11/11 広島電鉄 ついにダイヤモンドクロッシングも完成! 駅前大橋ルート建設工事状況

広島電鉄では、2025年春の開業に向けて、市内中心部から広島駅へのルートを短縮して駅ビル2階に乗り入れる「駅前大橋ルート」および既存ルートを活用した「循環ルート」の建設工事を進めています。この新ルートにおいて最大の特徴となる稲荷町交差点の「ダイヤモンドクロッシング」が、先日ついに敷設されました。

1 工事の概要

広島市公式ホームページ 広島駅南口広場の再整備等 事業概要より

新たに建設される「駅前大橋ルート」は、広島駅ビル2階から駅前通りを経由して比治山線[1]正式名称は皆実線。の比治山下電停付近までを結ぶ1.1kmのルートです。また、既存ルートの的場町電停にも新たに比治山下方面~稲荷町方面を短絡する線路を設けて、市内中心部を環状運転する「循環ルート」が設定されます。

この計画によって、駅前大橋ルートと既存ルート(将来の循環ルート)の線路が十字に交わる稲荷町交差点には通称「ダイヤモンドクロッシング」が設置されることになりました。国内で現存するダイヤモンドクロッシングは高知県のとさでん交通はりまや橋停留所や愛媛県の伊予鉄道大手町駅などごくわずかしかなく、それが2020年代に新設されるということで注目を集めていました。

しかも稲荷町交差点は交わる角度が直角ではなく双方ともにカーブしており、そこに市内中心部方面と駅前大橋方面をつなぐ分岐器・曲線も付帯するため、全国的にもかなり珍しい複雑な線路構造となります。今年7月には、交差点部分に敷設される「軌道ブロック」の仮組み作業がメディアで公開されました。

2 稲荷町交差点の工事状況

2.1 ダイヤモンドクロッシング

八丁堀・紙屋町方面の電車最後部から

そして10月中旬から現地での軌道ブロック敷設が始まり、11月6日深夜の工事でついにダイヤモンドクロッシングの一部が姿を現しました。11日の時点で上下線ともにクロッシング部分の敷設が完了しています。

既存ルートを横切る比治山方面の線路
クロッシング部分を通過する広島駅行き電車

実物を見てみての感想としては、やはり線路が直角ではないため国内の他の事例とはだいぶイメージが違い、ダイヤはダイヤでもトランプの絵柄に書かれているような縦長のひし形です。電車が通過するときのジョイント音もリズミカルではありませんでした。

2.2 分岐器

比治山方面(左)と市内中心部方面(右)の分岐点
駅前大橋ルートと現行ルート(将来の循環ルート)の分岐点

ダイヤモンドクロッシング部分より以前に、駅前大橋ルートと既存ルートをつなぐ分岐器の設置も完了しています。この両分岐器間の曲線区間にも近々軌道ブロックが敷設されると思われます。

H&K社のロゴマーク

ポイントを転換する電気転てつ機は、国内外の多くの路面電車・LRTでも採用されているドイツのHANNING & KAHL社製の軌間内埋設型です。

3 その他の区間の工事状況

3.1 比治山町交差点~松川町交差点~稲荷町交差点

比治山町交差点から松川町方面を望む
手前を横切るのが比治山線の現行ルート
上下線間に設けられる架線柱の基礎が作られていた

現行の比治山線から駅前大橋ルートが分岐する比治山町交差点は、今のところ分岐器敷設などの動きは見られません。駅前大橋ルート上に新設される松川町電停までの区間も最近までは大きな動きがなかったものの、10月中旬から道路中央が封鎖されて本格的な工事が始まりました。

松川町交差点から比治山町交差点方面を望む

駅前通りと合流する松川町交差点の比治山側。この付近に松川町電停の広島港方面のりばが設置されます。

稲荷町交差点から松川町交差点を望む

松川町交差点~稲荷町交差点は、次に紹介する区間と同じくバラスト軌道敷設に向けた整地がかなり進んでいるようです。架線柱の基礎の位置に対して右側の用地がやけに広いですが、ここには松川町電停と稲荷町電停の広島駅方面のりばが近接して設置されます。

3.2 稲荷町交差点~駅前大橋~広島駅前交差点

稲荷町交差点から駅前大橋・広島駅方面を望む
奥にそびえるのが新駅ビル
福屋10階からぽっかりと穴が開いた駅前大橋を見下ろす

稲荷町交差点~駅前大橋南詰は地上を走りますが、駅前大橋に向けての上り勾配をそのまま活かし、橋の入口からは専用軌道の橋梁で2階レベルへと駆け上がっていきます。この区間の最急勾配は48パーミルにもなり、吊り掛け駆動方式の旧型車両は駅前大橋ルートに入線できるのか否かが注目されます。

道路は再び地上レベルに下がるのに対して、線路は2階レベルのまま駅ビルへ

駅前大橋北詰には鉄筋コンクリート製の橋台、広島駅前交差点の手前には鋼製の橋脚ができています。なお、この間は高架橋ではなく盛土区間となります。

3.3 広島駅

現在の路面電車のりばと2階新のりばの床となる橋桁
高さは必要最低限ギリギリという印象

JR広島駅自由通路から現在の路面電車のりばに向かう通路上に、新しい路面電車のりばとなる巨大な橋桁が覆いかぶさっています。これから現在の線路をまたぐ形で高架橋を建設しなければなりませんが、どのような工法が採られるのでしょうか。

メディア向けの仮設展望デッキに設けられた計画レール高さを示す看板

なお、以前の記事でもお伝えしましたが、現在の広島駅構内では工事の支障とならないように架線高さが通常より低い位置に付け替えられました。これによって3000形などの一部車両は広島駅に入線できなくなっているようです。

4 おわり

※上り線のみにダイヤモンドクロッシングが敷設された11/7時点の映像

なお、循環ルート整備のため比治山下方面~稲荷町方面の短絡線が設けられる的場町交差点については、現時点で大きな変化は見られませんでした。

まだまだ遠い未来のことのように思っていましたが、目玉となる稲荷町交差点の工事が一気に進んだことでいよいよ開業が近づきつつある実感が湧いてきました。駅前大橋ルート建設を含む広島駅南口再整備の状況は、広島市のまちづくり・再開発を精力的に取材されているブログ『AND BUILD HIROSHIMA(アンドビルド広島)』様の記事が大変参考になります。詳しくはぜひそちらをご覧ください。

出典・参考文献

脚注

References
1 正式名称は皆実線。

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