東京メトロ 千代田線のホームドア:小田急ロマンスカーMSE着発時の取り扱い

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2008年3月、史上初の地下鉄線に乗り入れるロマンスカーとして小田急60000形「MSE」がデビューし、千代田線から小田急線・箱根登山鉄道に直通する特急列車の運転が開始されました。これは現時点に至るまで、特急型車両が地下鉄線内で営業運転を行う全国唯一の事例です。

それから約10年後の2018年度より千代田線の各駅でホームドア整備が開始され、全国初の一般型車両と特急型車両の共用する駅におけるホームドアが実現しました。しかし、MSE着発時のホームドア取り扱いは、ドア位置や開閉方式の違いによって一般型車両とは異なっています。

1 一般列車の場合

車両床下の「ATO車上子」と停止位置直下の「P3’地上子」が重なった様子。一般型車両はこれで車両ドアとホームドアの開閉連携を行う

一般型車両のホームドア開閉方式は、東京メトロの標準的な方式であるトランスポンダによる連携です。また、ホームドア設置開始に先立ちATO(自動列車運転装置)も全線で導入されました。車両のコンピュータが保有する線路情報と、駅手前3か所に設置された距離情報を補正する地上子[1]千代田線では、停止位置の数百メートル手前にP1、20m手前にP2、2m手前にP3地上子が設置されている。により、駅から次の駅までの加減速・停止制御を自動で行います。

2 ロマンスカーMSE着発時の取り扱い

2.1 一部ドアの締め切り

千代田線のホームドアは一般型車両のドア位置に合わせたごく一般的なタイプなため、ドア位置が大きく異なるMSEはホームドアと適合する一部号車のドアのみを開扉することで乗降扱いを可能にしています。

MSEは一般型車両よりも停止位置を少しだけ代々木上原方に寄せることで、6両編成の場合が3か所(1・4・5号車)、10両編成の場合が6か所(1・4・5・7・8・9号車)のドアがホームドアと適合します。それ以外のドアは戸袋部分と重なってしまうため開きません。

2.2 リモコンを使用した開閉操作

上:リモコン受光部(受光中は緑のランプが点灯)
下:ホームドア・可動ステップの状態を知らせる「DS表示灯」

一般型車両と異なり、MSEはホームドア設置後もホームドア連携に非対応のようです。そのため、ホームドアの開閉は車掌が携帯するリモコンを使って操作しています。発着時の取り扱い手順は以下の通りでした。

列車が定位置範囲内に停止すると、後述するトランスポンダ装置が行っていると思われる定位置停止検知により「DS表示灯」の「D」が点灯します。それを確認した車掌は、先にリモコンでホームドアを開扉し、続いて車両ドアを開扉します。発車時はホームドア操作と同じリモコンで発車メロディを放送し[2]千代田線では一般列車もリモコン操作で発車メロディを放送。、車両ドア→ホームドアの順に閉扉操作を行います。

2.3 MSE用トランスポンダの設置

ホームドア設置前の大手町駅B線で撮影。A線用のATO距離補正用地上子(P3)があるのは折り返し対応駅のため
B線ホームにおける地上子・車上子の位置
6両固定編成の北千住方先頭車にだけ搭載された車上子
4両固定編成には設けられていない

前述の通り、MSEはホームドア連携に非対応のはずですが、一般型車両と同じくトランスポンダ車上子が搭載されていることを確認しました。ただし搭載場所は一般車と異なっており、それに対応するようなATO距離補正地上子も見当たらないため、MSEはATO運転にも対応していないことが伺えます。

開閉連携にもATOにも非対応であることを踏まえると、この定点地上子と車上子の間で行っているのは列車の定位置停止検知と編成両数(6両or10両)の把握だと推測されます。また、ホームドア開扉中は発車を抑止する制御も行っているのかもしれません。

3 おわりに

千代田線内におけるMSEのホームドア取り扱いは、地上子・車上子が整備されていながらも開閉連携は行わないという珍しい事例となりました。将来的には連携化される可能性も考えられますが、ホームドア稼働開始から約3年が経過した2021年末現在もそのような動きは見られません。

出典・参考文献

  • 上村 一正「東京地下鉄における駅定位置停止制御(TASC)技術開発の変遷」『鉄道車両と技術』Vol.22-No.8、レールアンドテック出版、2016年、p10-15
  • 「形式図/小田急60000形」『鉄道ファン』Vol.48-No.564(2008年4月号)、交友社

脚注

References
1 千代田線では、停止位置の数百メートル手前にP1、20m手前にP2、2m手前にP3地上子が設置されている。
2 千代田線では一般列車もリモコン操作で発車メロディを放送。

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