京急電鉄のホームドア:金沢文庫駅 縦列停車への対応

京急電鉄本線の金沢文庫駅は、隣接する車両基地(金沢検車区)への入出区や、連結・切り離し作業が頻繁に行われる、列車運行拠点の一つとして重要な駅です。この駅では深夜帯の車両停泊時、1つのホームに2本の列車を縦並びで停車させる、いわゆる「縦列停車」が行われています。

同駅では2023年度にホームドアが整備され、一部の本体構造や制御システムや縦列停車に対応するための特殊仕様となりました。縦列停車に対応したホームドアは全国でも初めてだと思われます。

1 上りホームの縦列停車

上りホーム3番線で行われている縦列停車

上りホームでは3番線にて6両編成2本が縦列停車で夜間停泊を行います。ホーム前方(品川方)の編成はホームドア中心と合った位置に停車し、後方(浦賀方)の編成は前側の編成と少し距離を開けてホームドア中心とずれた位置に停車しています。

品川方の編成はそのままの位置から出発

そして品川方の編成はそのままの停止位置で客扱いを行い、4時50分に上り始発列車の 普通 品川行き として出発します。

京急のホームドアは車両ドアに貼付したQRコードを用いて制御されますが、この際も車両ドアが開閉すると前6両分のみのホームドアが自動開閉していました。正規の6両停止位置とは異なる位置であっても開閉できる柔軟なシステムになっているようです。

浦賀方の編成は正規の6両停止位置まで移動

品川方の編成が出発後、浦賀方の編成は正規の6両停止位置まで2両分前進してから05時05分の 普通 品川行き としてドアを開扉します。よってこれ以降は通常の6両編成発着時と同じ扱いとなります。

このように、上りホームはホームドア中心とずれている側の編成がそのままの位置でドアを開けることがありません。これが次に紹介する下りホームと違って二重引き戸式大開口タイプが採用されなかった理由でしょう。

2 下りホームの縦列停車

下りホーム浦賀方6両分の二重引き戸式大開口ホームドア

一方、下りホームの停泊は日によって縦列停車を行う番線および客扱いのパターンが異なっているようです。そのため当記事では、筆者が取材に訪れた日に行われていた「土休日ダイヤ・1番線で縦列停車・浦賀方で客扱い」のパターンを軸として紹介します。

(1)土休日ダイヤ・1番線で縦列停車・浦賀方で客扱いのパターン

浦賀方の編成はそのままの位置から出発

1番線にて6両編成2本が縦列停車をした状態で一夜を明かし、一方の2番線には4時53分ごろに回送列車として出発する編成が停泊しています[1]2番線の編成は同駅から逗子・葉山駅へ回送され、折り返し逗子線の上り始発列車となる。

2編成はギリギリまで距離を詰めているとはいえ、浦賀方の編成はホームドア中心から少しずれた状態で停まっています。そして翌朝はそのままの停止位置で客扱いを行うため、ホームドアとのずれが大きくてもドアを開けられるように、浦賀方6両分を二重引き戸式大開口ホームドアとしているのが下りホーム最大の特徴です。

上りホームと同じくQRコード式システムによるホームドア自動開閉にも対応していました。

品川方の編成は正規の6両停止位置まで移動

そして浦賀方の編成が4時56分に下り始発列車の 普通 浦賀行き として出発すると、品川方の編成は正規の6両停止位置まで2両分前進してから5時14分発の 普通 浦賀行き としてドアを開扉します。

なお、取材時は正規の6両停止位置に停止しても停止範囲表示灯が点灯しなかったため、車掌が手動操作でホームドアを開閉していました。これが不具合なのか仕様なのかは不明です。

(2)その他のパターン

銃列停車を行うのが2番線になったり、最初に浦賀方の編成が回送列車として出発し、品川方の編成がそのままの位置から下り始発列車として出発するパターンもあるようです。なお、この場合もホームドア中心とずれて停まるのは浦賀方の編成なので、品川方の編成は大開口ホームドアでなくとも客扱いを行えます。

つまり、下りホームは縦列停車の前後どちらに停車している場合も客扱いを行う可能性があるため、ホーム半分を大開口ホームドアにする必要があったのだと思われます。システム的には前後同時の客扱いもできるのかもしれません。

3 おわりに

現代は縦列停車自体が珍しい取り扱いとなっている中、1日1回、夜間停泊のみで行われている同駅の縦列停車はホームドア設置を機に取り止められていてもおかしくありませんでした。しかしながら、わざわざ大開口ホームドアの採用やQRコード式システムの対応を行ってまでそれを継続していることは、アクロバティックな京急らしさの表れに思えてきます。

出典・参考文献

脚注

References
1 2番線の編成は同駅から逗子・葉山駅へ回送され、折り返し逗子線の上り始発列車となる。

コメントする