京急電鉄のホームドア:羽田空港第3ターミナル駅のタイプ
タイプ | 腰高式 | |
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メーカー | ナブテスコ | |
開閉方式 | 自動(QRコード式連動) | |
停止位置許容範囲 | ±700mm(TASCなし) | |
開口部幅 | 2,800mm | |
非常脱出ドア | 開き戸式(各号車連結部) | |
支障物検知センサ | 光電センサ |
2010年10月21日、羽田空港新国際線ターミナルの供用開始にあわせて、京浜急行電鉄空港線の羽田空港国際線ターミナル駅[1]羽田空港国際線ターミナル駅は2020年3月13日までの駅名。が開業しました。ホームにはターミナルビルの荷物用カートをそのまま持ち込むことができるため、カートが線路へ転落する事故を防ぐ目的で、開業当初より同社初となるホームドアが設置されています。
なお、このホームドアは18m3ドア車に合わせた構造のため、京急の現役車両で唯一の4ドア車だった800形は同駅開業を前に空港線乗り入れ運用から撤退しました。
目次
1 ホームドアの仕様
ホームドアのタイプは一般的な腰高式で、メーカーはナブテスコです。2008年開業の横浜市営地下鉄4号線グリーンラインに設置されたホームドアと外観の共通点が多いものの、扉に透過部はありません。開口幅は当時としてはかなり広い2,800mmで、TASC(定位置停止装置)等の運転支援装置が未整備のため停止位置許容範囲は±700mmが確保されています。
ただし、同駅には京急の自社形式に加えて東京都交通局・京成電鉄・北総鉄道の車両も乗り入れ、ドア同士の間隔は車種によってかなりの差があります[2]例として、同じ京急車の1500形と600形でも一部のドアは40cm近くも異なる。。そのため、停止範囲内に収まっていても車種によっては車両ドアが筐体と被ってしまう可能性があることを考慮してか、開口部の線路側には赤と黄色のストライプで注意が促されています。
車両ドア間の筐体は左右のドアが互い違いに収められる戸袋一体型、車両連結部にあたる筐体は戸袋分離型で、分離型同士の間には開き戸式の非常脱出ドアが設けられています。この戸袋スペースの関係で、各号車2番ドアの開口は左右の扉幅が同じなのに対して、1・3番ドアの開口は左右の扉幅が僅かに異なっています。
各開口の支障物センサは光電センサです。独立したセンサボックスに組み込まれている3基に加えて、互い違いに収納されるドアがホーム側となる開口部では死角が生まれるため、本体側にも1基が内蔵されています。各編成両数の前部・後部にあたる付近は、乗務員出入りスペース確保のため筐体がホーム内側にセットバックされていることから、センサが8~9箇所もあります。
乗務員操作盤は筐体に内蔵されていますが、現在は後述のようにQRコード式制御システム導入で開閉が全自動化されたため基本的に使用されません。
運転士用と車掌用それぞれに停止位置の目安となるマーカーが設けられており、先頭車の車体長が50cm長い2000形(2018年に引退)専用のマーカーは2019年時点でも残っていました。マーカーの黄色い部分には「5300 ✕」「9100 ✕」と書かれているため、東京都交通局5300形と北総鉄道9100形は他形式より許容範囲が制限されている(いた?)のだと思われます。なぜこのような制約が生まれたのか、また後述の停止位置検知方式変更が行われた現在も制限が残っているのかは不明です。
2 ホームドアの開閉方式
2.1 開業当初の開閉方式
開業当時の同駅のホームドアは車掌が手動で開閉操作を行う方式でした。ただし、停止位置や編成両数の検知およびそれらの切り替えについては自動化されている、当時としては先進的なシステムでした。
(1)タグによるドア数の判別
同駅に2ドア車の京急2100形が入線した際は、車両側にドアが無い各号車中央のホームドアを締め切る必要があります。そのため、車両に設置されている車両情報が書き込まれたタグをホーム手前の車種検出装置が読み取ることで、ホームドアの開閉箇所を自動で決定していました。
(2)停止位置・編成両数の検知
同駅には8両・6両・4両と様々な編成両数が発着するため、各編成両数の前部・後部を挟み込むように設置されたセンサが車両前面を測定することで、列車の編成両数と定位置停止を検知していました。都営5300形と北総9100形のみ許容範囲が狭かったのは、この2形式の特徴的な前面形状が原因なのかもしれません。
(3)車掌手動操作による開閉
上記のシステムが定位置停止を検知するとホームドアが操作可能になり、開扉時は車掌がホームドア→車両ドアの順に、閉扉時は車両ドア→ホームドアの順に操作していました。車掌の慣れもあってか、開業から年月が経つと車両ドアとホームドアをほぼ同時に操作することも多くなりました。
ホームドアの開け忘れを防止するため、列車が定位置に停止すると操作盤付近から「ホーム柵、先行開扉」という音声が流れていました。
2.2 QRコード式制御システムの導入
同駅は京急線内および直通各社の中で唯一のホームドア設置駅という状況がしばらく続きましたが、徐々に各社でもホームドア整備について具体的な計画が立てられ始めます。そうした中で、東京都交通局は車両側の改修を必要とせずに編成両数・ドア数の判別と開閉自動化を容易に行う方法としてQRコードを用いたホームドア制御システムを考案しました。
このシステムを開発元である都営地下鉄よりも先に本格導入したのが同駅でした。2018年10月頃より同駅のホームドアにシステムが適用され、車掌が車両ドアを操作するとホームドアも追従して自動開閉するようになりました。京急線は日常的に様々な編成両数やドア数の異なる車両が入り乱れているため、浅草線以上にこのシステムのメリットが存分に発揮されています。
システムの概要は別記事で紹介しています。
新システムの導入によって、列車の編成両数・ドア数はQRコードの車種情報から、定位置停止は車両連結部を測定する方式にそれぞれ変更されました。そのため従来のシステムに使用されていた車種検出装置と車両前面を測定する旧センサは役目を終え、いずれも既に撤去されたようです。
2.3 各種機器の配置とQRコード貼付位置の関係
同駅におけるQRコード読み取りカメラ・定位置停止検知センサの配置は上図の通りです。QRコード読み取りカメラは1ホームにつき4箇所あり、最も短い4両編成でも2箇所、6・8両編成なら4箇所でQRコードを認識できるため、一定以上の冗長性が確保されています。
3 おわりに
世界初のQRコードを用いたホームドア制御システムは、奇遇にも日本の玄関口である同駅が初の本格導入駅となりました。そして実運用での安定稼働が確認されたためか、同年度より本格的に整備が始まった京急線内各駅のホームドアでもQRコード式システムが採用されています。