東京メトロ 半蔵門線のホームドア:標準タイプ

タイプ 腰高式
メーカー ナブテスコ
開閉方式 開扉 自動(定位置停止検知)
閉扉 自動(ドア開閉検知)
停止位置許容範囲 【推定】±650mm(TASCなし)
開口部幅 2,950mm
非常脱出ドア 開き戸式(各号車連結部)
支障物検知センサ 3Dセンサ

東京メトロ半蔵門線では、2018年3月27日に九段下駅で線内初となるホームドアが稼働開始されました。その後、2020年度末までに全14駅中11駅で整備が完了しており、大開口ホームドアが設置された表参道駅A線・錦糸町駅B線を除いてこの標準タイプが設置されています。

1 ホームドアの仕様

1.1 共通仕様

ホームドアのタイプは一般的な腰高式で、メーカーはナブテスコです。半蔵門線のラインカラーであるパープルを基調にデザインされています。

東京メトロがこれまでにホームドアを整備した路線では、列車の停止精度を向上させるためATO(自動列車運転装置)またはTASC(定位置停止装置)を導入していました。しかし、半蔵門線は他社との相互直通運転で新旧さまざまな車種が乗り入れることもあり、車両改造には多くの時間を要することが見込まれます。

そこで、ATO等の導入を見送る代わりにホームドアの開口幅を広くすることで停止許容範囲に余裕を持たせ、当面は運転士の手動ブレーキングのままで運用することになりました。乗務員用の停止位置マーカーによると、許容範囲は推定±650mmです。

戸袋が互い違いに配置されている
ホーム側から見た車両ドア間の筐体
ホーム側から見た車両連結部の筐体
線路側から見た車両ドア間の筐体
線路側から見た車両連結部の筐体

開口幅が広いため戸袋は左右の扉を互い違いに収納する構造です。中央部分は透過パネルになっていて開放感があります(デジタルサイネージが組み込まれている筐体は除く)。

各号車連結部には開き戸式の緊急脱出口があり、1ホームにつき4か所または5か所(=2両おき)に非常停止ボタンも内蔵されています。開口部両側に貼付されている赤と黄色のテープは、停止位置がずれて車両ドアとホームドア筐体が重なっても、この範囲(約10cm)までは許容できることを意味していると思われます。

各開口部の線路側には3D式支障物検知センサと非常開ボタンが設けられています。

乗務員操作盤
上に貼られている赤と青のテープは運転士向け停止位置マーカー

ホーム後部側には車掌用の乗務員操作盤が設けられていますが[1]折り返し可能な駅は両側に設置。、後述するように通常は自動開閉システムにより制御されるため使用されません。

1.2 デジタルサイネージの廃止

後年の設置駅では省略されたデジタルサイネージ

初期に設置された5駅(九段下駅・表参道駅・青山一丁目駅・永田町駅・半蔵門駅)では各号車2-3番ドア間の筐体に広告やニュースなどを放映するデジタルサイネージが組み込まれています。しかし、2019年度以降の設置駅ではコスト削減のためか廃止されました。

1.3 渋谷駅の仕様

1番線(田園都市線方面)はグリーンに塗装
筐体に設置されたホームドアサイネージ

東急田園都市線との境界駅である渋谷駅は東急電鉄が管轄する駅ですが、ホームドアは半蔵門線タイプが設置されました。稼働開始は2019年3月24日です。乗車位置案内などのサイン類は東急仕様のフォーマットが使われており、路線のラインカラーに準じて1番線(田園都市線方面)はグリーン、2番線(半蔵門線方面)はパープルに色分けされています。

そして最大の特徴が65インチの大型画面を使用したホームドアサイネージです。これは前述した九段下駅ほか5駅の筐体内蔵タイプとは違い筐体に外付けされていて、階段付近などの狭小部分を除いた箇所に計42面(1ホームあたり21面)が設けられています。

2 ホームドアの開閉方式

2.1 基本の開閉方式

前述の通り、半蔵門線では車両改造を見送ってホームドア整備を開始したため、車両ドアとホームドアを同期して開閉するためのトランスポンダ装置も導入されていません。そこで、地上側設備のみで車両ドアの開閉等を検知してホームドアを自動開閉するシステムが導入されました。

詳しくは別記事で紹介しています。

2.2 渋谷駅 東急側の取り扱い

渋谷駅における田園都市線方面への出発時は、上記の自動開閉システムではなく車掌による手動操作で閉扉を行います。これは田園都市線内のホームドアが開扉のみ自動、閉扉は車掌手動操作という方式なので、乗務員の取り扱いを合わせるためだと思われます。

詳しくは今後別記事にまとめる予定です。

3 おわりに

標準タイプと大開口タイプの比較

当記事で紹介した標準タイプも東京メトロの他路線よりは広い開口幅ですが、表参道駅A線および錦糸町駅B線にはさらに開口幅が広い二重引き戸タイプが設置されました。これは渋谷駅または押上駅で直通先から東京メトロの乗務員が引き継いだ直後の1駅目なので、車両のブレーキ特性に慣れていない可能性を考慮したためです。

現時点で残る未設置駅の水天宮前駅・清澄白河駅・住吉駅には2025年度までに設置される計画です。

出典・参考文献

脚注

References
1 折り返し可能な駅は両側に設置。

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