広島電鉄 一部連接車でワンマン運転に準じたドア扱いが開始
広島電鉄1号線の広電本社前~広島港(宇品)間では、2023年4月1日より一部の連接車両において運転士が全てのドア開閉扱いを行っています。現時点で車掌は引き続き乗務していますが、将来的なワンマン化も視野に入れているそうです。
目次
1 運転士によるドア開閉扱いの概要
広電の30m級連接車両は片側4か所にドアがあり、通常は一番前にある出口扉のみ運転士が操作し、残りの3か所(入口扉2か所・出口扉1か所)は後部車掌台の車掌が操作しています。今回の取り扱い変更では、4か所全てのドアを運転士が一斉操作し、閉扉時の放送や発車予告メロディの操作も運転士が行うようになりました。
この取り扱いを開始するにあたって車両側に新設された運転モードは「ワンマンモード」と称されており、取り扱い上は名実ともにワンマン運転とも言えます。とはいえ、車掌は運賃収受や接客業務に専念する形で引き続き乗務しているため、乗客側からすれば利便性への影響は特にありません。
2 車両の改造状況
今年初めごろから1号線を管轄する千田車庫所属の連接車に順次ワンマン対応改造が行われており、5月12日時点で3800形5編成と5100形1編成の計6編成が対応しています。具体的な改造内容は広電Webサイトのお知らせに詳しく記載されているため、当記事では車外カメラと運転台周りの2点に着目します。
(1)車外カメラ
運転台から乗降客や周辺の状況どを確認できるように、車両側方を監視する車外カメラが新設されました。一方の進行方向に対してのカメラ数は左右2基ずつで、先頭車体と中間車体(3800形はC車、5100形はE車)の両側にそれぞれ設置されています。
なお、2013年デビューの1000形「グリーンムーバーレックス」はワンマン運転用のミラー代わりとして、2018年デビューの5200形「グリーンムーバーエイペックス」はワンマン非対応ながら側方監視用として車外カメラを搭載していますが、この2形式は進行方向左側のみの設置でした。
5100形の新設カメラを5200形の既設カメラと比較すると、カメラを覆うカバーの形状が簡素になったほか、レンズに付着した汚れを除去するエアブロー機能も省略されたようです[1]1000形および5200形はマスコンキー挿入時に自動でカメラエアブローが作動する(運転台タッチパネルからも操作可能)。。今後5200形にもワンマン改造が行われたら増設されるカメラはどんな仕様になるのでしょうか?
(2)運転台周り
運転台に新設された主な機器は以下の通りです。
- 全扉一斉開閉ボタン
- 2扉開閉ボタン
- 特定電停ランプ
- 閉扉予告ボタン
- ハンズフリー式マイク
- 車内自動放送の操作ボタン
全扉一斉開閉ボタンはツーマンモードだと従来通り運転台扉のみの開閉ボタンとして機能し、ワンマンモードだとその名の通り片側4か所のドアを一斉に開閉するボタンに変わります。一方、蝶番付きの蓋の下には2扉開閉ボタンがあり、これは安全地帯の長さが短い電停で使用されます。詳しくは次項で解説します。
また、3800形は運転台右側のスペースに、5100形は運転台右側パネル内の時計置きの上付近に、運転モードを切り換えるワンマンツーマン切換スイッチが設置されました。
3 対象区間の取り扱いを見る
実際の取り扱いの様子は動画にまとめましたので、詳しくはそちらをご覧ください。当記事では一部の取り扱いについて補足説明を記載します。
(1)広電本社前での運転モード切換
広電本社前電停にてワンマンモードとツーマンモードを切り換えます。この際、まずは車掌が車内放送で「業務放送、ワンマン(ツーマン)モード切換お願いします。」と運転士にモード切換を要請し、それを受けて運転士が切換スイッチを操作、車内放送で「ワンマン(ツーマン)モード切換完了です。」と切換完了を報告する手順を踏んでいました。
(2)広島港電停 右側ドア開閉時の取り扱い
広島港電停のBホームに入線した場合は、運転台右側にある「他扉」開閉ボタンを使用して右側ドアを開けます。5100形は以前からこのボタンがありましたが、3800形には新設されました。ただしこれを押して開くドアは3か所のみで、後部側の運転台扉は開きません。
また、Bホーム終端部は左側にも短いホームがあり、従来は運転台扉からも降車できましたが、ワンマンモードだとドアを個別開扉できないためこれも不可能になりました。
(3)特定電停のドアカット扱い
対象区間のうち宇品三丁目(上り)と宇品五丁目(下り)は電停の長さが単車1両分しかなく、連接車両の場合は前側2か所のドアのみを開閉する必要があるため、ワンマンモードでは「2扉」開閉ボタンを使用します。また、電停進入時には「特定電停ランプ」の点灯および「特定電停です。2扉操作してください。」という自動音声にて誤操作を防止しています。
特定電停ランプは電停出発後に次の車内放送が自動再生されると同時に消灯していました。このことから、以前から自動放送制御用として各電停に設置されている電波ビーコンを、特定電停の判別用としても使用しているのだと推測されます。
4 おわりに
中国新聞の記事によると、今後はこの取り扱いを他の区間にも拡大し、将来的なワンマン化も視野に入れているとのことです。他の区間には前側ドアを締め切る電停もあるため[2]5号線(比治山線)の皆実町六丁目電停(上り)など。、どのように対応するのかが気になります。
そして完全なワンマン化については、現在のICカード全扉乗降サービスのように現金・1日乗車券などの利用者も全てのドアから乗降できる運賃収受システムが実現してからの話だと思われます。来年10月にはのQRコードを使った新乗車券システムのサービスが開始される見込みなので、これらの動向とも絡んでくるでしょう。
出典・参考文献
- 一部の連接車両において扉開閉操作を変更します|広島電鉄
- スマートフォンに表示させたQRコードや新たな交通系ICカードを認証媒体とする新乗車券システムの開発に着手します|広島電鉄
- 運転士が全ての扉開閉、車掌は接客専念 広電が電車改造 将来のワンマン化も視野|中国新聞デジタル