JR東日本 中央・総武線各駅停車のホームドア:従来型ホームドアの仕様

タイプ 腰高式
メーカー JR東日本メカトロニクス・三菱電機
開閉方式 トランスポンダ式連携
停止位置許容範囲 ±350mm(TASCあり)
開口部幅 一般部 2,000mm
1・10号車大開口部 2,900mm
非常脱出ドア 開き戸式(各号車連結部)
支障物検知センサ 3Dセンサ

JR東日本の中央・総武線各駅停車(中央・総武緩行線)では、当初2020年に開催予定だった東京オリンピック・パラリンピックの開会時期にあわせて、競技会場最寄り駅の千駄ヶ谷駅・信濃町駅および代々木駅にホームドアが整備されました。最初に稼働開始されたのは2020年6月13日の千駄ヶ谷駅です。

上記の3駅以降、他の駅でも順次整備が進んでいます。当記事では千駄ヶ谷駅などに設置された従来型ホームドア(スマートホームドアではない)について、同線ならではの仕様を紹介します。

1 ホームドアの仕様

1.1 基本仕様

2016年度から京浜東北線などで設置されている、現在のJR東日本における標準タイプのホームドアが中央・総武線でも採用されました。当記事で紹介する両先頭車の拡幅開口を除けば基本仕様も特に変わっていません。

ホームドア設置に伴いTASC(定位置停止装置)が導入されたため、基本開口幅は山手線や京浜東北線と同じく車両ドア幅1,300mmにTASCの停止精度±350mmを加えた2,000mmです。筐体部分のホーム側には同線のラインカラーである黄色の帯が装飾されています。京浜東北線は扉部分もラインカラーに塗装されていますが、中央・総武線では白一色となりました。

一部編成の5号車に連結されていた「6ドア車」はホームドアに対応できないため、2020年3月までに全ての車両が通常の4ドア車に置き換えられました。一方で、東京メトロ東西線との直通運転を行っている三鷹駅~中野駅間および西船橋駅~津田沼駅間には東京メトロの車両も乗り入れますが、本タイプは「ワイドドア車」などの特殊なドア配置に対応していないため、上記区間の各駅には設置されていません。

また、以前は早朝・深夜にかぎり中央線快速(オレンジ色の電車)が三鷹駅~御茶ノ水駅間を各駅停車として走っていましたが、ホームドア設置前の2020年3月14日ダイヤ改正で廃止されました。よって中央線快速のドア位置が異なる車両に対応する必要もなくなり[1]10両固定編成なら問題ないが、6両+4両の分割編成だと一部のドア位置がずれる。中央・総武線の車両だけに特化した構造となっています。

その他の基本仕様については別記事をご覧ください。

1.2 将来の新車導入に対応した大開口部

E231系と次世代型車両の先頭車ドア位置の違い
1・10号車の大開口部

前述の通り基本開口幅は2,000mmですが、両先頭車の乗務員室直近に限っては幅2,900mmの大開口となっています。これは山手線ホームドアの設置当時とまったく同じ境遇で、将来的な新型車両の導入に対応するために設けられました。

現在同線で活躍しているのは2000年代初頭に製造されたE231系(0番台・500番台)ですが、E233系・E235系などの次世代型車両は前頭部に衝撃吸収構造を取り入れた関係で乗務員室直近のドア位置がずれています。そのため、将来的にこれらの車両が導入されても対応できるように、あらかじめ1号車1番ドア・10号車4番ドアを大開口としているのです。

2 ホームドアの開閉方式

ホームドア車上子とホームドア地上子
ピッタリ重なることで情報伝送が可能になる

中央・総武線のホームドア開閉方式は、山手線・京浜東北線と同じくトランスポンダ装置を用いた送受信により車両ドア側の開閉操作と連携するシステムが採用されました。列車が±350mmの停止許容範囲内に停止すると、10号車(三鷹方先頭車)に搭載された「ホームドア車上子」と線路側に設けられた「ホームドア地上子」がピッタリ重なって情報の送受信が可能になります。

ホームドア整備が始まった2020年当時、導入コストを削減できる「無線式ホームドア連携システム」が既に総武快速線の新小岩駅などで採用されていました。それなのに旧来のトランスポンダ式を採用した理由として考えられるのは、ちょうど同時期に山手線からE231系500番台が大量に転入してきたことです。E231系500番台は山手線時代にホームドア対応のためトランスポンダ装置を搭載する改造工事を受けており、中央・総武線でも同じ方式を採用することで車両改造の手間を省いたのではないでしょうか。

3 おわりに

同線では最初に紹介した3駅のほか、水道橋駅・錦糸町駅など特に乗降客数の多い駅で従来型ホームドアが採用され、2021年度末までに7駅14ホームで設置されました。一方、2020年度の市ヶ谷駅を皮切りに軽量・低コストな「スマートホームドア」も積極的に採用されており、2022年度以降は従来型ホームドアの新設がありません。

出典・参考文献

脚注

References
1 10両固定編成なら問題ないが、6両+4両の分割編成だと一部のドア位置がずれる。

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