JR東日本 常磐線各駅停車のホームドア:従来型ホームドアの仕様

JR東日本の常磐線各駅停車(常磐緩行線)では、2021年度からJR東日本が管轄する亀有駅~取手駅間の各駅でホームドア整備が進んでいます[1]東京メトロが管轄する綾瀬駅は2019年度に全ホームで整備済み。。最初に整備された馬橋駅などは「スマートホームドア」でしたが、2021年12月稼働開始の柏駅および新松戸駅では従来型ホームドアが採用されました[2]柏駅は9日、新松戸駅は19日に稼働開始。

同線はJR他路線と車両規格などが異なるため、先に整備されたスマートホームドアと同じく従来型ホームドアにおいても一部が独自仕様となっています。当記事では従来型ホームドアの同線ならではの仕様を紹介します。

1 ホームドアの仕様

1.1 基本仕様

2016年度から京浜東北線などに導入されている、現在のJR東日本における標準タイプのホームドアをベースとしていますが、同線の仕様に合わせてドアピッチ・開口幅の変更、それに伴う筐体厚みや内部構造の設計変更が行われました。

基本仕様については別記事をご覧ください。

1.2 開口幅・ドアピッチの違い

常磐線各駅停車は直通運転を行う東京メトロ千代田線と仕様を合わせた「ATO(自動列車運転装置)」を導入した関係で、停止許容範囲がJR東日本の標準より広いため[3]JR東日本の他路線で導入されている「TASC(定位置停止装置)」の性能上の停止精度は350mm。それに対して同線のATOは450mm。、ホームドア開口幅も標準の2,000mmより僅かに広い2,200mmとなりました。また、車両ドアピッチ(ドア中心同士の間隔)もJR他路線より短く、戸袋が一直線上だと扉を収めきれないことから、互い違いに収納することで戸袋スペースを確保しています[4]JR東日本の20m4ドア車の標準ドアピッチは4,940mm。それに対して同線は4,820mm。

JR東日本標準ホームドアと常磐緩行線仕様ホームドアの戸袋配置の違い
基本仕様よりやや分厚い筐体
手前の扉は線路側に、奥の扉はホーム側に収納されている
常磐緩行線仕様ホームドアの車両ドア間筐体
線路方向の長さが短い
参考:基本仕様ホームドアの車両ドア間筐体
線路方向の長さが長い

スマートホームドアは元々バリエーション展開が容易な造りなため大幅な設計変更は不要でしたが、従来型ホームドアを互い違い構造とするためには筐体厚み(基本仕様は150mm)を増やす設計変更が必要でした。その一方で、ホーム幅員が狭い駅においても法令で定められた通路幅を確保できるように配慮しなければなりません。

これらの条件を踏まえ、中継器の薄型化・個別操作盤の配置変更などを行ったことで、厚みを最低限(200mm以内)に収めながら互い違い構造を実現したそうです[5] … Continue reading。また、ホーム側の点検パネルから線路側の支障部検知センサを交換できるメンテナンス性の高さもしっかり継承されてます。

常磐緩行線仕様ホームドアの車両連結部筐体
左右の扉長さの違いに注目

各号車連結部には非常脱出ドアがあること、またその関係で、隣接する開口部(各号車1・4番ドア)の扉長さが左右非対称となっていることは基本仕様と変わりません。

2 ホームドアの開閉方式

常磐線各駅停車のホームドア開閉方式は、山手線などと同じくトランスポンダ装置を用いた送受信により車両ドア側の開閉操作と連携するシステムです。ただし、千代田線のホームドアシステムと互換性を持たせるため、JR他路線とは内部的な仕様が異なっているそうです。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

3 おわりに

現時点で同線の従来型ホームドア設置駅は柏駅・新松戸駅のみで、その他のほとんどの駅はスマートホームドアが採用されましたが、設置工事中の松戸駅は基礎部分の形状から従来型ホームドアになるものと思われます。

大幅な設計変更が不要なスマートホームドアだけを導入せず、わざわざ互い違い構造の従来型ホームドアを開発・導入したのは、今後も駅ごとの利用者数などを考慮して従来型ホームドアとスマートホームドアを使い分けていく方針の現れだったように感じます。そしてこの開発は、今後のさらなるホームドア整備拡大、とりわけ車両ドア位置が異なる線区におけるホームドア導入時に活かされるでしょう。

出典・参考文献

  • 山上 正則、宮田 康治、森永 雅也、田中 嚴「常磐緩行線対応ホームドアの開発」『R&M : Rolling stock & machinery』2022.2、日本鉄道車両機械技術協会、p23874-23877

脚注

References
1 東京メトロが管轄する綾瀬駅は2019年度に全ホームで整備済み。
2 柏駅は9日、新松戸駅は19日に稼働開始。
3 JR東日本の他路線で導入されている「TASC(定位置停止装置)」の性能上の停止精度は350mm。それに対して同線のATOは450mm。
4 JR東日本の20m4ドア車の標準ドアピッチは4,940mm。それに対して同線は4,820mm。
5 他路線でも先頭車のドアピッチが狭い個所には互い違い構造を採用しているが、個別操作盤を隣接する戸袋に搭載することで機器スペースの課題をクリアしていた。

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