は、約4か月後の同年6月より運行された2021年夏シーズンの「尾瀬夜行23：55」でした^[1]新型コロナウイルス感染症拡大の影響で1月～3月の「スノーパル23：55」は運休だったため。。

同駅は定期特急列車の停車駅ではないため、ホームドアも特急型車両のドア位置を考慮した仕様ではありません。そのためリバティは3両編成のうち2号車のドアのみを開口部と合わせるように停車し、2号車のドアだけを開扉して乗降扱いを行います。同様の取り扱いは、東武アーバンパークライン柏駅において、同じくリバティ3両編成を用いた特急「アーバンパークライナー」が発着する際にも行われています。

ホームドア本体の詳細は別記事をご覧ください。

リバティ3両編成はホームのやや後方より（10両編成基準の6～8号車付近）に停車し、7号車2番ドアが2号車ドアと合致します。また、最後部を6両編成と同じ位置に合わているため、6両編成用に設けられた乗務員操作盤・表示灯を共用することができています。

2　地上完結型システムの特殊仕様

2.1　到着時は一般列車と同じく自動開扉

同駅1・4番線（急行線ホーム）のホームドアは、地上側の各種センサにより列車の定位置停止やドア開閉を検知してホームドア自動開閉する「地上完結型」システムが採用されています。そして同列車が発着する4番線に限ってはリバティ3両編成にも対応できる特殊仕様が構築されました。

地上完結型システムの詳細は別記事をご覧ください。

標準仕様の場合、ホーム上には車両連結部を測定して列車の定位置停止を検知する「連結部検知センサ」が1か所、車両ドアの動きを読み取る「車両ドア閉検知センサ」が3か所に設置されています。しかし同駅4番線のうち7号車1番ドア上部に設置されている車両ドア閉検知センサのみ連結部検知センサと同じ外観をしていることから^[2]連結部検知センサは冗長性確保のため3Dセンサが2系統設けられている。、ちょうどその正面に停車するリバティの連結部検知（定位置停止検知）を兼任しているようです。

これによる定位置停止検知に加えて、編成両数を判別する「両数検知センサ」がリバティ3両編成であることを判定し、2号車ドアと合致する7号車2番ドアのみが自動開扉します。よって車掌や駅係員が特別な操作をする必要はありません。

2.2　出発時は車掌手動操作で閉扉

その一方で、リバティの乗車口となる7号車2番ドア上部には車両ドア閉検知センサが設けられていません。よってホームドア閉扉は自動ではなく車掌による手動操作で行われます。なお、この際の操作順序は柏駅とは逆で、車両ドア→ホームドアの順に操作していました。

2.3　リバティ6両編成には非対応？

以上のように、同駅4番線の地上完結型システムはリバティ3両編成の発着にも対応できるため、ホームドア設置後も引き続き同駅への停車を可能としています。

しかし、6両編成に増車して運行された2021年秋シーズンの「日光紅葉夜行」や2022年夏シーズンの「尾瀬夜行23：45^[3]浅草駅の出発時刻が変わったため列車名も変更。」は新越谷駅が通過駅に変更されました。よって同駅のホームドアシステムが対応しているのはリバティ3両編成のみで、6両編成には非対応なのかもしれません。

3　おわりに

このような運行日数の限られる臨時列車の場合、ホームドアシステムには手を加えず、駅係員による手動操作で開閉する方式にしたほうがコスト的には有利に思えます。しかしながら、同駅ではこの列車のための特殊仕様を構築して自動開扉に対応していたのが個人的には意外でした。

出典・参考文献

• 尾瀬夜行23:55[2021年度版] | 東武鉄道公式サイト（インターネットアーカイブ）
• 臨時夜行列車「日光紅葉夜行」を運行します！ | 東武鉄道公式サイト
• 尾瀬夜行23:45[2022年度版] | 東武鉄道公式サイト（インターネットアーカイブ）
• 取組事例の紹介 | 東京都都市整備局

脚注