東京メトロ 半蔵門線のホームドア:大開口タイプ(表参道駅A線・錦糸町駅B線)

タイプ 腰高式(二重引き戸タイプ)
メーカー ナブテスコ
開閉方式 開扉 自動(定位置停止検知)
閉扉 自動(ドア開閉検知)
停止位置許容範囲 【推定】±800mm(TASCなし)
開口部幅 【推定】3,300mm
非常脱出ドア なし
支障物検知センサ 3Dセンサ

東京メトロ半蔵門線では、ホームドア早期整備を実現するため、車両改造に時間を要するATO(自動列車運転装置)やTASC(定位置停止装置)の導入を見送りました。その代わりに、開口幅の広いホームドアの導入により停止余裕を広めに確保しています。

しかし、表参道駅A線および錦糸町駅B線に限っては、他駅よりもさらに開口幅の広い二重引き戸式の大開口ホームドアが設置されました。これは多くの車種が乗り入れる半蔵門線ならではの理由によるものでした。

1 大開口ホームドア採用の理由

標準タイプと大開口タイプの比較

2018年8月23日の@DIME(アットダイム)に掲載された記事によると、この2駅、それも片方のホームだけに大開口タイプが採用された理由は、どちらも路線の起点・終点である渋谷駅または押上駅を出て最初の停車駅ということが関係しています。

渋谷駅から東急田園都市線、押上駅から東武スカイツリーラインと直通運転を行う半蔵門線には新旧さまざまな車種が乗り入れることから、直通先から東京メトロの乗務員に引き継いだ直後は運転士が車両のブレーキ特性に慣れていない可能性があります。そのことを考慮して、最初に停車する表参道駅A線・錦糸町駅B線には停止余裕をさらに広げるため大開口ホームドアを導入したそうです。

開口幅は他駅の標準タイプよりも約300mm広く、停止位置許容範囲は推定±800mmが確保されており、この工夫によって運転士の負担を軽減しています。

2 ホームドアの仕様

メーカーは他駅の標準タイプと同じくナブテスコです。半蔵門線と同時期に整備が始まった東西線の大開口ホームドア[1]東西線では停止余裕の確保に加えて車両ドア位置の違いに対応するため大開口タイプが採用された。と基本構造はほぼ共通ですが、扉部分のカラーリングは東西線が黒基調だったのに対して半蔵門線は白基調のためイメージはずいぶんと違います。

戸袋が互い違いに配置されている
表参道駅は車両連結部筐体にデジタルサイネージを内蔵
車両ドア間の筐体
車両連結部の筐体

1ホームにつき4か所の車両連結部筐体(=2両おき)には非常停止ボタンが内蔵されています。また、2018年度に設置された表参道駅A線では、すべての連結部筐体に広告やニュースなどを放映するデジタルサイネージが組み込まれていましたが、2020年度に設置された錦糸町駅B線ではサイネージが廃止されました[2]標準タイプについても2019年度以降の設置駅ではサイネージが廃止された。

各開口部の線路側には、標準タイプと同じく3D式支障物検知センサと非常開ボタンが設けられています。

3 ホームドアの開閉方式

前述の通り、半蔵門線では車両改造を見送ってホームドア整備を開始したため、車両ドアとホームドアを同期して開閉するためのトランスポンダ装置も導入されていません。そこで、地上側設備のみで車両ドアの開閉等を検知してホームドアを自動開閉するシステムが導入されました。

詳しくは別記事で紹介しています。

4 おわりに

運転士の慣れを考慮して1駅目だけを大開口ホームドアにしたのは全国でも半蔵門線が初めてだと思われます。もちろん全駅を大開口タイプにすれば運転士の負担はさらに減りますが、二重引き戸式ホームドアは機構が複雑で重量も増すことや、将来的には半蔵門線もATOを導入する計画があることを踏まえて、設備投資を最小限に抑えたのでしょうか。

出典・参考文献

脚注

References
1 東西線では停止余裕の確保に加えて車両ドア位置の違いに対応するため大開口タイプが採用された。
2 標準タイプについても2019年度以降の設置駅ではサイネージが廃止された。

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