JR東日本 南武線のホームドア:立川駅 臨時特急発着時の取り扱い

JR東日本は、6月や11月の行楽シーズンに青梅駅~鎌倉駅の間を南武線経由で結ぶ臨時特急列車を運行しています。その途中停車駅である立川駅の南武線ホームでは2023年にホームドアが設置されたことで、JR東日本としては初めて “ホームドア設置駅に特急型車両が発着する” という出来事が実現しました[1]昇降式ホーム柵が設置されている成田空港駅・空港第2ビル駅は除く。

しかし、同駅のホームドアは特急型車両のドア位置を考慮した造りではなく、ホームドアと車両ドアの開閉連携も不可能なため、一部ドアの締め切り・個別操作盤によるホームドア開閉といった手動操作中心の取り扱いで対応していました。

1 一般列車の場合

JR東日本は2031年度末ごろまでに東京圏の主要路線330駅[2]駅数は線区単位で計上。でのホームドア全駅整備を目指しています。南武線でも2021年度から順次設置が進んでいますが、普段は同線の一般列車に用いられるE233系8000番台しか発着しないため、ホームドアも同形式のドア位置に特化した造りとなっています。

また、JR東日本の在来線では原則としてホームドアと車両ドアを開閉連携しているため、車両側にホームドア連携装置を搭載する必要があります。南武線のホームドアには「無線式ホームドア連携システム」が採用されており、無線通信によって乗務員の車両ドア操作と同期してホームドアも開閉します。

2 臨時特急着発時の取り扱い

2.1 異なるドア位置への対応

ホームに掲示された臨時特急の案内

立川駅南武線ホームにホームドアが設置されてから初めて運行された臨時特急は、2023年6月にE257系5500番台5両編成を用いて運転された特急「花咲く鎌倉あじさい号」でした。また、同年11月には同じダイヤ・使用車両で特急「鎌倉紅葉号」も運行されています。

同車は一般型車両とドア位置が大きく異なるためホームドア設置駅での対応が注目されていましたが、5両編成のうち2・3号車のドアのみをホームドアと合わせて停車することで、ホームドア設置後も引き続き同駅での乗降扱いを可能としました。ホームドアに対応できない車両は一部ドアのみを開ける取り扱いは他社だと前例があるものの[3]小田急電鉄の特急ロマンスカーなど。、JR東日本管内では初めてのことでした。

磁石でホームドアに取り付けられた乗車口表示

具体的には、列車をホームの青梅方に寄せて停車し(南武線ホームは6両分)、2号車4番ドアを臨時特急の2号車ドア、3号車4番ドアを臨時特急3号車に合わせます。ホーム上には臨時特急の乗車口についての案内が掲示されており、到着時刻の10分ほど前になると、駅係員が当該のホームドア開口部横に車両のイラストをあしらった乗車口表示を取り付けていました。

2.2 列車到着時の取り扱い 

列車入線前に開けられたホームドア
開口部の表示灯が点灯している
ホームドア状態表示板も開扉中を示す赤ランプが点灯

今のところE257系を含め同社の特急型車両でホームドア連携に対応している車両はほぼ存在しておらず[4] … Continue reading、そのうえ一部の開口部だけを開ける特殊な取り扱いも必要になるため、ホームドアの開扉は駅係員がホームドア各開口部に設けられている「個別操作盤」を用いて行います。

同駅で特徴的なのは、箇所によって列車が入線する前からホームドアを開扉している点です。転落防止というホームドアの一番の役目を果たせていないわけですが、乗車口近くには駅係員が居るので安全性を確保できるという考え方なのでしょうか。

7番線1号車3番ドア付近の床面
「面」と書かれたテープが
「面」テープの位置で停止位置指示合図を掲げる

E257系5両編成用の停止位置目標は設けられていないため、入線時は駅係員が白色旗による停止位置指示合図を掲出します。ホーム床面には車両前面の位置を示すと思われる「面」や、乗務員扉の位置と思われる「扉」と書かれたテープが貼られていました。

また、同駅では乗務員交代を行うため、1・5号車の乗務員扉に近いホームドア(1号車4番ドア・6号車4番ドア)も開扉していました。ただし乗務員扉とピッタリ重なるわけではないため、乗務員は車両とホームドアの間をすり抜けるようにして出入りしていました。

車両ドアが開き乗り込む乗客

列車が停止位置に停車した後は、関係各所との連絡や確認を行うため、車両ドアが開くまでに1分程度時間を要していました。なお、車両ドアについても車両側の機能を使って2・3号車以外はドアカットされています。

2.3 列車出発時の取り扱い

旅客の乗降が終了すると、駅係員は出発時刻前でも順次ホームドアを閉めていました。その後、本来の出発時刻になったら通常どおり発車メロディを流し、車掌が車両ドアの閉扉操作を行って出発していきます。

最後に駅係員がホームドアに貼り付けた乗車口表示を撤去し、一連の取り扱いは終了しました。

3 おわりに

以上が立川駅南武線ホームにおける臨時特急のホームドア取り扱いです。この取り扱いは、停車時間に比較的余裕がある駅で、なおかつ多くの人員を確保できる条件だからこそ可能だと感じました。これと同じ取り扱いを毎日運転する定期列車で行うのは、停車時間や人員の観点から難しいでしょう。

今後もホームドア設置駅が増えるにつれて臨時列車や団体専用列車は影響を受けそうですが、今回の事例と同じようにマンパワーで乗り切っていくのでしょうか。そして近い将来には、中央線や東海道線など毎日多くの定期特急列車が走る線区でもホームドア設置が本格化します。ドア位置の違いを克服できる新型ホームドアを導入するのか、それとも一部ドア締め切りで対応するのかなど、対応が一層注目されます。

出典・参考文献

脚注

References
1 昇降式ホーム柵が設置されている成田空港駅・空港第2ビル駅は除く。
2 駅数は線区単位で計上。
3 小田急電鉄の特急ロマンスカーなど。
4 昇降式ホーム柵が設置された成田空港駅・空港第2ビル駅に乗り入れる特急「成田エクスプレス」用のE259系は対応しているが、南武線のシステムとは仕様の異なる部分がある。

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