神戸市営地下鉄 西神・山手線のホームドア:地上完結型連携システムによる開閉制御(現在の方式)

神戸市営地下鉄西神・山手線および北神線では、2017年度に三宮駅でホームドアが先行導入され、2021年度からはその他の各駅でも本格導入が始まりました。2022年3月以降の現時点における開閉方式は、車両側との通信を必要とせず、地上側設備のみでホームドア開閉を自動化できる「地上完結型連携システム」で統一されています。

1 QRコード式からの方針転換で採用

三宮駅ホームドアの当初の開閉方式は車掌による手動操作でしたが、これでは車掌の業務負担が大きく停車時間も増えてしまいます。そこで2020年3月、都営地下鉄浅草線などで実績のあるQRコードを用いたホームドア制御システムを導入することで開閉の全自動化を実現しました。しかし、ホームドアが開き始めるまでのタイムラグが大きいことから、かえって乗降時間の増大に繋がっていたそうです。

こうした事情から、他駅での本格導入にあたっては方針を転換し、より応答性能に優れている「地上完結型連携システム」が採用されました。そして三宮駅も2022年3月に同じ方式へと改修されたことで、QRコード式は同線における運用を終了しています。

ただし、タイムラグの少ない同方式であっても1駅あたりの停車時間は数秒ずつ増加してしまうことから、2022年6月10日には16年ぶりとなるダイヤ改正が実施されました。これにより全線(新神戸~西神中央間)の所要時間は約75秒長くなっています。

2 システムの仕組み

2.1 各種センサの概要

この方式は、地上側に設置された3種類のセンサによって列車の定位置停止やドア開閉を検知し、それに追従してホームドアを自動開閉させます。車掌によるホームドアの操作が必要ない点はQRコード式と同じですが、QRコードではなく車両そのものを検知している点が異なります。

(1)停止位置検知用センサ

停止位置検知用センサ

各ホームにつき1箇所の車両連結部に停止位置検知用センサが設けられています。同じ方式を採用している他の事業者では冗長性確保のためにセンサを2系統設けていますが、同線においては写真のようにセンサが1系統のみで、もう一方の台座には何も取り付けられていません。

(2)在線検知用センサ

在線検知用センサ

在線検知用センサは天井ではなく筐体の線路側に取り付けられており、ホーム両端の2箇所で車両を検知すれば列車がホーム内に収まっていると判定しています。

(3)車両ドア開閉検知用センサ

車両ドア開閉検知用センサ(センサが2系統の方)
車両ドア開閉検知用センサ(センサが1系統の方)

各ホームにつき2箇所の車両ドア上部に車両ドア開閉検知センサが設けられています。一方はセンサが2系統あるのに対して、もう一方は停止位置検知用センサと同じく1系統しか設けられていません。他事業者での実績で得られた信頼性ゆえの措置なのでしょうか?

2.2 各種センサの配置

新長田駅の各種センサ配置図

各種センサの配置例として、三宮駅以外では最初の設置駅となった新長田駅における配置図を示します。車両ドア開閉検知センサは駅構造の兼ね合いかホームによって異なる場合もありますが、基本的には各駅ともに同じような配置です。

3 おわりに

同線のホームドア整備は2023年度中に完了する計画で、同年度中には新型車両6000形の導入も完了します。その6000形はトランスポンダを用いた送受信で車両ドアとホームドアを開閉連携する方式に対応しており、停止位置直下に設置される有電源ATO地上子の設置工事に関してメーカーとの随意契約がすでに結ばれています。

このことから、すべての既存車両が引退すればトランスポンダ式連携への切り替えが行われ、現在の地上完結型システムも運用を終了する可能性が高いと考えられます。まだ確実とは言えませんが、そうなればこのシステムもQRコード式と同じく短命に終わるかもしれません。

出典・参考文献

脚注

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