東武鉄道 東武スカイツリーラインのホームドア:急行線ホームの地上完結型システム

東武鉄道の東武スカイツリーライン[1]伊勢崎線のうち浅草駅・押上駅~東武動物公園駅間の愛称。では、2020年度からホームドアの整備が始まっています。このうち北越谷駅などにおける外側のホーム(急行線ホーム)は、発着する車両がホームドア連携に対応していないため、車両側への改造工事を伴わない地上完結型の開閉連携システムが採用されました。

1 急行線と緩行線で開閉方式が違う理由

北千住駅~北越谷駅間の複々線区間は、特急・急行列車などが走る外側の急行線と、東京メトロ日比谷線直通の普通列車が走る内側の緩行線に分かれています。ホームドアの仕様も、急行線ホームは最大10両編成に対応、緩行線ホームは7両編成のみに対応しているなど違いがありますが、両者では開閉方式も異なっています

急行線には東京メトロ半蔵門線・東急田園都市線との直通運転で新旧さまざまな車種が乗り入れており、車両ドアとホームドアを開閉連携するにはすべての車両への改造工事が必要となってしまいます。そこで、車両側への改造を必要とせず、地上側設備のみでホームドア開閉を自動化できるシステムが採用されました。

一方、緩行線のホームドアはトランスポンダによる送受信で開閉連携を行う方式となっており、TASC(定位置停止装置)も整備されています。これは日比谷線内におけるホームドアおよびATO(自動列車運転装置)の導入に伴い、日比谷線直通用の東武70000系および東京メトロ13000系にはATO装置およびトランスポンダがすでに搭載されていたため、東武線内でもこれを活用している形です。

このようにして、同じ路線・隣り合ったホームであってもホームドアは異なる開閉方式で運用されることになったのです。ただし、北越谷駅の緩行線ホームはダイヤ乱れ時などに急行線の列車も入線できるように10両分のホームドアが設置され、開閉システムもトランスポンダ式と地上完結式が併設されています[2]7両編成の緩行線列車の発着時のみトランスポンダ式連携で、その他の編成両数の発着時は地上完結式システムで開閉。

2 システムの仕組み

2.1 各種センサの概要

すでに他の鉄道事業者でも多くの採用実績があるこの方式は、地上側に設置された3種類のセンサによって列車の定位置停止やドア開閉を検知し、それに追従してホームドアを自動的に開閉します。よって車掌がホームドアを操作する必要はありません。東武アーバンパークライン船橋駅・柏駅のホームドアも車両と連携しないシステムで運用していますが、異なるのは閉扉も連動化されていることです。

車両改造の必要がないため低コストに導入できるメリットがある一方、周囲の明るさや天候・乗車率による誤判定が起きる可能性もあり、導入前の調整には苦労があるようです。また、同じシステムを運用している他社よりもホームドアの閉まり始めが少し遅いように感じました。

(1)連結部検知センサ

連結部検知センサの外観

1ホームにつき1か所に設けられた3Dセンサが車両連結部の位置を測定することで、列車の定位置停止を検知します。冗長性確保のためセンサが2系統設けられています。

(2)両数検知センサ

開口部の真逆を向いているのが両数検知センサ
ホーム終端部にも設置されている

急行線ホームには何種類かの編成両数が発着するため、ホームの複数個所に設置した3Dセンサがその地点での車両の有無を検知します。これと前述の定位置停止検知の組み合わせで、編成両数に対応する範囲のホームドアを自動開扉しています。

(3)車両ドア閉検知センサ

車両ドア閉検知センサの外観
編成あたり3か所の車両ドアを測定

3Dセンサが車両ドアの動きを読み取ることで、それに追従してホームドアを自動閉扉します。設置箇所は1ホームにつき3か所で、多数決判定を行うことにより冗長性が確保されています。

2.2 各種センサの配置

北越谷駅1・2番線の各種センサ配置図

例として、まずは北越谷駅1・2番線と各種センサ配置図を示します。前述の通り、北越谷駅は緩行線ホーム(2・3番線)も急行線列車が入線できるように地上完結型システムが備わっていますが、7両編成が発着する際は本システムではなくトランスポンダ式連携で開閉します。

車両ドア閉検知センサの配置は駅構造などとの兼ね合いで決められていると思われますが、どの編成両数でもかならず3か所を検知できる配置となっています。

新越谷駅4番線の各種センサ配置図

続いて新越谷駅4番線の配置図です。同駅に停車する座席指定列車「THライナー」は各号車1か所のみのドアを開けることから、車両ドア閉検知センサは当該ドアに合わせて配置されています。また、4番線には特急型車両500系「リバティ」を使用した臨時列車も発着することがあるため、それに対応した特殊仕様となっています。

これら特殊な列車への対応については5項および別記事で紹介します。

2.3 乗務員表示灯

運転士向け表示灯
表示内容の推移

ホームドアが開いたまま列車が出発してしまうのを防ぐため、ホーム前方には運転士に対してホームドアの状態などを伝える表示灯が設けられています。東武アーバンパークライン船橋駅・柏駅にも同様の表示灯がありますが、表示内容は一部異なっています。

  • 列車入線前→消灯
  • 定位置範囲内に停止→[]が点灯
  • 一定時間後(ホームドアが全開したタイミング?)→[×]が点灯
  • ホームドア全閉→[]が点灯
  • 列車出発後→消灯

なお、トランスポンダ式連携の緩行線ホームでは車両の運転台パネルにホームドアの状態等も表示されるため、この表示灯は設けられていません。

北越谷駅緩行線ホームの7両編成車掌向け表示灯
7両編成はトランスポンダ連携式であることを示す注意書きも

一方、最後部側の車掌向け表示灯は急行線ホーム・緩行線ホームともに設けられており、列車が定位置範囲内に在線中は下段にDが点灯し、ホームドア開扉中は上段のが消灯します。これは東武東上線のホームドアとも同じ仕様です。

3 通過列車などへの対応

新設された通過列車用の停止位置目標(手前)

列車の定位置停止によりホームドアを自動開扉する方式は、通過列車が何らかの理由で停車した際にも開いてしまう欠点があります。そのため同線では、所定の停止位置から数メートル手前に「通」と書かれた停止位置を設けて、通過列車や回送列車はこの位置に停止することで自動開扉を防いでいます。

4 特殊な列車への対応

4.1 THライナー

「THライナー」停車中の様子
各号車1か所のみのホームドアが開いている

通勤・通学時間帯に運行されている日比谷線直通の座席指定列車「THライナー」は急行線を走行するため[3]西新井駅~北千住駅間のみ緩行線を走行。、車両側がトランスポンダ式連携に対応していても地上側設備がありません。よって停車駅の新越谷駅におけるホームドア開閉は、他の急行線列車と同じく地上完結型システムによる制御となります。

2.2項でも述べたように、同列車は各号車1か所のドアのみで乗降扱いを行いますが、ホームドア側も該当する箇所のみが自動開扉していました。運行管理システムなどと連動している可能性もありますが、原則として同列車以外の7両編成が急行線ホームに発着することは無いため、7両編成ならデフォルトで当該ドアのみが開く設定なのかもしれません

4.2 500系「リバティ」を使用した夜行列車

行楽シーズンの週末を中心に運行される特急型車両500系「リバティ」を用いた臨時夜行列車は、新越谷駅にも停車する場合があります。そのため、同駅4番線の地上完結型システムはリバティ3両編成にも対応した特殊仕様となっており、入線時はリバティ2号車ドアと合致する7号車2番ドアのみが自動開扉します。ただし、閉扉は一般列車と異なり車掌による手動操作で行われます。

夜行列車発着時の取り扱いについては別記事をご覧ください。

5 おわりに

前述の通り、すでに多くの事業者で採用実績のある本システムですが、ホームによってはトランスポンダ式と併設されていたり、運行日数の限られる臨時列車にもわざわざ対応させている点が同線ならではの特徴と言えます。2024年2月末時点で急行線ホームのホームドア設置駅は北越谷駅と新越谷駅のみですが、今後は特急停車駅でもホームドア整備が本格化するため、開閉システムをどう対応させるかが注目されます。

出典・参考文献

脚注

References
1 伊勢崎線のうち浅草駅・押上駅~東武動物公園駅間の愛称。
2 7両編成の緩行線列車の発着時のみトランスポンダ式連携で、その他の編成両数の発着時は地上完結式システムで開閉。
3 西新井駅~北千住駅間のみ緩行線を走行。

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