阪神電気鉄道のホームドア:大阪梅田駅の仕様

タイプ 腰高式(一部二重引き戸タイプ)
メーカー 京三製作所
開閉方式 開扉 自動(定位置停止検知・両数検知)
閉扉 車掌手動操作
停止位置許容範囲 【推定】±550mm(TASCなし)
開口部幅(基本) 【推定】3,200mm
非常脱出ドア 開き戸式(一部の車両連結部)
支障物検知センサ 3Dセンサ

阪神電気鉄道の大阪梅田駅では、2015年からバリアフリー化やホーム移設・拡張などの大規模改良工事が進められており、その一環として可動式ホーム柵(以下:ホームドア)が順次整備されています。2021年10月30日に使用開始された新1番線ホームを皮切りに、2023年度までに全6ホーム[1]2・3番線は乗車ホームと降車ホームが分かれているため。での整備が完了しました。

各ホームの稼働開始日は以下の通りです。

  • 1番線:2021年10月30日
  • 2番線:2023年1月28日
  • 3番線:2023年5月27日
  • 4番線:2023年12月16日

阪神のホームドア設置駅は2020年度に整備された神戸三宮駅1・3番線に次いで2駅目ですが、大阪梅田駅ではほとんどの開口部が二重引き戸タイプではなく通常の一重引き戸タイプとなっています。

1 ホームドアの仕様

1.1 共通仕様

神戸三宮駅のホームドアは二重引き戸式大開口タイプ(1番線の一部のみ一重引き戸タイプ)だったのに対して、大阪梅田駅は一部を除くほとんどの開口部が通常の一重引き戸タイプです。これは、進入速度が低い終端駅のため停止許容範囲を狭くすることができ、それによって必要な開口幅も縮小されたためだと思われます。

本タイプの基本仕様については別記事をご覧ください。

1.2 1~3番線の仕様

乗車ホームと降車ホームが分かれている2・3番線
ホームドアは両側ともに設置

1~3番線は主に特急・急行系統の列車が発着するホームで、最大6両編成に対応しています。改良工事以前はいずれも乗車ホームと降車ホームに分かれていましたが、1番線は北側に新しく建設された新ホーム(乗降兼用)へと移転し、2・3番線は旧1番線のスペースを活かしてホームの移設・拡張が行われました。

1~3番線ホームドアの主な特徴は以下の2点です。

(1)神戸三宮方先端のみ二重引き戸

神戸三宮寄り先端のみ二重引き戸
前から1-2両目(6-5号車)の連結部
筐体同士の間隔が狭いため非常脱出ドアが無い
その他の号車の連結部
非常脱出ドアが設けられている

前述の通り、同駅のホームドアはほとんどが一重引き戸タイプですが、神戸三宮寄り先端(6号車3番ドア)に限っては片側のみ二重引き戸タイプとなっていました。また、6号車のホームドアは全体的に5号車側へ寄っているため、6-5号車連結部のみ非常脱出ドアがありません。これらの構造は車種によるドア位置の違いを考慮したものだと思われます[2]直通運転で乗り入れる山陽5000系は阪神車より車体長が長いことなど。

(2)1番線のみ4両編成に対応?

2・3番線は4両編成の発着に非対応
筐体がセットバックされていない
1番線のみ4両編成の発着に対応
乗務員出入りのため筐体がセットバックされている

4両編成の普通列車は原則として4番線を使用しますが、1番線のみ前から2-3両目(5-4号車)連結部の筐体が4両編成の乗務員出入りスペース確保のためホーム内側にセットバックされています。このことから、1番線のみ4両編成と6両編成の両方に対応していることが分かります[3]実際、駅改良工事の関係で一部の普通列車が1番線発着に変更された事例あり(2023年12月22日の深夜)。

1.3 4番線の仕様

4番線のホームドアは4両分のみ設置
残りの範囲には固定柵が設置されている

4番線は4両編成の普通列車専用ホームのため、ホームドアも4両分のみ設置されました。また、発着する車種が限られており車種によるドア位置のずれも少ないことから、1~3番線とは違ってすべての開口部が一重引き戸となっています。

なお、元々は降車専用ホームだった反対側のホームは2023年12月5日をもって閉鎖され、ホームドアも設置されませんでした[4]現在は緊急用ホーム扱いになっている模様。

2 ホームドアの開閉方式

同駅のホームドア開閉方式は以下の通りです。

  • 開扉:自動(定位置停止検知・両数検知)
  • 閉扉:車掌手動操作

阪神のホームドアは、地上側の各種センサによって列車の定位置停止と編成両数を検知して自動開扉するシステムが採用されています。一方、閉扉は車掌が直接操作盤のボタンを押す方式です。

列車検知・自動開扉システムの詳細は別記事にまとめています。

定位置停止検知センサ

各種センサの仕様は神戸三宮駅1・3番線と特に変わっていませんが、前述の通り、2・3番線は6両編成のみ、4番線は4両編成のみ対応なので両数判定センサは設けられていません(1番線のみ設置)。

両側にホームがある2・3番線に到着した列車は、降車ホーム側→乗車ホーム側の順にドアを開扉しますが、ホームドアは定位置停止検知により両側が同時に自動開扉します。

手前左:乗降表示灯
奥:定位置表示灯と開閉表示灯

神戸三宮駅1・3番線からの変更点の一つは、ホームドアの開閉状態などを表示する乗務員表示灯が色のみで表示されるようになった点です[5]神戸三宮駅では漢字一文字で「開」「閉」などと表示されていた。。これについては神戸三宮駅も後に同じ仕様へと改修されました。また、グループ企業でもある阪急電鉄のホームドアと同じく「乗降検知機能」が追加され(乗降検知中はチャイム鳴動・表示灯の黄色[]が消灯)、車掌が閉扉操作を行うタイミングをアシストしています。

3 おわりに

同じ梅田にターミナル駅を置く阪急と比べてもホームが非常に狭く危険だった同駅ですが、改良工事によるホーム拡張とホームドア設置によって安全性が大幅に向上しました。そして一連の改良工事は2024年3月16日を以て完了しています。

神戸三宮駅1・3番線、大阪梅田駅、そして車両ドア位置が大きく異なる近鉄車に対応するため「昇降ロープ式ホーム柵」が整備された神戸三宮駅2番線と、ホームドア設置駅数はまだ少ないなのに形態はバラバラなのが趣味的に面白いところです。

出典・参考文献

脚柱

References
1 2・3番線は乗車ホームと降車ホームが分かれているため。
2 直通運転で乗り入れる山陽5000系は阪神車より車体長が長いことなど。
3 実際、駅改良工事の関係で一部の普通列車が1番線発着に変更された事例あり(2023年12月22日の深夜)。
4 現在は緊急用ホーム扱いになっている模様。
5 神戸三宮駅では漢字一文字で「開」「閉」などと表示されていた。

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