都営地下鉄 浅草線のホームドア

都営地下鉄浅草線では、2023年度までに交通局が管理する全駅のホームドア整備完了が計画されています。新橋駅・大門駅・三田駅・泉岳寺駅の4駅については、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて2019年度にホームドアが先行整備されました。

各駅のホームドア稼働開始日は以下のとおりです。

  • 新橋駅:2019年10月5日
  • 大門駅:2019年11月16日
  • 三田駅:2019年12月21日
  • 泉岳寺駅3・4番線:2020年1月26日
  • 泉岳寺駅1・2番線:2020年2月9日

浅草線は複数の鉄道事業者と相互直通運転を行っており、編成両数やドア数が異なる様々な車両が乗り入れることがあるため、車両の改修を必要とせず簡単・低コストにホームドアを制御することができるQRコードを用いたホームドア制御システムが採用されています。

1 ホームドアの概要

1.1 共通仕様

タイプ 腰高式
メーカー 日本信号
開閉方式 自動(QRコード式連動)
停止位置 不明(TASCなし)
開口部幅 【推定】3,200mm
寸法 筐体 【推定】高さ1.3m×厚さ0.2m
【推定】高さ1.2m
非常脱出口 開き戸式(ホーム両端部)
安全装置 居残り検知 3Dセンサ・光電センサ
車両ドア間の筐体
車両連結部の筐体

ホームドアのタイプは一般的な腰高式で、メーカーは日本信号です。TASC(定位置停止装置)等の運転支援装置が整備されていないことから、開口幅は推定3,200mmと広めに確保されています。

筐体のホーム側には浅草線のラインカラーであるローズ色の帯がデザインされています。車両ドア間の筐体は左右のドアが互い違いに収められる戸袋一体型、車両連結部にあたる筐体は戸袋分割型です。なお、現在のホーム床面より50mmほど高い位置に設置されているため、床面との間に隙間があります。

2018年より設置が開始された都営新宿線の同メーカー製ホームドアと同じく、車両連結部およびホーム両端部の筐体には非常停止ボタンが内蔵されており、従来の非常停止ボタンは使用停止となりました。

筐体笠木部分の列車接近表示器

笠木部分には「電車がきます」の表示器と列車の進行方向へ順番に点灯するLEDランプが内蔵されています。こちらも新宿線ホームドアと同様の設備で、使えるスペースの有効活用でもある一方、背が低い子どもや車いすの利用者からは見えないため無意味だという意見も聞かれます。

開口部の支障物センサは3Dセンサと2点の光電センサが併用されているようです。センサの開口部を挟んだ向かい側には緑色に点灯する非常開ボタンが設けられています。

8両編成の前部・後部には開き戸式の非常出口が設けられており、泉岳寺駅で京急電鉄の乗務員と交代する際の乗務員出入り口としても使われています。また、ホーム長が長い駅ではホームの最も端部にも設けられています。

実際は「TH」の許容範囲がもっと右側へ続いているものの、扉部分に掛かってしまうため省略されています。

乗務員用の停止位置マーカーは、乗務員扉位置の違いを考慮してか「KN(京成車・北総車)」と「TH(都営車・京急車)」に分けられています。マーカーの下には列車が定位置に停止すると青色に点灯する「停止位置表示灯」や乗務員操作盤などがありますが、同線のホームドアは後述のQRコード式制御システムによって自動開閉されるため、通常は操作盤を使用しての開閉は行われません。

1.2 泉岳寺駅1番線

泉岳寺駅下りホーム
左側:2番線(西馬込方面)
右側:1番線(京急線方面)
2ドア車や6両編成の乗車位置案内があるのは1番線のみ

京急本線との分岐駅である泉岳寺駅は1番線(京急線品川方面)のみ案内サイン類が水色基調となっており、これに合わせる形でホームドアも1番線のみ水色の帯がデザインされました。浅草線の定期列車は8両編成3ドアの車両で統一されているものの、泉岳寺駅には京急線内折り返し列車の京急2100形(2ドア車)や6両編成も発着するため、1番線ホームドアの各開口部にはそれらの案内も掲示されています。

2 ホームドアの開閉方式

2.1 QRコード式制御システムの概要

都営5500形のドアに貼付された新型QRコード「tQR」。スマホなどの一般的なデバイスでは読み取れません。

浅草線は4社(京浜急行電鉄・京成電鉄・北総鉄道・芝山鉄道)と相互直通運転を行っており、臨時列車などで編成両数やドア数が異なる車両も乗り入れることがあるため、それらを判別してホームドアを制御しなければならないことも重要な課題でした。簡単・低コストにこの問題を解決する方法として都交通局がデンソーウェーブと共同で開発したのがQRコードを用いたホームドア制御システムです。

より詳しい開発の経緯などは別記事で紹介しています。

2.2 列車検知の仕組み

このシステムの基本は、車両ドアのガラス部分に貼付されている光の反射などに影響されにくい新型QRコード「tQR」と、それを読み取るホーム側のカメラで構成されています。

(1)定位置停止検知・ドア開閉検知

左右の車両ドアに貼付されている2枚のQRコードは、列車自体が移動している時は同じ方向に移動し、ドアが開閉している時は別々の方向に移動します。このようなQRコードの横方向の動きをカメラが読み取ることで、列車が定位置範囲内に停止したか、ドアを開扉したかなどの状態を検知することができます。

(2)車種判別

QRコードに格納されている車種情報を読み取ることで、ドア数や編成両数の異なるイレギュラーな列車が運行される場合でも、対応した箇所のみのホームドアが自動で開きます。車掌は普段通り車両ドアの開閉操作を行うだけなので特別な操作は必要なく、余計な停車時間の増加を抑えることも可能になりました。

2.3 QRコードの貼付位置

QRコードは都営浅草線の所有車両および、相互直通運転を行う京急電鉄・京成電鉄・北総鉄道の車両も含めて貼付されています。ただし京成車は直通運転に使用される8両編成の一般型車両に限り、自社線内のみを走行するその他の車両は対象外となりました。QRコードは全てのドアにある訳ではなく、編成両数ごとに決まった号車の3番ドア(成田空港方)のみに貼り付けられています。

2.4 QRコード読み取りカメラユニット

大門駅2番線の場合、QRコード読み取りカメラは2・3・6号車の3箇所に設置されています。

車両ドアのQRコードを読み取るカメラは3基で1ユニットとなっており、そのユニットが1ホームにつき3箇所設置されています。前述の通り、QRコードは1編成あたり何両かの号車に貼付されており、読み取りカメラも複数個所でそれを検知して多数決で判定を行うため、一定以上の冗長性が確保されています。

2.5 定位置停止検知センサ

前述の通り、QRコードの移動方向のみで列車の到着→ドア開閉→出発を全て検知することは出来るそうですが、万が一の誤検知などで意図せぬホームドアの開扉が起きないように、車両の連結部を測定して列車の定位置停止を検知する3Dセンサを併用しています。

2.6 各種機器の配置とQRコード貼付位置の関係

新橋駅におけるQRコード読み取りカメラ・定位置停止検知センサの配置は上図の通りです。各種機器は8両・6両のどちらでも読み取りが可能な位置に設置されています。ホームドアが設置された各駅では、原則として6両編成の停止位置が後部を8両編成に合わせるように変更されました。

2.7 浅草線と京急で異なる開閉動作

QRコード式制御システムは直通する京浜急行電鉄でも採用されていますが、ホームドアの開閉動作は両者で以下のように異なっています。

  • 浅草線:ホームドアが車両ドアより先に開く
  • 京急:ホームドアが車両ドアより遅れて開く

すなわち、浅草線の仕様は列車の定位置停止と車種情報が認識できた時点でホームドアを開けるのに対し、京急の仕様はQRコードの動きで車両ドアが開き始めたことを検知してからホームドアを開けるという大きな違いがあります。なお、泉岳寺駅については全ホームが浅草線の仕様となっています。

ホームドアは旅客のスムーズな乗降のために車両ドアより先に開くのが通例で、他方式の制御システムでも列車の定位置停止を検知すればすぐに自動開扉するのが一般的です。なぜ京急は車両ドア開扉を検知してからホームドアを開扉するような仕様としているのか、これについては別記事で考察しています。

3 ホームドア表示灯・停止位置表示灯

表示内容の推移。ホームドア閉扉で再び②となり、列車が定位置を離れると①へと戻ります。
「停止位置表示灯」は操作盤付近にもあるので、車掌用の表示器は「ホームドア表示灯」のみ。
泉岳寺駅1番線の京急仕様ホームドア表示器。

運転士用と車掌用それぞれに、列車の出発時機や閉扉合図を伝達する「出発表示器」と一体となったホームドア関連の表示灯が設けられています。「停止位置表示灯」は列車が定位置範囲内に在線中点灯し、「ホームドア表示灯」は定位置範囲内に在線中なおかつホームドアが閉扉状態の際に点灯します。

泉岳寺駅1・4番線には、京急の乗務員向けとして京急線内仕様のホームドア表示器も併設されています。ただし京急線内とは異なり、列車が定位置範囲内に在線している時以外はホームドア表示灯が消灯します。

4 C-ATSとの連動

ホームドアが開扉している間は、運転保安装置C-ATSが「A0」信号を出力することで車両の力行回路がカットされ、列車が出発できないようにしています。なお、京急線内における「NC」信号と名称こそ異なりますが基本的には同じもので、本来「A0」および「NC」信号は停止信号手前で停止した際に出される信号です。

5 おわりに

冒頭で述べた通り、今後は2023年度までに交通局が管理する全駅でホームドア整備が完了する計画です。押上駅については同駅を管轄する京成電鉄が整備を担当しますが、京成はQRコード式ではないホームドア制御システムを採用しているため、押上駅がどのような運用方式になるのか注目されます。

出典・参考文献

脚注

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