東京メトロ 銀座線のホームドア:本格導入タイプ

東京メトロ銀座線では、2015年度に上野駅1番線でホームドアが先行導入され、その他の各駅における本格導入は2017年6月24日稼働開始の浅草駅を皮切りに始まりました。当初、大規模改良工事を行っている渋谷駅・新橋駅1番線は2022年度、それ以外は2018年度の整備完了予定でしたが、のちに計画が大幅に前倒しされ、2020年6月の渋谷駅をもって全駅整備が完了しています。

銀座線リニューアルプロジェクトとリンクして、ホームドアも駅・エリアごとのイメージを取り入れたデザインになっていることが大きな特徴です。銀座駅と渋谷駅は駅全体のデザインと融合したような特別仕様で、その他の各駅も銀座駅を境に扉部分の色合いが異なっています。

1 ホームドアのエリア別デザイン

1.1 京橋駅~浅草駅

銀座線リニューアルのエリアコンセプトにおいて「下町エリア(浅草駅〜神田駅)」「商業エリア(三越前駅〜京橋駅)」に区分されている区間のホームドアは、本体部分がベージュ、扉部分が光沢のある濃い真鍮風の色に塗装されています。このアクセントによって、開業当時から残る構造物を活かしたレトロモダンな駅デザインに、最新の設備であるホームドアが絶妙にマッチしていると感じられます。

1.2 銀座駅

路線名にもなっている銀座駅はリニューアルにおいても「銀座エリア」として独立したコンセプトが設けられ、ホームドアも地名にちなんで(?)本体・扉ともにシルバーで塗装された特別仕様となりました。落ち着いたトーンでまとめられた駅空間が上品で高級感溢れる銀座の街を演出しています。

1.3 表参道駅~新橋駅

「ビジネスエリア(新橋駅〜赤坂見附駅)」「トレンドエリア(青山一丁目駅〜渋谷駅)」のうち渋谷駅を除く7駅のホームドアは、扉部分が光沢のないブラックで塗装されています。それ以外は浅草駅~京橋駅と同じですが、この僅かな違いだけでずいぶんと引き締まった印象を与えられます。

1.4 渋谷駅

2020年1月3日に明治通り上空の新ホームへ移転した渋谷駅。ホームドア設置工事は仮設ホーム床の本設化などと同時に行われ、2020年6月29日に稼働が開始されました。 「フューチャーシティ」というコンセプトのもと、駅空間は特徴的なM形アーチフレームをはじめ白基調のデザインに統一されていることから、ホームドアも本体・扉ともに白色で塗装された特別仕様となっています。

2 ホームドアの仕様

タイプ 腰高式
メーカー 京三製作所
開閉方式 トランスポンダ式連携
停止位置 【推定】±500mm(TASCあり)
開口部幅 【推定】2,400mm
寸法 筐体 【推定】高さ1.4m×厚さ0.2m
【推定】高さ1.2m
非常脱出口 開き戸式(各号車連結部)
安全装置 居残り検知 3Dセンサ

上野駅1番線と同じく京三製作所製の透過部を多く取り入れたタイプですが、戸袋スライド式非常脱出口は設けられていないため、筐体の厚みが削減されてスマートな見た目になりました。本格導入を前に1000系とドアピッチが異なる01系が引退したためか、開口幅は推定2,400mmに狭まっています。

車両連結部の筐体
支障物検知センサと非常開ボタン

各開口部の片側には支障物を検知する3Dセンサと非常開ボタンが設けられています。車両連結部には開き戸式の非常脱出口と、それに隣接して1ホームにつき3か所に非常停止ボタンが内蔵されています。

左右のドア幅が異なる最前部と最後部の開口
長い方のドアを収納する筐体は厚みが大きい

最前部と最後部には乗務員出入り用の扉があり、直近の開口部は戸袋スペースの関係で左右のドア幅が異なっています。長い方のドアを収納する筐体は構造の都合上か、戸袋が線路側にはみ出したような見た目です。

最後部の乗務員用操作盤とITVモニタ

大正から昭和初期にかけて建設された銀座線はホームの天井が低い駅が多いため、ホームドアと同時に新設されたITVモニタも非常に低い場所に設置されています。

3 ホームドアの開閉方式

ホームドア開閉方式は、東京メトロの標準的な方式であるトランスポンダによる連携です。車両床下の車上子と駅の停止位置直下に設置されたP3’有電源地上子が電磁的に結合し、車両ドアスイッチの操作情報を地上側に伝送することでホームドアも同期して開閉します。

4 おわりに

1927年に東洋初の地下鉄として開業した銀座線。リニューアル工事では「伝統×先端の融合」という路線コンセプトのもと、バリアフリー化や老朽化した設備の改修、そしてホームドアの設置などが同時に進められ、近代的な地下鉄へと生まれ変わりました。ホームドアを付帯設備の一つに留めず、魅力的な駅空間を演出する素材として取り入れたことは、まさに路線コンセプトの象徴的な部分だと感じられます。

出典・参考文献

脚注

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