2025年 ホームドア関連のトピックスを振り返る

ご挨拶が大変遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。2026年も当Webサイトをよろしくお願いいたします。
2025年も鉄道駅のホームドアに関するさまざまな出来事がありました。今回はその中でも個人的にインパクトを感じた話題を振り返ってみたいと思います。
目次
1 2025年に新設された注目のホームドア
1.1 JR東日本 根岸線石川町駅など

まずは2025年内に新設されたホームドアの中から、技術的・趣味的に注目したい4駅を紹介します。
JR根岸線の石川町駅では、2025年4月5日に大幅な軽量化を図った「スマートホームドア」の稼働が開始されました。スマートホームドアは既に首都圏在来線の各駅で多くの採用実績がありますが、同駅では編成両数によって一部の車両ドア位置が異なることから、当該箇所に限りスマートホームドアとしては初となる多段式大開口タイプが採用されています。
二重引き戸式ホームドアは車両ドア位置の課題解消に役立つ一方、構造が複雑で重量も増えてしまう点がデメリットです。よって、スマートホームドアでも二重引き戸構造が可能になったことは、ホーム補強工事に要する費用・期間の低減に大きく貢献していることと思われます。本タイプはその後も根岸線内の残るホームドア未整備駅で設置が進んでおり、他線区への展開も期待できます。
1.2 JR東日本 横浜線東神奈川駅など

写真中央付近のみ従来型、その前後はスリットタイプ
JR京浜東北線と横浜線が合流する東神奈川駅の2・3番線では、2025年度に従来型よりも軽量な「スリットフレームホームドア」が整備されました。スリットフレームホームドアは2024年12月に初採用された南武線分倍河原駅などに次いで3駅目の採用ですが、前述の石川町駅と同じく、同駅も編成両数によって一部の車両ドア位置が異なることから、当該箇所に限り従来型の多段式大開口ホームドアを組み合わせた設置方法が特徴です。
スリットフレームホームドアは長尺や多段式の扉に対応していない一方、従来型ホームドアと互換性があることを活かして採用されたこの設置方法。従来型との境界となる開口部は左右で扉のタイプが異なるユニークな見た目となりました。同年11月には中央・総武線各駅停車の西船橋駅2・3番線でも類似した設置方法が採用され、今後ホームドアが整備される駅、特に特急型車両と一般型車両が混在する線区ではさらに複雑な組み合わせが登場しそうです。
1.3 近畿日本鉄道 鶴橋駅2番線

近畿日本鉄道(近鉄)の大阪線と奈良線が乗り入れる鶴橋駅では、2025年3月30日に大阪線下りホームの2番線でさまざまな車両ドア位置に対応できる「昇降ロープ式ホームドア」(以下:昇降式ホーム柵)の稼働が開始されました。なお、2024年5月ごろから2番線の後部約2両分で先行運用が行われていましたが、本稿では2025年新設のホームドアとして扱わせていただきます。
近鉄における昇降式ホーム柵の導入は2018年度の大阪阿部野橋駅以来2例目ですが、仕様やデザインは大きく変化。グレーとブラックを基調としたシックなデザイン、ポストとダクトの一体感を高めた造形、最低限の黄色部分を除いて無彩色としたロープなど、駅空間との調和と機能性の両立を図っており、2025年度のグッドデザイン賞も受賞しました。従来の仮設設備感を払拭した高いデザイン性は、国内における昇降式ホーム柵本格導入から10年目[1]2016年3月にJR西日本高槻駅で初の本格導入。という節目の新たなフェーズに入ったことを感じさせます。
1.4 近畿日本鉄道 鶴橋駅3番線など

前述の鶴橋駅2番線は昇降式ホーム柵が採用されたのに対して、奈良線上りホームの3番線は駅構造の都合で昇降式ホーム柵を設置できませんでした。そのため、通常のホームドアを車両から離して設置することで車両ドア位置の違いに関係なく乗降を可能としました。
同様の設置方法は東急電鉄田園都市線の宮前平駅などで前例があるものの、同駅は柱や階段といった既存の駅構造もホームドアの一部にしてしまうという、これまでの常識を覆す前代未聞のアクロバットすぎる配置で大きな話題となりました。同年12月には近鉄名古屋駅3番線でも同様の設置方法が採用され、これが近鉄のお家芸になっていくのでしょうか?
2 ピックアップ:QRコード式制御システム さらなる拡大へ

2枚のうち1枚は車体に貼付
デンソーウェーブと東京都交通局が共同開発した「QRコードを用いたホームドア制御システム」は、簡単・低コストに列車の編成両数やドア数を判別できる画期的な技術として、メディアでもたびたび取り上げられています。しかしその知名度とは裏腹に、トランスポンダ式やセンサ式など他の開閉制御システムと比べれば採用事例がまだまだ少ないのが現実。2025年末時点で運用されているのは、都営地下鉄浅草線・京急電鉄・小田急電鉄・JR東海(在来線)の4社局のみです[2]かつては神戸市営地下鉄西神・山手線三宮駅でも運用されていたものの、現在はセンサ式に更新。。
QRコード式システムの課題の一つに “片開きドアへの対応” があります。従来のシステムでは、両開きドアの左右に貼付した2枚のQRコードが同じ方向に移動すれば列車自体が移動、別々の方向に移動すれば車両ドアが開閉と判別していました。しかしこの方式では、片開きドアの車両に1枚だけQRコードを貼っても、列車自体の移動と車両ドアの開閉を判別することができません。
JR東海はこの課題を解消するため、2枚のQRコードのうち1枚をドアではなく車体に貼付し、2枚の相対距離で車両ドアの開閉を判別する実証試験を2025年5月上旬から中央本線金山駅で開始。これに伴い、特急「しなの」に用いられる特急型車両383系の一部にQRコードが貼付されました。この試験で得られた成果が、中央本線名古屋エリアへの本格的なホームドア整備、そして383系の後継として製造予定の新型車両385系に受け継がれることでしょう。

グリーンの車体に大きく目立つ
一方、JR東日本は2025年10月、2028年度末に東北新幹線東京駅でホームドアを整備すると発表。その中で、車両ドアの位置が異なる各形式に対応したレイアウトとすること、そして編成の判別方法にはQRコードの利用を検討していることが明らかとなりました。ただし、ニュースリリースの文面から推測すると、QRコードはあくまでも編成判別のみに用いられ、車両ドアとホームドアの開閉連携は別のシステムによって行われる模様です。
そして同年12月末ごろより、E5系新幹線の一部編成においてQRコードを貼付された姿が続々と目撃されるようになりました。現時点では1・8・9号車の車体側面にそれぞれ2か所ずつ貼付されており、ドアには貼付されていないことから、やはり車両ドア開閉検知ではなく編成判別が目的なのでしょう。近いうちにいずれかの駅で検証試験が行われるものと思われます。
東日本と東海で始まろうとしているQRコード式システムのさらなる拡大ですが、どちらもQRコードを車体に直接貼り付ける方法であることから、ドアのガラス部分に貼付した場合よりもさらに目立ってしまいます。今後本格的な採用に至った場合、このような “車両デザインへの影響” という別の課題にどう折り合いをつけるのかも気になるところです。
3 その他の主な話題
3.1 JR東日本 2路線でホームドア全駅設置を達成

2025年にホームドア全駅整備を達成した路線は、ともに東京都多摩地方と神奈川県を結ぶJR東日本の2路線でした。
- JR東日本 南武線
- JR東日本 横浜線
南武線は2025年3月の武蔵中原駅2・3番線を以て全26駅59ホームで整備が完了し、直後の2025年3月15日ダイヤ改正からはワンマン運転も開始されました。横浜線は2025年12月の中山駅2番線を以て全20駅45ホームで整備が完了し、今後は直通する京浜東北・根岸線の東神奈川駅~大船駅間でも2025年度中のホームドア整備完了が予定されており、2026年3月14日ダイヤ改正から直通区間を含めてワンマン運転も開始される予定です。
ホームドア全駅整備は喜ばしい反面、南武線ではワンマン運転開始も相まってドア開閉に要する時間が増加し、慢性的な遅延に繋がっているという課題も発生しているようです。横浜線ではこの課題点を無事克服できるのでしょうか?
3.2 大手私鉄の子会社合併でホームドア整備率はどう変化?
2025年4月1日、京成グループの新京成電鉄と、南海グループの泉北高速鉄道は、それぞれの親会社である京成電鉄と南海電気鉄道に吸収合併されました。2025年の鉄道界全体で大きなトピックだった東西2つの大手私鉄による子会社合併は、ホームドア整備率という観点でどのような影響を及ぼしたのでしょうか。
合併の影響で整備率がアップしたのは南海電鉄。泉北高速鉄道はもともと路線の駅総数が少なく、その内の和泉中央駅にホームドアが整備済みだったことから、合併後のホームドア整備率は1%に満たないもののわずかに増加しました。
逆に合併の影響で整備率がダウンしてしまったのが京成電鉄。新京成電鉄は合併時点でホームドア設置駅がゼロだったことから、合併後のホームドア整備率は2%ほど減少しました。
3.3 東急電鉄 どうなる池多摩線の固定柵とホームドア

東急電鉄の池上線と東急多摩川線(通称:池多摩線)は都心ながら3両編成で運行されるローカルな路線で、各駅にはワンマン運転を行うための安全対策としてセンサー付固定式ホーム柵が設置されています。2025年はそんな池多摩線において初となる固定式ホーム柵からホームドアへの更新が池上線五反田駅で行われ、2025年3月20日に稼働が開始されました。また、蒲田駅についても時期は未定ながら、今後の大規模改良工事に併せて整備を予定しているとのことです。
ここで気になるのが、ついに第一期整備事業が認可された新空港線(蒲蒲線)計画の存在です。新空港線の第一期整備区間は、東急多摩川線矢口渡駅から蒲田駅間を地下化し、さらに京急蒲田駅付近の蒲田新駅(仮称)を繋ぐもので、完成時には現行の3両編成に加えて東横線から乗り入れる8両編成も運行される計画です。しかし、池多摩線の3両編成は18m3ドアなのに対して東横線の8両編成は20m4ドア車。現在の固定式ホーム柵や通常のホームドアではドア位置の違いに対応できないでしょう。
昇降式ホーム柵のようなドア位置の違いに対応できるホームドアを設置するのか、はたまた池多摩線の3両編成も20m4ドア車に置き換えるのか、もしそうするなら五反田駅に設置されたホームドア(18m3ドア車仕様)はどうするのか等、多くの疑問が浮かびます。新空港線の開業は早くても2040年ごろの予定なので、ホームドアについてあれこれ考えるのは時期尚早かもしれませんが、動向が注目されます。
4 おわりに
2025年はこの他にも、東武スカイツリーラインの緩行線ホーム(北千住駅~北越谷駅間)でホームドア全駅整備が完了したり、阪神電気鉄道で京三製作所の新型軽量ホームドアが採用されるなどの出来事がありました。また、東急大井町線の新型車両6020系50番台に落書きのようなスプレー跡が目撃され、それはホームドアのセンサが車体を検知しやすくなるよう塗布したものだと判明したことも大きな話題となりました。
そして今年の注目は、去年もここで名前を挙げたJR東日本の中央線快速系統でしょう。結局2025年内のホームドア設置開始はなりませんでしたが、2026年3月ダイヤ改正ではホームドア開閉時間を考慮したダイヤに見直され、車両ドア数が異なる211系の立川駅乗り入れも廃止されます。武蔵境駅などでは基礎工事が大詰めを迎えており、いよいよ今年こそは一気に設置が進みそうです。
当サイトは引き続きホームドア関連の話題を中心としたい一方、管理者の都合により取材・更新の頻度はさらに低下してしまう見込みです。その代わりではないですが、2月末ごろを目処に新たなジャンルの特集を開始したいと考えています。
改めまして、2026年も当サイトをよろしくお願いいたします。
出典・参考文献
- 在来線におけるQRコードを利用したホーム可動柵開閉システム改良に向けた実証試験について ~対応車両の拡大~|JR東海
- 新幹線東京駅にホームドアを導入します:JR東日本
- 東急電鉄株式会社 鉄道駅バリアフリーに関する整備計画 | 東京都都市整備局
- 新空港線整備に向けた速達性向上計画の認定を受けました|東急電鉄株式会社
- 2026年3月ダイヤ改正について:JR東日本八王子支社

