都営地下鉄 大江戸線のホームドア:無線式連携システムによる開閉制御
都営地下鉄大江戸線では、2011年度から2013年度にかけて全38駅でホームドアの整備が完了しています。同線のホームドア開閉方式には、簡易的な無線通信で車両ドアとホームドアの開閉連携を行う「無線式ホームドア連携システム」が初めて採用されており、三田線で採用されたトランスポンダ式連携と比べて導入に掛かる工期・費用を抑えることができました。
目次
1 無線式ホームドア連携システム導入の経緯
大江戸線は急曲線・急勾配に強い鉄輪式リニアモーター方式を採用し、1991年に第一期区間が開業、その後2000年までに全線が開業しました。ホームドア未設置かつ8両編成という長編成でありながら、開業当初からワンマン運転およびATO(自動列車運転装置)による自動運転が行われており、ATOの制御に必要な距離情報等の送受信にはループコイル方式が採用されています。
一方、2000年にホームドア導入およびワンマン運転・ATO運転を開始した三田線では、ATO制御情報の送受信にトランスポンダ方式が採用されました。また、ATO装置にはホームドア制御に必要な機能も備わっておりおり、車両側の車上子と停止位置直下の地上子がピッタリ重なると車両ドアとホームドアの開閉連携が可能になります。

中央の細長い装置が停止位置直下の有電源地上子
両側の小さな装置が距離情報を送信する無電源地上子
その後、大江戸線でもホームドアの導入が決定しますが、三田線と違ってホームドア制御に必要な機能のない既存のATO装置を更新・改修するには多くの時間とコストが掛かってしまいます。そこで、大江戸線においてはATO装置の改修を行わず、車両ドアとホームドアの開閉連携は別のシステムによって行うことになりました。こうして採用されたのが、日本信号が開発した新たな開閉方式「無線式ホームドア連携システム」です。
ちなみに、もう一つの課題としてATO停止精度がホームドアを前提としていない点もありましたが[1]三田線は±350mm、大江戸線は±500mm。、これはホームドア開口幅を三田線より広げることで解決しています。なお、大江戸線はホームドア本体のメーカーも日本信号です。
2 システムの仕組み
2.1 概要

このシステムの特徴は、LF帯(長波)とUHF帯(極超短波)という2種類の電波を使用している点です。その理由は、ドア開閉情報などの基本情報を送受信するUHF帯無線とは別に、ごく狭い範囲のみに伝搬する特性があるLF帯無線により車両とホームドアの関係を確実に結びつけることで、隣接するホーム同士で無線が混信してしまうのを防ぐためです。
列車進入時における無線連携式の基本動作は以下の通りです。
- 車両前面を測定して列車の定位置停止を検知
- LF帯無線でホーム別の駅情報を車上へ送信し、受信した情報を元にUHFチャンネルを切り替え
- UHF帯無線でドア開閉情報などを送受信する
2.2 2Dセンサによる定位置停止検知

トランスポンダ式連携の場合は地上子と車上子が重なっているか否かで列車の定位置停止を検知しますが、本方式では地上側に設けた「停止位置センサ」がその役目を担います。2Dセンサが冗長性確保のため2基設けられており、車両前面までの距離を測定します。
2.3 地上伝送装置・車上伝送装置

地上側の無線アンテナは停止位置付近のホームドア筐体線路側に設けられています。設置個所は基本的に進行方向前部側のみです(折り返し可能駅等では両側に設置)。

定位置停止情報やドア開閉情報を送受信する車両側のUHF帯アンテナは運転台の上部に設けられています。
一方、ホーム別の駅情報を受信するLF帯アンテナは受信範囲が狭いため、乗務員室左右の窓付近に設置することで地上側アンテナにできるだけ近づけています。アンテナ本体を運転台の配色に合わせているのも特徴です。
3 ホームドア表示灯

各駅の停止位置前方には列車の出発時機や閉扉合図を伝達する「出発表示器」と一体となったホームドア関連の表示灯が設けられています。[ホームドア]と書かれた表示灯は定位置範囲内に在線中なおかつホームドアが閉扉状態の際に点灯し、[出発×]と書かれた表示灯は出発進路が開通していない場合に点灯します。
4 ATCとの連動
トランスポンダ式連携の場合は車両ドアとホームドアの両方が閉扉するまで列車が出発できないように制御されています。本方式でもこれと同等の安全性を確保するため、ホームドア開扉中は信号保安装置のATC(自動列車制御装置)を停止現示とすることで列車の出発を抑止しています。
5 おわりに
既存のATO装置を改修することなく車両ドアとホームドアの開閉連携を実現した無線式連携システムは、ホームドア早期設置と導入コストの削減に大きく貢献しました。そして、2018年度にはJR東日本が総武快速線新小岩駅で本方式を初採用し、さらなる低コスト化・汎用性の向上を図った本方式の改良型はJR東日本における今後のスタンダードな開閉方式となる見込みです。
一方、2025年11月現在、大江戸線の各駅ではトランスポンダ地上子の設置が進んでいることから、2027年度に予定されている無線式列車制御システム「CBTC」の導入と合わせてATO装置も従来のループコイル方式からトランスポンダ方式に更新される可能性が高くなっています。今後もホームドア連携は本システムのままで行うのか、それともATO装置の一部に組み込まれてトランスポンダ式に変更されるのか、動向が注目されます。
出典・参考文献
- 都営⼤江⼾線 無線式列⾞制御システムを全線一括受注|日本信号株式会社
- 奥津 佳之「都営12号線のATO設備」『鉄道と電気技術』Vol.6-No.10、日本鉄道電気技術協会、1995年、p11-14
- 立石 正弘「都営地下鉄大江戸線のホームドア」『R&M : Rolling stock & machinery』2012.2、日本鉄道車両機械技術協会、p18-22
脚注
| ↑1 | 三田線は±350mm、大江戸線は±500mm。 |
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