京成電鉄のホームドア:日暮里駅の仕様

京成電鉄の日暮里駅では、2018年2月24日に下りホーム1・2番線で同社初のホームドアが稼働開始されました。下りホームはライナー列車と一般列車でホームが分かれているため、それぞれの車両ドア位置に特化した一般的なタイプの腰高式ホームドアです。

一方、当初は固定柵が整備予定だった上りホーム0番線にも、安全性向上のためホームドアが設置されることになりました。上りホームはライナー列車と一般列車が同じホームに発着するため、両車の大きく異なるドア位置に対応可能な最大幅5m超の大開口ホームドアが開発されました。稼働開始は2018年12月23日です。

1 ホームドアの仕様

1.1 下りホーム(1・2番線)

1番線側のホーム壁面に掲載されている三菱重工交通機器エンジニアリングの広告
タイプ 腰高式(2番線は一部二重引き戸タイプ)
メーカー 三菱重工交通機器エンジニアリング
開閉方式 開扉 自動(車種判別・定位置停止検知・編成検知)
閉扉 自動(ドア開閉検知)
停止位置許容範囲 ±750mm(TASCなし)
開口部幅 1番線(ライナー) 【推定】2,400mm
2番線(一般列車) 【推定】3,300mm
非常脱出ドア 1番線(ライナー) 開き戸式(各号車ドア横)
2番線(一般列車) なし
支障物検知センサ 3Dセンサ

京成の代表的列車である「スカイライナー」などに使用されるAE形は車体長が19mで片側1ドアなのに対し、一般型車両は車体長18mで片側3ドアと車両規格が大きく異なっています。しかし、日暮里駅上りホームは1番線がライナー用[1]「スカイライナー」「イブニングライナー」および臨時列車の「シティライナー」など。、2番線が一般列車用とホームが分かれているため、それぞれのドア位置に特化したホームドアが設置できました。TASC(定位置停止装置)は整備されていないため、1・2番線ともに停止許容範囲±750mmを確保した開口幅となっています。

1番線(ライナー用ホーム)

1番線(ライナー用ホーム)のホームドア開口幅は推定2,400mmで、各号車ドア横には非常脱出用の扉が設けられています。AE形は1両1ドアのためドア間隔が非常に長いですが、その間の柵に特別な処理は施されておらず白い壁が並ぶ形となりました。

2番線(一般列車用ホーム)

2番線(一般列車用ホーム)のホームドア開口幅は推定3,300mmで、筐体には左右の扉が互い違いに収納されます。各編成両数(4両・6両・8両)の前部・後部には乗務員出入用の扉が設けられており、その前後の扉は戸袋スペースが狭いため二重引き戸式となっているのが特徴です。

1.2 上りホーム(0番線)

4号車3番ドアなどの最大開口幅
タイプ 腰高式(一部二重引き戸タイプ)
メーカー 三菱重工交通・建設エンジニアリング
開閉方式 開扉 自動(車種判別・定位置停止検知・両数検知)
閉扉 自動(車両ドア開閉検知)
停止位置 ±650mm(TASCなし)
開口部幅 一般部 【推定】3,200mm
最大開口部 【推定】5,400mm
非常脱出ドア なし
支障物検知センサ 3Dセンサ

2016年当初の計画では、日暮里駅のホームドア整備は下りホームのみで、上りホームには固定柵が整備される予定でした。これは同駅が京成上野駅の1つ手前の駅であり、日暮里駅から上り列車を利用する乗客は少ないためだと思われます。

しかしその一方で、同駅で上り列車を降りる乗客は非常に多く、エスカレーター・エレベーターの容量が不足気味なこともあって大きな荷物を持った空港利用客がホームに滞留しがちでした。こうした理由もあってか、上りホーム0番線にもホームドアを整備する方針に変更されました。

AE形と一般型車両ではドア位置が大きく異なるため、昇降式など新タイプのホームドアの導入も検討されたそうですが、最終的には下りホームと同じ三菱重工交通機器エンジニアリング製の二重引き戸式大開口ホームドアを最大限活用することで両車への対応を可能としました。開口幅は最も広いところで5mを超えており、これは2019年末時点で在来線のホームドアとしては最大のサイズです[2]昇降式等を除く。

左上:通常の開口幅 右上:7号車3番ドアなどの開口幅
左下:6号車3番ドアなどの開口幅 右下:5号車1番ドアなど開口幅
重厚感のある筐体

その他の開口部もAE形と一般車のドア位置のずれに合わせ、二重引き戸を組み合わせて様々な開口幅が作り出されています。構造上の限界からか通常開口部の幅は2番線より若干狭い推定3,200mmで、停止位置許容範囲も±650mmに狭まりました。収納する扉が左右ともに二重引き戸となる筐体はかなりの分厚さです。

上図はAE形・一般型車両のドア位置とホームドアの位置関係を表しています。ここまでの巨大開口が実現できたのは、一般車が18m3ドア車でドアピッチが比較的広いために、それを収納できる筐体の長さを確保できたからでもあります。首都圏の主流であるドアピッチの狭い20m4ドア車では不可能だったでしょう。

2 ホームドアの開閉方式

京成電鉄のホームドアは、直通先の都営浅草線・京急線で採用されたQRコード式ではなく、センサ等の地上側設備のみで車種・編成両数の判別や車両ドアの開閉を検知する「地上完結型連携システム」によって制御されています。詳しくは別記事で紹介しています。

なお、当初このシステムによって行われていたのは車種・編成両数の判別のみで、ホームドアの開閉自体は車掌が直接操作盤のボタンを押していました。その後システムの信頼性が確認されたためか、2018年度には開扉が自動化、さらに2019年度には車両ドア開閉検知用センサの増設により閉扉も連動化されました。

乗務員用操作盤と停止位置マーカー
※成田空港駅のホームドアで撮影
左:停止位置検知用センサ
右:車両ドア開閉検知用センサ(2019年度に増設)
0番線8号車付近の在線検知用センサ
ホームと反対側の独立した支柱に設置

3 各種センサの配置

3.1 下りホーム(1・2番線)

下りホームでは停止位置検知用センサが計4基あり、便宜上それらにA・B・C・Dという名称を付けています。そしてそのうちのA・DはAE形の連結部に、B・Cは一般車の連結部に合わせて設置されているため、以下のように車種を判別することができます。

  • センサA・センサDで連結部を検知=AE形と判定
  • センサB・センサCで連結部を検知=一般車と判定

前述の通りAE形と一般車では車体長も異なるため、例えば一般車の連結部をセンサAとセンサDで同時に検知することは物理的に有り得ないことから、確実な判別が可能となっているのです。

3.2 上りホーム(0番線)

一方、AE形と一般車が同じホームに発着する0番線では、編成の中央にあたる4-5号車連結部を合わせるように両車の停止位置が設定されており[3]この位置がドアのずれ量を最も少なくできる。、その4-5号車連結部にセンサBが設置されています。対して、両車で3mほど連結部の位置にズレが生じる1-2号車連結部には、AE形の連結部にセンサAが、一般車の連結部にセンサCがそれぞれ設置されているため、以下のように車種を判別することができます。

  • センサA・センサBで連結部を検知=AE形と判定
  • センサC・センサBで連結部を検知=一般車と判定

両車で場所が同じ連結部にセンサBを、両車で場所が異なる連結部にそれぞれセンサA・センサCを設けることで、上りホームよりセンサを1基削減しながらも判別を可能としています。

4 おわりに

以上のように、日暮里駅はその駅構造が理由で上下ホームでホームドアの仕様が大きく異なることになりました。同駅0番線の翌年には空港第2ビル駅にも大開口ホームドアが設置されましたが、こちらも駅構造が特殊であったため更に多くの特徴が生まれています。

出典・参考資料

脚注

References
1 「スカイライナー」「イブニングライナー」および臨時列車の「シティライナー」など。
2 昇降式等を除く。
3 この位置がドアのずれ量を最も少なくできる。

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