東京メトロ 千代田線のホームドア:標準タイプ

タイプ 腰高式
メーカー 日本信号
開閉方式 一般車 トランスポンダ式連携
MSE 車掌手動操作
停止位置許容範囲 ±450mm(ATO)
開口部幅 【推定】2,400mm
非常脱出ドア 開き戸式(車両連結部およびMSE客用ドアと重なる筐体)
支障物検知センサ 3Dセンサ

東京メトロ千代田線の代々木上原駅~綾瀬駅間では、2018年10月6日稼働開始の代々木公園駅を皮切りにホームドアの整備が始まり、2019年度までに全19駅での整備が完了しています。綾瀬駅~北綾瀬駅間の支線(通称:北綾瀬支線)は2002年にホームドアが整備済みのため、これで東京メトロとしては6路線目となる全駅整備達成となりました。

小田急電鉄が管轄する代々木上原駅においても千代田線が使用する2・3番ホームには当記事で紹介する千代田線仕様のタイプが設置されました。また、北綾瀬支線の北綾瀬駅に設置されていたホームドアも、10両編成対応化に伴い2018年度に本タイプへと更新されました。

千代田線には直通運転を行っている小田急電鉄からロマンスカー「MSE」が乗り入れるため、本タイプには一般型車両とのドア位置の違いに対応するための工夫が施されています。

1 ホームドアの仕様

1.1 基本仕様

タイプは一般的な腰高式、開口幅は推定2,400mmです。外観などの特徴から東京メトロでは珍しい日本信号製と推測されます。ホームドア設置開始に先立ちATO(自動列車運転装置)を導入して高い停止精度が確保されています。

扉は互い違いに収納されている
ホーム側から見た車両ドア間の筐体
ホーム側から見た車両連結部の筐体
線路側から見た車両ドア間の筐体
線路側から見た車両連結部の筐体

同時期に整備が始まった銀座線や半蔵門線のホームドアと同じく、扉部分だけでなく筐体にも透過部が多く取り入れられているのが特徴です。筐体高さは半蔵門線などのタイプよりやや高く、銀座線タイプと同程度あるように見えます。

各号車連結部の筐体には開き戸式の非常脱出ドアが設けられており、1ホームあたり5か所には非常停止ボタンが内蔵されています。ただし、ロマンスカーMSEのドア位置と重なる部分には車両ドア間の筐体であっても非常脱出ドアが設けられています(詳しくは1.2項で紹介)。

乗務員操作盤
赤のテープは一般車用、青と緑のテープはMSE用の運転士向け停止位置マーカー

ホーム後部側には車掌用の乗務員操作盤が設けられていますが[1]折り返し可能な駅は両側に設置。、後述するように通常はトランスポンダ式連携なので使用されません。

北綾瀬駅の3両編成停止位置
筐体配置に注目

冒頭でも述べた通り、北綾瀬支線では2019年3月のダイヤ改正より10両編成の乗り入れが開始されるのに伴い、北綾瀬駅に設置されていた3両編成用ホームドアを撤去して本タイプに更新する工事が行われました。北綾瀬駅ならではの特徴として、3両編成の先頭部となる7-8号車連結部も乗務員出入りスペース確保のため筐体がホーム内側にセットバックされています。

可動ステップ張出中の様子

ホームが急カーブに位置している駅の一部箇所では、車両とホームの隙間を縮小する「可動ステップ」もホームドアと同時に整備されました。

1.2 ロマンスカーMSEへの対応

ホームドア設置後の北千住駅に停車するロマンスカーMSE
降車口変更を知らせる掲示

千代田線では2008年3月から、直通運転を行う小田急電鉄のロマンスカー60000形「MSE」を使用した特急列車を運行しています。しかし、MSEと一般型車両のドア位置は大きく異なるため、ホームドアの導入にあたって対応が検討された結果、ホームドアと適合する一部号車のドアのみを開扉することで乗降扱いを可能としました。

ただし、メトロ線内の停車駅はA線(箱根湯本方面)が乗車専用、B線(北千住方面)が降車専用となっており、乗車専用駅では運行開始当初から一部ドアのみを開扉していました。これを2018年10月20日からは降車専用駅も限定開扉に変更することでホームドアに対応しています。

MSE用の非常脱出ドアが備えられた筐体

MSEは6両編成と10両編成(6両+4両)が運行されており、6両編成は3か所(1・4・5号車)、10両編成は6か所(1・4・5・7・8・9号車)のドアを限定開扉します。また、戸袋部分と重なってしまうため開かないドアについても、筐体に非常脱出ドアを設けることで緊急時の速やかな脱出に備えています。

上図はB線ホームにおける車両ドアとホームドアの位置関係を表したイメージ図です。MSEは停止位置を一般型車両よりも代々木上原方に寄せることで車両ドアとホームドア開口部が適合します。特筆すべきは、A線とB線では6両編成の停止位置が異なるため[2]A線・B線ともに10両編成と先頭側を合わせて停止する。、6両と10両でドア位置が変わるB線ホームはMSE用非常脱出ドアが備わる筐体の数も多くなっています。

特急停車駅のみに設けられているMSE用乗務員操作盤

関連する付帯機器として、6両編成最後部およびA線の10両編成最後部(綾瀬方)には、一般車とは別にMES用乗務員操作盤も設けられてます[3]10両編成用がA線のみなのは、停止位置の関係で一般型車両と乗務員扉の位置が大きくずれるため。。ただし後述するように、MSEも操作盤を通常使用することはありません。

MSE開ボタン

また、上記と同じ箇所には直近1か所の開口部のみを開閉できる「MSE開ボタン」が設けられており、代々木上原駅で小田急の乗務員と交代する際などに使用されています。

2 ホームドアの開閉方式

2.1 一般列車の場合

車上子と地上子が重なった様子

一般型車両のホームドア開閉方式は、トランスポンダ装置を用いた情報伝送によって車両ドアと同期するシステムです。10号車(北千住方先頭車)床下の車上子と線路側の地上子がピッタリ重なることで開閉連携が可能になります。また、この車上子はATO運転に必要な距離情報などを受信する役割も担っています。

なお、代々木上原駅における小田急線方面への出発時・小田急線方面からの到着時、ならびに綾瀬駅におけるJR線方面への出発時・JR線方面からの到着時も同じくトランスポンダ式連携で開閉しています[4]小田急線内のホームドアは車両側と直接通信を行わない制御方式を採用している。

ちなみに、一部駅でホームドアが稼働開始した後も特別運行が行われた東京メトロ6000系[5]通常運行は2018年10月5日に終了。特別運行は11月11日まで。はATO運転やホームドア連携に非対応だったため、ホームドア開閉は駅員による手動操作で対応していたようです。

2.2 ロマンスカーMSEの場合

トランスポンダ式連携で開閉する一般列車に対して、MSEは車掌がリモコンを使ってホームドア開閉操作を行っています。また、ATO運転やTASC(定位置停止装置)にも対応していないようです。

MSE発着時のホームドア取り扱いについては別記事にまとめています。

3 おわりに

近年は各地の鉄道事業者で、ドア位置の異なるさまざまな車両に対応できる大開口ホームドアが普及し始めています。しかし、純粋に一般型車両と特急型車両が共用する駅としてのホームドア設置は、限定開扉扱いとはいえ千代田線がその先陣を切ったのでした[6]昇降式ホーム柵など特殊な例は除く。

出典・参考資料

脚注

References
1 折り返し可能な駅は両側に設置。
2 A線・B線ともに10両編成と先頭側を合わせて停止する。
3 10両編成用がA線のみなのは、停止位置の関係で一般型車両と乗務員扉の位置が大きくずれるため。
4 小田急線内のホームドアは車両側と直接通信を行わない制御方式を採用している。
5 通常運行は2018年10月5日に終了。特別運行は11月11日まで。
6 昇降式ホーム柵など特殊な例は除く。

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