東武鉄道 東上線のホームドア:現行タイプ

タイプ | 腰高式 |
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メーカー | 日本信号 |
開閉方式 | トランスポンダ式連携 |
停止位置許容範囲 | ±550mm(TASCあり) |
開口部幅 | 【推定】2,800mm |
非常脱出ドア | 開き戸式(各号車連結部) |
支障物検知センサ | 3Dセンサ |
東武鉄道の東上線では、2016年3月26日に和光市駅1・4番線で同線初となるホームドアの稼働が開始されました。同社のホームドア設置駅は野田線(東武アーバンパークライン)の船橋駅・柏駅に続いて3駅目でした。2017年度には川越駅で、2018年度以降は池袋駅や朝霞駅などの主要駅で順次設置されています。
なお、和光市駅2・3番線は2012年度にホームドアが設置済みですが、これは同駅から分岐する東京メトロ有楽町線の整備事業として設置されたもので、デザイン・仕様も有楽町線内と同じです。それに対して当記事で紹介する東上線タイプは、メーカーやデザインの違いだけでなく、より多くの車種が発着することを考慮した仕様となっています。
目次
1 ホームドアの仕様
1.1 基本仕様

ホームドアのタイプは腰高式、メーカーは日本信号です。東上線は特急型車両などが走行しないため、20m4ドア車の車両ドア配置に合わせた一般的な構造となっており、同時期に整備が始まった東急大井町線・田園都市線などの同社製ホームドアとよく似ています。
同線ではホームドア整備に合わせてTASC(定位置停止装置)を導入しており、停止許容範囲は±550mmに設定されています。しかし、車種による多少のドア位置の違いに対応するため、開口幅は有楽町線タイプが2,480mmなのに対して、東上線タイプはやや広めの推定2,800mmを確保しています[1]ホームドアに対応できないことが一因で地下鉄直通運用から撤退した東武9000系試作車(9101F)にも対応できたのはこのため。。
扉部分は同線のラインカラーである紺色に塗装されています。


筐体は左右の扉を互い違いに収める構造で、車両連結部の筐体には開き戸式の非常脱出ドアが設けられています。各開口には3D式支障物検知センサ・非常開ボタンが設けられており、1か所の筐体に両側2開口分がまとめて配置されているのが特徴です。

足元には停止許容範囲を示すマーカーが貼られている

列車が定位置範囲内に在線中は下段の[D]が点灯し、ホームドア開扉中は上段の[●]が消灯する
ホームの後部側には車掌向けの乗務員操作盤・表示灯が設けられています。なお、後述するように同線のホームドアは車両ドア開閉操作と連携するシステムなので、操作盤は基本的に使用されません。
1.2 8両編成対応・非対応の違い

乗務員出入りスペースのため膨らみを持たせるように配置している
同線では2008年6月のダイヤ改正以降、池袋駅発着の列車は10両編成に統一されているため、池袋駅のホームドアは10両編成のみに対応した仕様です。一方、和光市駅~志木駅間は東京メトロ副都心線方面から乗り入れる8両編成が運行されるため、和光市駅以北のホームドアは8両編成用の乗務員操作盤や表示灯、乗務員出入りスペースのための筐体セットバックが設けられています[2]地下鉄直通列車は和光市駅2・3番線に発着するが、1・4番線ホームドアも8両編成に対応している。[3]定期運用では8両編成が乗り入れない川越駅も含む。。
2 ホームドアの開閉方式
2.1 概要

同線のホームドア開閉方式は、トランスポンダ装置を用いた送受信により車両ドア側の開閉操作と連携するシステムが採用されています。列車が許容範囲内に停止すると、地上子と車上子がピッタリ重なって情報の送受信が可能になります。

先頭車両の乗務員室直下にある車上子は、もともと運転保安装置「T-DATC」の情報伝送用として搭載されたもので、拡張機能としてTASC制御に必要な距離情報やホームドア開閉連携などの送受信も担っています。
なお、直通する有楽町線・副都心線のホームドアも同じトランスポンダ式連携ですが、東上線は進行方向1両目の車上子を用いるのに対して、有楽町線・副都心線(和光市駅2・3番線も含む)では進行方向に関わらず小川町方先頭車に搭載された「ATO車上子[4]地下鉄線内でのATO運転(自動運転)時に使用される車上子。東武用T-DATC車上子とは別の位置に搭載。」で送受信を行うという違いがあります。
2.2 上り「TJライナー」発着時の制御

車両ドア・ホームドアともに一部のみが開く
通勤・通学時間帯に運行されている座席指定列車「TJライナー」のうち朝の上り列車(池袋行き)は、乗車口を一部ドアのみに限定して座席指定券の検札を行っています。ホームドア設置駅の川越駅では、乗務員や駅係員の特別な操作なしでホームドア側も該当する箇所のみが開閉していたため、これもトランスポンダによる車両側からの情報で自動的に制御されているものと思われます。
3 おわりに
2023年12月末時点では池袋駅(5番線を除く[5]5番線は固定柵を整備。)・和光市駅・朝霞駅・志木駅・川越駅で整備が完了しており、今後は2035年度までに池袋駅~川越市駅間の全駅で整備される予定となっています。
また、2020年度からは東武スカイツリーライン[6]伊勢崎線のうち浅草駅・押上駅~東武動物公園駅間の愛称。でもホームドア整備が始まっており、東上線とほぼ同じタイプが採用されていますが、TASCの有無などが影響して一部の開口幅が異なっているほか、開閉方式も車両と連携しないシステムが採用されています。
出典・参考文献
- 鉄道駅バリアフリー料金制度を活用し、 駅設備のバリアフリー化を促進します|東武鉄道
- 3月26日(土)和光市駅ホーム(東武東上線側)にて可動式ホーム柵の使用を開始します|和光市
- 可動式ホームドア | 日本信号株式会社
- 狩野 澄雄「東武東上線のATSからATCへの更新」『鉄道と電気技術』Vol.27-No.8、日本鉄道電気技術協会、2016年、p57-61